吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

更に進化した“エクスペリメンタル”·ポップ·ワールド


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『The Slow Rush』

TAME IMPALA

 

 今月14日にリリースしたオーストラリア出身のサイケデリック·バンド、TAME IMPALAの4作目のアルバムです。2012年にリリースした2ndアルバム『Lonerism』で世界中の音楽メディアに高く評価され、更に2015年にリリースした『Currents』が、本国オーストラリアのアルバム·チャートで初のナンバー1に輝いたのを始め、全英アルバム·チャート3位、全米アルバム·チャートでも4位に輝き、もはや、TAME IMPALAはオーストラリアのロック·シーンを代表するバンドになっています。前作『Currents』では、初期2枚のエクスペリメンタルなサイケデリック·ロックから、クラブ系ナンバーのキラー·チューン「Let It Happen」に象徴されるような煌くようなポップ·アルバムに変化を遂げましたが、その変化を遂げた前作から更にどう進化を遂げていくかが本作で問われるわけです。2019年3月に新曲「Patience」を発表。翌月にはシングル「Borderline」をリリースし、2015年の前作リリース以来の“沈黙”を破り、更に昨年10月には「It Might Be Time」、同年12月には「Posthumous Forgiveness」を発表し、既にこの一連の楽曲の公開で、本作の方向性は見えてきたと思います。この発表された楽曲を既にお聴きになった方は共通して前作のサウンドを踏襲していると感じられたと感じたはずですが、同時に前作とは“何か”が違うとも感じられた方もいるかもしれません。その“何か”の違いは、もちろん、このアルバムを通して初めて理解出来ることではありますが…。前作は非常に洗練された煌めきと華やかさを感じさせるアルバムでしたが、本作は1曲目の「One More Year」から、本質的にはポップであるにも関わらず、初期2枚にも通じる混沌や捻れを感じさせ、どこかエクスペリメンタルな部分を感じさせます。ケヴィン·パーカーはソングライター/プロデューサーとして過去にトラヴィス·スコット、レディー·ガガ、マーク·ロンソン、カニエ・ウェスト等、名だたるポップ·アーティスト達とコラボし、おそらくはそうした経験から自らの音楽をアップデートしていっていると思われます。そもそもがTAME IMPARAと言うバンドは、基本的にアルバム制作に関してはケヴィン·パーカー一人が自らのスタジオで楽曲を作り上げ、全ての楽器を演奏しており、他のメンバーはツアーで演奏しているに過ぎない、実質的にはケヴィン一人のバンドです。ケヴィンが様々なコラボで自らの音楽をアップデートしていっても、彼の中で過去から染み付いている、混沌としたエクスペリメンタルな音楽DNAがどこかで表層化するのだと思います。ケヴィンいわく、本作の収録曲の殆どが“時の流れ”を表現しているのだそうで、その“時の流れ”は様々なコラボ経験で培ったアップデートしたポップ·サウンドと、過去から染み付いているケヴィン自身の音楽DNAの共存にも繋がっているのかもしれません。また、ルネ·マグリットを思わせるアルバム·ジャケットのアートも“時の流れ”と言うコンセプトを表現したもので、ジャケットを描いたニール·クラグと共にケヴィン自身もジャケットのコンセプトに関わっています。このジャケットのアートとコンセプトは本作だけでなく、シングルの「Posthumous Forgiveness」と「Lost in Yesterday」で、窓から砂が流れ出ているアートが、このアルバムの押し寄せるような混沌性が象徴されているのかもしれません。

 

 


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 しかし、インディー厨が喜びそうな(笑)初期の混沌性やエクスペリメンタルな側面はあくまで、アルバムのサウンドの局面の一つであって、基本的には前作同様に質の高いポップな楽曲がベースになっています。シングルになった「Lost in Yesterday」や「Is it True」はファンク·ビートを強調したナンバーですし、「Borderline」のようにナチュラルで美しいナンバーもあり、シンプルにすべき楽曲では無駄に混沌性を導入せずに、なおかつ、様々なスタイルの楽曲を混在させつつ、アルバム全体のトータル性を意識して連動させているところも素晴らしいです。

 以前、私のブログの『Best Album of 2010's』でも述べましたが、2010年代のロック·シーンは大きなムーヴメントも起きず、近年、大きなブレイクを果たすのは、アデルやビリー·アイリッシュのような女性ポップ·アーティストやヒップホップ·アーティストばかりですが、ケヴィンのようにポップ·アーティストと盛んにコラボしているアーティストこそがこれからのロック·シーンを救うのかもしれません。…と言うか、本当に良い音楽だけがシーンで生き残っていくだけで、別にリスナー側はジャンルを問わず、自分が本当に愛すべき音楽を聴き続けるわけですがね…。それはともかく、このアルバムは今年の音楽シーンを代表する素晴らしいアルバムには間違いないと思います。それから、ケヴィンが更にアップデートで自らの音楽を進化/更新させていくことで、これからのTAME IMPALAもより進化していくのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Tame Impala - Lost in Yesterday (Official Video)

 

 

 

 

 

 

 

 


Tame Impala - Borderline (Official Audio)

 

 

 

 

 

 

 

 


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(祝) 来日決定! (そして、記念碑的アルバム2枚の15th Anniversary)


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 今回のブログは3月に来日公演が決定したBRIGHT EYESが2005年に同時リリースした、2枚のアルバムについて書きます。今回のブログで取り上げるアルバム『I'm Wide Awake, It's Morning』と『Digital Ash in a Digital Urn』は、BRIGHT EYESの名を世に知らしめた、2005年の音楽シーンを代表する重要なアルバムでもあります。このアルバム2枚をリリースする前年(2004年)秋に、ブルース·スプリングスティーンR.E.M.PEARL JAM等、政治的意識の高いメジャー·アーティストが中心になり、ジョージ·W·ブッシュ再選に反旗を翻す為に大統領選挙投票への参加を呼びかける、大規模なキャンペーン·ツアー『Vote for Change Tour』が行われ、このツアーに参加しているアメリカン·ロックのレジェンド達に挟まれる形で参加していたのが、インディー·バンドのBRIGHT EYESDEATH CAB FOR CUTIEでした。結果的にツアーの甲斐なくブッシュ再選を阻むことは出来なかったわけですが、このツアーに参加したBRIGHT EYESDEATH CAB FOR CUTIEの全米での評価と知名度は格段に上がりました。BRIGHT EYESはアルバム·リリース前に先行シングル2枚をリリースし、「Lua」がBillboard TOP 100 Singles Salesチャートで1位、「Take It Easy (Love Nothing)」が同チャート2位と、シングルのセールス·チャートで1位·2位を独占すると言う快挙を成し遂げました (ちなみに通常の“Billboard TOP 100”はセールスだけでなく、ラジオのオンエア回数も加味したもの)。『Vote for Change Tour』はBRIGHT EYESDEATH CAB FOR CUTIEと言う新しい新世代の幕開けを予感させるバンドの台頭を促しましたが、NIRVANASEX PISTOLSのように音楽シーンそのものを変えたわけではなく、2001年の9·11以降の傷の癒えない米国社会の苦悩を体現した時代の象徴だったのではないかと思います。

 そして再び、このブログの本題でもある2枚のアルバムについて、話を進めていきますが、当初は2002年にリリースしたアルバム『Lifted or The Story is in the Soil, Keep Your Ear to the Ground』の制作後、同アルバムほど凝らないシンプルなアルバムを作りたくなって、『I'm Wide Awake, It's Morning』を1週間半ほどで完成させたそうですが、同時にコナー·オバーストの手元には『Digital Ash in a Digital Urn』のアイディアも出来ていて、同アルバムの制作にも着手。最初のうちはこの2枚を1枚に纏めようとしたそうなのですが、どう考えても、この2枚を1枚に収めるのは不可能と判断し、どうせなら同時に2枚をリリースしようと言うことになったそうです。今回のブログでは、この2枚のアルバムについて(いつも通りの駄文ではありますが)別々に書きたいと思います。

 

 

 

 


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『I'm Wide Awake, It's Morning』

BRIGHT EYES

 

 2枚のアルバムで先に完成したのは本作で、制作に取り掛かったのは03年の冬だったそうです。このアルバムに収録されている楽曲は以前から彼らがライヴで演奏してきたものばかりで、フォーク/カントリー系のトラディショナルかつ超シンプルなシンガー·ソングライター·アルバムになっています。このアルバムのレコーディングはマイク·モギス所有のプレスト!·スタジオで行われ、同じインディー·レーベルの「SADDLE CREEK」のレーベル·メイト、THE FAINTのクラーク·ベイクレイやアンディ·リマスター、ノラ·ジョーンズ等の楽曲提供でも知られているジェシー·ハリス、MY MORNING JACKETのジム·ジャケット等が参加しています。そして、このアルバムでの最も重要なゲストとして特筆すべきはエミルー·ハリスの参加です。エミルー·ハリスはグラム·パーソンズのアルバム『GP』、『Grievous Angel』にデュエット·パートナーとして参加したことでも知られている、アメリカン·フォーク/カントリー界屈指の女性シンガーとして知られていますが、彼女が本作の「We are Nowhere and It's Now」、「Another Travelin' Song」、「Land Locked Blues」で印象に残るコーラスを聴かせ、大きな貢献を果たしています。エミルーはまた、コナー·オバーストに対し、「ロック世代ならではのヴィジョンと新しい言葉を、伝統の枠組みの中に齎したアーティスト」と絶賛し、このエミルーのコナーに対する称賛の声が、本作が決してシンプルなだけに留まらない新しい時代の感性を感じさせるアルバムであることを物語っていると思います。コナー自身は本作でニール·ヤングやジャクソン·ブラウンと言ったシンガー·ソングライターのシンプルで美しい、空間のある音を目指したそうです。ほとんどライヴ録りに近いフォーク/カントリー系のサウンドにも関わらず古臭さを感じさせないのは、彼の唱法自体がフォーク/カントリーの古いフォーマットとは大きく違う、色々な音楽を自然に飲み込んだ独創的なものであることも大きいですし、常に比較対象にされてきたボブ・ディランとも違った、ジェフ·バックリィ登場以降の新しさを感じさせるところも大きいでしょう。歌詞自体は9·11以降の米国の重苦しい影を感じさせますが、コナーのヴォーカルはそれを包み込むように温かく、冷徹でマシーナリーな印象の濃い好対照な『Digital Ash in a Digital Urn』と比較すると、余計に本作に温かみを感じるのだと思います。

 ロックばかり聴いている音楽ファンの方には一聴すると地味に聴こえるアルバムかもしれませんが、何度か聴いているうちに、コナー·オバーストの表現力の素晴らしさに惹き込まれていくはずですし、また、アルバムの最後を飾る「Road to Joy」はロック·ファンの魂を揺さぶる熱い曲なので是非とも聴いていただきたいと思います。ちなみに添付したYouTubeの映像(↓)には敢えて、その「Road to Joy」のライヴ映像を貼っておきましたが、本当に素晴らしいライヴ映像なので、興味ある方には是非とも観ていただきたいです。

 

 

 

 

 

 

 


bright eyes - road to joy

 

 

 

 

 

 

 


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『Digital Ash in a Digital Urn』

BRIGHT EYES

 

 

 

 

 超シンプルなアコースティック·サウンドの『I'm Wide Awake, It's Morning』に対し、歪んだデジタル·サウンド、…と言うより、寧ろ、インダストリアルと言っても過言ではない正反対の音楽性を持ったアルバムが本作の『Digital Ash in a Digital Urn』です。『I'm Wide Awake, It's Morning』と共通して参加しているのは、マイク·モーギスとアンディ·ラマスター、THE FAINTのクラーク·ベイクレイ、THE ELECTEDの一員でもあるジェイソン·ボーゼル等。ゲストとして、YEAH YEAH YEAHSのギタリスト、ニック·ジナーと、エレクトリック·ポップ·ユニットとして知られている、THE POSTAL SERVICEDntelことジミー·タンバレロ等が参加しています。このゲストの違いだけでも、2作品のアルバムのサウンド志向の違いが顕著に出ています。また、コナー·オバーストとマイク·モーギスが使用している楽器も、当然ながら2作品で大きく違っています。『I'm Wide Awake, It's Morning』では、コナーはギターと歌のみ。マイクもマンドリンとペダル·スティール等のシンプルな楽器使用にとどまっていますが、本作ではコナーはサンプラーからウーリッツァー、あらゆる鍵盤類をこなし、マイクもテルミンティンパニなどを駆使して、使用している楽器にも大きな変化を見せています。サウンドも大きく歪んだデジタル·サウンドですが、コナーのヴォーカルも感情面での歪みまで体現するかのように歪ませており、コナーのヴォーカルまでもがノイズの一部として溶け込んでいるかのように感じさせます。もちろん、シンガー·ソングライターとしてフォークやカントリーの印象が強いBRIGHT EYESのアルバムとしては本作は異色の作品に聴こえるのかもしれませんが、過去にこうしたノイジーサウンドをクリエイトした楽曲を発表しているのは『Noise Floor』でも理解出来ますし、また、ディスコ·パンク·バンドのTHE FAINTとの交流の深さからも、こうしたサウンドとの接点を見出すことも出来ます。一曲目の「Time Code」こそヴォーカルが相当に歪み、エレクトロニカの手法が取り入れられている異色のナンバーではあるものの、他の楽曲に関しては、BRIGHT EYES本来のメロディ·メイカーとしての素晴らしさを感じさせるナンバーばかりであること気付くはずです。寧ろ、様々な音楽を吸収している現在のロック·ファンには、フォークロアな『I'm Wide Awake, It's Morning』よりも本作の方がより響くのかもしれません。ゲストの違いはあるものの両作の参加ミュージシャンにさほどの違いはないので、本質的な楽曲の構造そのものには大きな変化はなく、2枚をじっくり聴いていただければ、むしろ統一感を感じることが出来るはずです。

 コチラにもいつも通り、本作収録曲のYouTubeのMVを貼りました(↓)。このMVを観ていただくとお分かりいただけると思いますが、ノイジーな印象の濃いアルバムながらも曲そのもののメロディは本当に質の高いものばかりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Bright Eyes - Easy / Lucky / Free

 

 

 

 

 

 そして、この記念碑的作品とも言える2作品のアルバムのリリースから15年経った2020年の日本公演も、いよいよ来月に迫りました。特にこの両作の全曲再現ライヴとかが予定されているわけでもなさそうですが、この2作品からの楽曲はかなり演奏されることと思います。私は個人的にBRIGHT EYESの大ファンでありながら、全く彼らのライヴに行く機会がなかったので、来月のライヴが非常に楽しみです。

 なお余談ですが、ブログを書いた本日(2/15)はコナー·オバーストの誕生日でもありますので、本日、このブログをご覧になった方はコナーの誕生日を祝ってあげてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(祝) 来日決定! (白い唇のいざない編)


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『And The Glass Handed Kites…』

MEW

 

 今回のブログは6月にジャパン·ツアーも決定している、MEWが2005年にリリースしたアルバム『And The Glass Handed Kites…』について書きますが、そのジャパン·ツアーは『And The Glass Handed Kites…』の“15th Anniversary”と言うことで、このアルバムの全曲再現ライヴが予定されています。しかも、このアルバムを全曲通して演奏するのは初めてになるそうで、今までのジャパン·ツアーのほとんどに行かれている方でも新鮮な気持ちで、この来日公演を体験出来るかもしれません。

 MEWは2003年にメジャー·デビュー·アルバム『Frengers』(実はMEWはこのメジャー·デビュー·アルバムの前に、インディーズ·レーベルで2枚のアルバムをリリースしているので、『Frengers』は通算3枚目)をリリースし、このアルバムが歴史的名盤として、後々までMEWの代表作として多くの音楽ファンに知られてきました。『Frengers』の次作にあたる、2005年発表の本作は発表当初こそ、それなりに評価されてきたアルバムですが、2020年の現在、このアルバムの印象は『Frengers』と比較すると薄いかもしれません。もちろん長年、MEWを長い間聴いてきた方にとっては重要なアルバムの一枚なのかもしれませんが、ヨハン·ウォーラートがバンドに復帰した近年の『+―』(2015年発表)や『Visuals』(2017年)と比較しても、やはり印象は薄いかもしれません。このアルバムのプロデューサーは後に『+―』も手掛けることになるマイケル·バインホーン。バインホーンは、MEWの本作や『+―』の他にも、KORNMARILYN MANSON、HOLE、そして、SOUNDGARDENを手掛けてきた名プロデューサーです。私自身、一度、MEWの『+―』についてブログを書いたことがあり、このアルバムを手掛けたバインホーンについて触れてもいるので、駄文のブログですが参考にしていただきたいです (↓)

 

 

killer-yoshikage.hatenablog.com

 

 

 ヨハン·ウォーラートが復活したアルバムでもある、バインホーン·プロデュースの『+―』は、思いっきりポップに振り切ったアルバムで聴き易いだけでなくソング·ライティングにも素晴らしい冴えを見せた、MEWの本格的な復活を思わせる好アルバムでしたが、本作の『And The Glass Handed Kites…』では不穏なオルタナ·インスト·ナンバーの「Circuitry of the Wolf」で幕を開け、このオープニング·ナンバーを聴いて、耽美で美しくプログレッシブな『Frengers』とは全く違った印象を冒頭から持った方も多いと思います。このオープニング·ナンバーから連動した2曲目の「Chinaberry Tree」こそ耽美で美しいMEWらしいナンバーですが、DINOSAUR Jr.のJ·マスキスとのデュエット·ソング「Why are You Looking Grave?」では、再びオルタナ·ナンバーに移行し(ちなみにマスキスは「An Envoy to the Open Fields」でもバッキング·ヴォーカルで参加)、冒頭からかなりの度合いでオルタナ嗜好の強い印象を与えています。MEWとマスキスのコラボは異色な印象がありますが、元々、MEWのメンバーは、DINOSAUR Jr.の大ファンでこのアルバム制作前からの旧知の間柄だった為にすんなり実現したコラボらしいのですが、このマスキスの参加もこのアルバムのオルタナ化の印象をかなり濃くしている部分はあると思います。耽美で美しいサウンドと不穏でラウドなギター·サウンド、下手すれば水と油の関係になりかねない二つのサウンドを上手く融合させ、個々の曲が違った個性を持っているにも関わらず、アルバム全体が一つの大きな流れを持つように展開していく様は実に見事としか言いようがなく、オルタナティブな新しい血を導入しながらも、MEWの美意識も強く感じさせる、『Frengers』とは全く違った傑作アルバムになっていると思います。しかし、この“新しい血”であるはずの不穏でラウドなギター·サウンドが、どこかヒリヒリとした痛みに感じてしまうのは、本作リリースの翌年の2006年にヨハンが脱退してしまった為、このアルバムのサウンドも自然に痛々しく感じさせてしまっている部分も否定出来ず、ヨハン復帰後の『+―』までの長い低迷期の予兆に聴こえてしまうのでしょう…。しかし、ヨハン復帰後で見事に復活し、アルバム発売から15年経ち、全曲再現ライヴも実現する現在こそ、このアルバムの真の意味での評価が出来る時なのかもしれません。名盤『Frengers』の影になって、長年、正当な意味での評価がなされてこなかった本作をじっくり聴くには、6月のジャパン·ツアーは良いきっかけになるのではないでしょうか? 実は私自身も恥ずかしながら、『Frengers』や『+―』、『Visuals』に比べ、本作は近年、ほとんど聴いていなかったに等しいのですが、このジャパン·ツアーをきっかけに久々に聴いてみたら、本作が凄いアルバムであることを改めて実感し、最近、よく聴いているアルバムの一枚になっています。

 なお余談ですが、タイトルの副題 (?)の“白い唇のいざない”は、本作の日本盤のボーナス·トラックとして収録されている曲で、ヨナス·ビエーレが日本語で歌っている曲です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


MEW - Special (Video)

 

 

 

 

 

 

 


MEW - The Zookeeper's Boy (Video)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


MEWからメッセージが到着!

 

 

 

 

 

 

 

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Best Album Of 2010's


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 昨日に引き続きのブログですが、本日のブログは、私が選んだ2010年代のアルバム·ベスト10を発表したいと思います。どこかの音楽雑誌で、2010年代のベスト·アルバムを発表する企画をやっていましたが、私は敢えて、自分の音楽嗜好が明確になりやすいように10枚に絞らせていただきました。選考基準は基本的に、2010年1月1日から2019年12月31日までに発表されたアルバムになります。

 今までの過去のロックの歴史には様々な、ジャンル、ムーヴメントがありました。プログレ、ハード·ロック、グラム·ロック、パンク、グランジ、ブリット·ポップ、シュゲイザー…等、多くのムーヴメントがロック·シーンを賑わせることで活性化してきましたが、悲しいかな?、2010年代には、そうしたシーンを活性化させるムーヴメントは結局、何も起こりませんでした…。2000年代ですら、ガレージ·ロック·ムーヴメントがロック·シーンを活性化させてきたわけですが、悪く受け取ってしまえば、ロック生誕以来、最も停滞してしまった年代なのかもしれません。ロック·バンドのアルバムのセールスは冷え込む一方なのは確かですし、もう、ロック·バンドが以前ほどのアルバム·セールスを上げることはないのかもしれません。しかし、本当に魅力あるロック·バンドの多くはライヴで素晴らしいパフォーマンスを見せることで、存在感を示し、ファンを魅了しているのだと思います。2010年代と言う時代は、ある意味、ロックにとって“受難”の時代なのかもしれませんが、だからと言って、ロックは決して“死なない”と思います。もしかすれば、この“受難”の2010年代の音楽が何かしらの形で、2020年代以降に芽吹いてくるかもしれないからです。

 もちろん、私もそうですが、皆さんもこの2010年代を“受難”とは捕らえずに、素直に音楽を楽しまれてきたはずです。ちょっと、ネガティブな内容の前置きになってしまいましたが (苦笑)、私の2010年代のアルバム·ベスト10を発表したいと思います。

 

 

 

 

 

 


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①『Silence Yourself』

SAVAGES

 

 私がこのアルバム·ランキングを考えた際、真っ先に2010年代のアルバムのトップは、このアルバムしかないだろう。それぐらい、2010年代の中では、ダントツでインパクトのあるアルバムだと思います。このアルバムは発表当時、THE CUREやSIOUXSIE AND THE BANSHEESと比較されることが多かったのですが、このアルバムは明らかに過去のポスト·パンク·バンドの焼き直しや模倣とは違う、新しい時代のサウンドでした。どちらかと言えば、ノイジーなギター·サウンドはBAUHAUS辺りに近いと言えば、近いのかもしれませんが、彼女達の手法は後に共演することになる、BO NINGEN辺りのオリジナリティの高いノイジーオルタナに近いのかもしれません。どこか凍てついたクールさも同胞しながらも、“私はココにいる”(I am Here)と言う主張は、無毛な2010年代の中での自分達の存在感を問う、熱く攻撃的な時代を体現する彼女達のメッセージなんだと思います。当然、この時代を生きる彼女達にとって、過去のポスト·パンク·バンドと比べるのは愚の骨頂。ましてや、THE SLITS等のフェミニズム·バンドや90年代のライオット·ガール·バンド連中とは明らかに一線を画しているバンドで、過去の女性バンドにはない唯一無二の稀有なバンドだと思います。

 個人的に2016年に真夜中の幕張メッセで行われた『HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER』での、彼女達の圧巻のライヴの模様は以前、このブログでも書かせていただきましたが、本当に素晴らしいライヴ·バンドで、この日の素晴らしいライヴ·パフォーマンスの姿も、このアルバムの評価に繋がっているのかもしれません。

 

 

 

 


Savages - "Shut Up"

 

 

 

 

 

 


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②『Beyondless』

ICEAGE

 

 SAVAGESを圧倒的な1位に挙げましたが、デンマーク·コペンハーゲン出身のこのバンドを挙げてこそ私らしいと、このブログの購読者の方は思うのではないでしょうか?(笑)このアルバムは2018年にリリースされたアルバムで、この時期は私がちょうどネットを離れたいた時だったので、このアルバムをこのブログで取り上げる機会がなかったのですが、ICEAGEの最高傑作であると共に、(個人的に)2010年代を代表するに相応しいアルバムだと思っています。

 ICEAGEと言うバンドは、初期の頃こそ、新世代のポスト·パンク·バンドとして評価され、あのピッチフォークにも高く評価されてもきたのですが、フロントマンのエリアス·ベンダー·ロネンフェルトは、元々、ICEAGEの他にホワイト·ソウル嗜好のMARCHING CHURCH、エレクトリック·ユニットのVar (このユニットは現在、解散)等の別プロジェクト·バンドでも積極的に活動しているのですが、本家(?)のICEAGEでも、3rdアルバム『Plowing Into the Field of Love』で、カントリー·ミュージックやバー音楽等の幅広い音楽を取り入れた作品を作りあげました。エリアスは日本公演で新宿で夜飲んでいても、そこに流れている音楽にも積極的に耳を傾けていたそうですが、この4枚目にあたる本作でも、ガレージ·パンクからサイケデリックまで幅広い音楽を取り入れ、3rdアルバム以上に素晴らしい作品を仕上げました。ちなみに、このアルバムではPRIMAL SCREAMとも共演経験のあるスカイ·フェレイラとも共演を果たし、更に新しい領域へと踏み込んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 


Iceage - Pain Killer (feat. Sky Ferreira)

 

 

 

 

 

 


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③『The Balcony』

CATFISH AND THE BOTTLEMEN

 

 このCATFISH AND THE BOTTLEMENのデビュー·アルバムも、1位のSAVAGESのデビュー·アルバムと並んで、衝撃的な1枚と言えるのではないでしょうか?。このアルバムに関しては、私も過去にブログで書かせていただきましたが、2010年代を英国ロックを代表する一枚と言っても過言ではないはずです。この後にリリースされる、2ndアルバムと3rdアルバムでは、アリーナ·ロック向けの王道ロック路線へとシフトしていきますが、このアルバムは、試験管ベイビーと言う宿命を持つ、フロントマンのヴァン·マッキャンの切なくも悲しい愛のストーリーで構成されています。このアルバムを聴いて、UKロックの未来を確信したのは決して、私だけではないはずです。このアルバムは言ってみれば、バンドだけではなく未来のUKロックの将来への第一歩と言える重要な作品と言えると思います。

 

 

 

 

 

 

 


Catfish and the Bottlemen - Kathleen

 

 

 

④『Come of Age』

THE VACCINES

⑤『Lonerism』

TAME IMPALA

⑥『Hot Thoughts』

SPOON

⑦『Don't Forget Who You are』

Miles Kane

⑧『King of the Waves

LITTLE BARRIE

⑨『The Heart is Monster』

FAILURE

⑩『Find What You Love and Let It Kill You』

HURRICANE #1

 

 以上が、私の2010年代のアルバム·ベスト10ですが、一応、少しだけ時代を反映しつつも、結局は独り善がりなランキングになったかなと思います(笑)結局、ムーヴメントそのものが存在しないに等しい、2010年代から選出すると、選ぶ方それぞれのランキングになるだろうってことですかね? FAILUREやHURRICANE #1のような復活したベテラン·バンドのアルバムも個人的には期待以上の作品だったと思いますし、また2010年代をTHE VACCINESやTAME IMPALAの作品も、当然ながら時代を反映する素晴らしい作品だと思います。また、10年経って2020年代で同様な企画があった際に、ロックの歴史に残る素晴らしい作品がランクインするような状況になって欲しいと願うばかりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(祝)来日決定! & (祝)年間アルバム·ランキング2019第1位


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『Happy in the Hollow

TOY

 

 2014年開催の『HOSTESS CLUB WEEKENDER』以来、6年ぶり。単独公演では初となる公演が、4月16日 (木)に東京·新宿MARSで行われるTOY。私が昨年、書いたこのブログで『Best Album Of The Year 2019』にも第1位に、このアルバムを選ばせてもいただきました。本来なら、昨年1月にリリースされた、このアルバムのブログは昨年の内に書かなければいけないはずのものだったのですが (苦笑)、来日も決定した、このタイミングで『Happy in the Hollow』について書くのも悪くないのかな?と言い訳しときます(笑)

 私のブログを過去から購読されている方は、気付いておられる方もいらっしゃると思いますが、私は過去に彼らの2ndアルバム『Join the Dots』、3rdアルバム『Clear Shot』についてブログも書いている、一応、TOYの大ファンです。特に『Clear Shot』に関しても、2016年の年間アルバム·ランキングの第3位に選出させていただいているので、私がどれだけ、TOYを好きなのかはご理解いただけてると思います。TOYはデビュー当初は、『Primary Colours』発表時のTHE HORRORSと比較されることが多かったのですが、人気に関しては、THE HORRORSはもちろん、他国のサイケデリック·ロック·バンドのDEERHUNTERや、TAME IMPALAにも大きく水を開けられ、特に我が日本では、なかなか評価が得られないバンドでした。しかし、遂に4枚目のこのアルバムのリリース後に、やっと実現した単独来日公演を機会に、TOYの素晴らしさが少しでも我が国で理解されたらと思います。

 

 

 

 

killer-yoshikage.hatenablog.com

 

 

 では、このアルバムについて書きたいと思いますが、過去の彼らの歴史等に関しては、前述の通り、私は過去に『Join the Dots』や『Clear Shot』のブログで書いたはずなので、そこは割愛させていただきたいと思います。

 このアルバム『Happy in the Hollow』は、彼らにとって、通算4枚目のアルバムになりますが、彼らの過去3枚のアルバムをリリースした、『Heavenly Records』から『Tough Lough Records』に移籍した初のアルバムになります。 フロントマンのトム·ドゥーガル曰く、このアルバムでは新鮮なアプローチを試したかったそうで、このアルバムを『Tough Lough Records』のスタッフに聴かせた時に、彼らが示してくれた、自分達の音楽に対する熱意や情熱に惹かれたそうで、TOYが新しい音楽を創作するうえで、このレーベル移籍は必然のものだったと言えるのだと思います。そして、本作はセルフ·プロデュース作品でもあり、初めて、自分達でミックス·ダウンを行った作品にもなります。セルフ·タイトルのデビューアルバムから『Join the Dots』までを手掛けたエンジニアのダン·カレイのスタジオを借りて、彼にアドバイスを受けながら、やり方を覚えていき、スタジオを“一つの楽器”として使えるまでに至ったと言うことで、より今まで以上にクリエイティブな、アルバム制作が出来た作品だと言えると思います。

 前作『Clear Shot』は憂いを感じさせる耽美ながらもシンプルなギター·ロック作品で、彼らのソング·ライティングの素晴らしさを強く感じさせる作品でしたが、本作はより多面的に、サイケデリック、クラウト·ロック、ポスト·パンク等、様々なサウンドを取り入れた作品で、TOY独特の美意識の高さを感じさせつつも、実験的なアプローチも盛られた、聴きどころの多い作品に仕上がっていると思います。冒頭曲の「Sequence One」は、ベース·ラインが印象に残る楽曲ですが、どこか、THE ROLLING STONESの『Their Satanic Majesties』を思わせる、パラノイアな独特な世界観を漂わせています。そこから、TOY独特の憂いのある美しさを感じさせる「Mistake a Stranger」を経て、アグレッシブなオルタナ·ナンバーの「Energy」とへと展開しますが、今まで以上に一曲一曲の繋がりが万華鏡のように変化していくところは、今までのTOYにありそうでなかった展開かもしれません。祝祭を感じさせる「Strangulation Day」、機械的なクラウト·ロックながらも人間味を感じさせる「Mechanism」、そして、インスト曲「Charlie's House」からラストの「Move Through the Dark」への美しい展開。漆黒の闇から眩いばかりの光、そして再び闇と言った具合に、様々なTOYワールドが堪能出来る一枚と言えると思います。様々なサウンド·アプローチが聴ける作品ではあっても、常に美意識と憂いのある耽美な世界観は大事にされている作品ではあると思います。この前述の美意識がサイケデリック·バンドとして、ピッチフォーク等の偏屈なインディー·メディアの正当な評価の妨げの一因にもなっていると思われますが、それとは反するように本質的に憂いのある美しいUKロックを好まれる方には根強く愛されるバンドではないかと思います。

 駄文の私のブログで、TOYの素晴らしさが伝わったどうかは疑問ですが (苦笑)、機会ある方は是非とも、4月の来日公演に足を運ばれることを強くオススメします。

 

 

 

 

 

 

 

 


TOY - 'Sequence One' (Official video)

 

 

 

 

 


TOY - "Mechanism' (Official Video)

 

 

 

 

 


TOY - 'You Make Me Forget Myself' (Official video)

 

 

 

 

 

 

 

 

www.alive.mu


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今年リリースされたカヴァー·アルバム3枚

 

 3日前に年間ベスト·アルバム·ランキングと言う形で、はてなブログに復帰させていただきましたが、本日は本当に今年最後と言うことで、今年リリースされた、3枚のカヴァー·アルバムについて書きたいと思います。

 カヴァー·アルバムと言うと、当然、オリジナル曲が大半を占める通常のスタジオ·アルバムに比べると軽視されがちで、よっぽど好きなアーティストのカヴァー·アルバムでもない限りは購入しない方も多いと思います。しかし、カヴァー·アルバムやカヴァー曲を通じて、そのアーティストのルーツを深く知るだけでなく、そのカヴァーされたアーティストの再評価にも繋がっていることも多々あるのも確かです。また本当に優れたアレンジでクオリティーの高いカヴァー·アルバムももちろんありますが、少なくともカヴァー·アルバムがそのアーティストの代表作になった例がほぼ皆無なのも、また確かです。今回のブログでは、今年リリースされた、モリッシー、TOY、WEEZERのカヴァー·アルバムを取り上げたいと思います。

 

 

 

 

 


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『California Son』

Morrissey

 

1.Morning Starship (Jobriath)

2.Don't Interrupt the Sorrow (Joni Mitchell)

3.Only a Pawn in Their Game (Bob Dylan)

4.Suffer the Little Children (Buffy Sainte-Marie)

5.Days of Decision (Phil Ochs)

6. It's Over (Roy Orbison)

7.Wedding Bell Blues (Laura Nyro)

8.Loneliness Remembers What Happiness Forgets (Dionne Warwick)

9.Lady Willpower (Gary Puckett and the Union Gap)

10.When You Close Your Eyes (Carly Simon)

11.Lenny's Tune (Tim Hardin)

12.Some Say I Got Devil (Melanie)

 

 

 今年の5月に発売されたモリッシーのカヴァー·アルバムで輸入盤のみで発売されました。上の曲名(↑)の横のカッコ内には原曲のアーティスト名を表記させていただきましたが、ジョニ·ミッチェル、ボブ・ディラン、ロイ·オービソン、ディオンヌ·ワーウィック等、かなり知名度の高い大御所のアーティストのカヴァー曲が多いことに気付くことと思います。知名度の高いアーティストばかりとは言え、上記のアーティストを知っている方でも全曲知っている方は、ほぼ皆無なんじゃないかと思えるほど、マニアック(?)な楽曲ばかりで、ほぼモリッシーの新曲を聴いている感覚で聴けますし、何よりも曲のアレンジのセンスの高さも群を抜いて高く、シニカルな皮肉屋のイメージの強いモリッシーにしては、非常にアーティストのリスペクトを感じる温かみを感じることが出来ます。

 大御所のカヴァー曲も、もちろん秀逸ですが、1曲目のジョブライアスと、4曲目のバフィー·セイント·マリー、それぞれのカヴァー曲が、より、モリッシーらしい選曲になっていると感じます。 ジョブライアスはエレクトラ·レコードが大々的に金をかけて売出したものの、全く売れずに下降線を辿り、83年にエイズで亡くなった悲劇のグラムロック·シンガーですが、かつて、NEW YORK DOLLSの大ファンだったモリッシーが好きそうなアーティストで、曲のアレンジももちろん、グラム風味の華やかなエレクトリック·サウンドに仕上がっています。4曲目のバフィー·セイント·マリーは、シンガーソングライターですが、アメリカ先住民が直面している問題を取り上げている社会活動家でもあり、社会意識の高いバフィーの側面はモリッシーと符号する部分も多く、この曲のアレンジもリズム面の細部まで念入りなものになっています。

 

 

 

 

 


Morrissey - Morning Starship (Official Audio)

 

 

 

 

 


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『Songs of Consumption』

TOY

 

1.Down on the Street (THE STOOGES)

2.Follow Me (Amanda Lear)

3.Sixty/Forty (Nico)

4.Cousin Jane (THE TROGGS)

5.Fun City (SOFT CELL)

6.Lemon Incest (Serge & Charlotte Gainsbourg)

7.Always on My Mind (Elvis PresleyPET SHOP BOYS…etc)

8.A Doll's House (John Barry)

 

 

 つい先日、『Happy in the Hollow』を年間ベスト·アルバムに選出させていただいたTOYですが、実は11月に輸入盤のみですが、このカヴァー·アルバムもリリースしています(ちなみに『Happy in the Hollow』は、1月リリース)。上記のモリッシー同様、コチラにもカッコ内に原曲のアーティストを表記しましたが、イギー·ポップのTHE STOOGESから、「Wild Thing」のヒットで有名なガレージ·バンドのTHE TROGGS、ニコ、セルジュ&シャルロットのゲンズブール親子まで、アーティストのジャンルの振れ幅と言う点ではモリッシー以上と言えると思います。基本的にはエレクトリック·ポップ風なアレンジで統一されていて、初っ端の1曲目のTHE STOOGESの曲までエレポップなアレンジにしているところは凄い徹底しているところだと思います。それから、2曲目のアマンダ·リア、6曲目のゲンズブール親子とフランスで活動しているアーティストを、UKロック·バンドが取り上げる機会もなかなか無いと思いますが、こうしたカヴァーで、TOYの音楽ルーツにフレンチ·テーストが、TOYの音楽センスに繋がっていることに気付かされます。このフランス·アーティスト2組のアレンジに関しては基本的な楽曲自体がエレポップなので、そこはアレンジをイジり過ぎすにオリジナルに忠実なところも好感が持てます。ちなみに、ゲンズブール親子の「Lemon Incest」はシャルロットの歌手としてのデビュー曲でもあり、ファンの間でも人気の高い曲です。ちなみに同じ欧州出身のニコ(ニコはドイツ出身)の「Sixty/Forty」は大胆にインダストリアル·サウンドにアレンジされていて、アーティストによって、イジるべきところと原曲に忠実にする部分の分け方、センスの高さを感じさせてくれます。

 このアルバムもモリッシーのカヴァー·アルバムと比較しても遜色ないアルバムで、是非とも機会があったら聴いていただきたいアルバムです。

 

 

 

 

 


TOY - 'Fun City' (Official Video)

 

 

 

 

 


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Weezer (Teal Album)』

WEEZER

 

1.Africa (TOTO)

2.Everybody Wants to Rule the World (TEARS FOR FEARS)

3.Sweet Dreams(are Made of This) (EURYTHMICS)

4.Take on Me (a〜ha)

5.Happy Together (THE TURTLES)

6.Paranoid (BLACK SABBATH)

7.Mr.Blue Sky (ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA)

8.No Scrubs (TLC)

9.Billy Jean (Michael Jackson)

10.Stand by Me (Ben E.King)

 

 

 上記(↑)のカヴァーしたアーティストを見ていただくと、TOTOTEARS FOR FEARS、EURYTHMICSからマイケル·ジャクソンまで、80年代を通過している者なら知らないはずのないベタなヒット曲に加え、ELO、BLACK SABBATH、そしてベン·E·キングの超有名曲まで、ガッツリ、超ベタな選曲で攻めているカヴァー·アルバムですが、演奏の方も笑っちゃうくらい、オリジナルに“超”忠実です。

 実はこのアルバムが発売された同じ月(3月)に、もう一枚、『Weezer (Black Album)』がリリースされていることもあって、この『Weezer (Teal Album)』はむしろ、肩の力を抜いた企画盤的な印象が強いので、ブラック·アルバムと同時に、このティール·アルバムを購入された方には、むしろ、完コピのこうしたカヴァー·アルバムの方がむしろ、聴きやすいのかもしれません。もちろん、本人達は一生懸命にこのカヴァー·アルバムを制作したと思いますが、どこか遊び心と言うか楽しめる余裕を感じさせるのは、彼らのユルいキャラクター故なのかもしれません(笑)。

 正直、あまりにオリジナルに忠実過ぎな完コピ·カヴァーなので、80年代を通過している方は直ぐに飽きる可能性もあり得ますが、むしろ若い世代のWEEZERファンの方がこうしたアルバムは素直に聴けるのかもしれません。

 

 

 とりあえず、今回はちょっと軽めの内容のブログを書かせていただきましたが、来年もまた時間がある時にそれなりの音楽ブログが書けたらと思っています。

 

 

 

 


Weezer - Take On Me (Official Video)

 

 

 

 

 

Best Album Of The Year 2019

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 今年の夏に私自身、Facebookを始めとするSNSに復活させていただきましたが、この「はてなブログ」の方も遅まきながら復活させていただきました (汗)。しかも、いきなりのブログの復帰が年間ベスト·アルバムと言うことで、過去に我がブログを購読いただいて方には違和感もあることと思いますが、お手柔にお願いします(笑)私も偉そうに年間ベスト·アルバム·ランキングとか言いつつ、たいした量の音楽を聴く時間のない状態での選択ですので、その辺もご了承ください。
 今回、選んだランキングのうちの1位〜3位までは甲乙つけ難い素晴らしいアルバム故、悩みましたが、まず、1位のTOYに関しては来年に来日も決定している上に、私自身、3年前の年間ベスト·アルバムに彼らのアルバムを3位に選出。更に、彼らの来日公演のチケットもゲットしている状態なので、かなり、その点を加味して贔屓目にしています。同じく、2位のFAT WHITE FAMILYも来年に来日公演が決定していますが、今年聴くべきアルバムの一枚と言っても良い素晴らしいアルバムで、仮に来日が決定していなかったとしても、同じ順位に付けたことと思います。 3位のTOOLも圧倒的な作品で、1位にしても決して可笑しくはない大傑作だと思いますが、如何せん、アルバムの発売日が輸入盤が今月13日発売、日本盤が18日発売ではじっくり聴いている時間、作品と向き合っている時間も無さ過ぎますし、今月の半ばにリリースされた作品を1位にするのも無理があると思い、とりあえず、3位と言う順位にさせてもらいました。 
 全体的には聴いている枚数が以前よりも少ない割には、幅広いジャンルからの選択になったと思いますし、個人的に忙しい割にはそれなりの音楽生活を送れたのかな?とランキングを作成してみて感じました。私も以前、ブログを書いていた頃に比べると、転職したこともあり、忙しくてブログを書いている時間もなかなか取れないのが実情ですが、せっかくブログも復帰したので、多少、コラム的なものを書いたりする等、不定期にブログの方も更新したいと思います。 また来年も素敵な音楽生活を送れたらと思います。では、皆さんも良いお年をお過ごしください。
 






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【Best Album of The Year 2019】

(Selected by Yoshikage Kira)




①『Happy in the Hollow
TOY




TOY - 'Sequence One' (Official video)



②『Serfs Up!』
FAT WHITE FAMILY




Fat White Family - Feet





③『Fear Inoculum』
TOOL



TOOL - Invincible (Audio)




④『I am Easy to Find』
THE NATIONAL

⑤『Schlagenheim』
black midi

⑥『Why Me? Why Not.』
Liam Gallager

⑦『Wallop
!!!

⑧『The S.L.P.』
THE S.L.P.

⑨『The Balance』
CATFISH AND THE BOTTLEMEN

⑩『Deceiver』
DIIV








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