吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

今年、最も聴かなければいけない一枚…かもね…(笑)


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『For the first time』

BLACK COUNTRY, NEW ROAD

 

 

 昨年と今年こそ、コロナ禍のパンデミックの影響で停滞していますが、ここ数年のロンドンの音楽シーンから素晴らしいバンドが続々、登場しているのは、新しい音楽を追っている方ならご存知のことと思います。SHAME、GOAT GIRL、black midi、SORRY、そして今年、デビュー·アルバムをリリースするSQUIDと、(現在、コロナ禍中とは言え)次々と個性豊かなバンドが登場している状況です。彼らはサウス·ロンドンのヴェニュー「Windmill」を拠点にし、音楽シーンを席巻しているわけですが、そんなロンドン音楽シーンの盛況の中、デビュー·アルバム発売前から最も注目を浴びているバンドが、このBLACK COUNTRY, NEW ROADです。このアルバムを聴いていない方でも音楽の情報を追っている方は何処かで必ず、彼らの名前を聞いたことがあるはずですが、アルバムを聴いていない方、もしくはネットでそれほど彼らの音楽を聴いていない方は彼らの実態が掴めないと思います。もっとも彼らの音楽自体、前述のロンドン勢とは違って、YouTube等で音源を少し聴いただけでは理解し難いバンドではあるのですが、私なりにこのバンドを色々な側面から調べ上げて解釈して、このアルバム及びバンドの魅力について書くつもりです。

 BLACK COUNTRY, NEW ROADはアイザック·ウッド(Vo/G)、ルイス·エヴァンス(Sax)、メイカー·ショウ(Key)、チャーリー·ウェイン(Dr)、ルーク·マーク(G)、タイラー·ハイド(B)、ジョージア·エラリー(Violin)の7人。今まで英国で彼らが行ったライヴは全てソールド·アウト。シングルとしてリリースした「Sunglasses」と「Athens, France」の2枚のシングルはプレミア化する等、デビュー·アルバム·リリース前から、どれほど彼らの期待が大きいのかが前述のエピソードから理解出来ます。そんな注目度の高い彼らが契約したレーベルがクラブ系音楽のレーベルとして有名な「Ninja Tune」。メンバーいわく「Ninja Tune」が最も熱心に彼らと契約したがっていたそうですが、ジャンルレスな彼らの音楽には下手なインディー·レーベルよりも活動しやすい面もあるのかもしれませんし、レーベルとしてもクラブ系音楽のファン層だけでなく、更に新たなファン層を増やす絶好のチャンスなのかもしれません。このアルバムのプロデュースを担当したのは、MY BLOODY VALENTINEやSORRYを手掛けたアンディ·サヴァース。アルバムはライヴ·レコーディング形式での録音になっているそうで、元々、彼らの音楽そのものがライヴを観ないと、その魅力や本質が掴めない部分が多々あるのも事実なので、こうしたライヴ·レコーディング形式がベスト…と、言うよりはこの形式での録音にならざるを得なかったのかもしれません。せっかくですから、ブログの途中ではありますが、その彼らの魅力でもあるライヴの映像も貼っておきます。

 

 


https://youtu.be/xCRy3_p_hiU

 

 

 

 アルバムのオープニングを飾るインスト·ナンバー「Instrumental」は、プログレやジャズ·フュージョンを思わせる、非常にライヴを得意とするバンドらしい始まり方ですが、2曲目の「Athens, France」は90年代のグランジを思わせるグルーヴが効いたナンバーで、アルバムの中では一番聴き易い曲かもしれません。「Science Fair」と「Sunglasses」はポスト·ハードコアもポスト·ロックもオルタナも内包した静寂さとノイズが入り混じった不思議な魅力を持った曲で、アイザック·ウッドのポエトリーリーディング風のヴォーカルもその不可思議な雰囲気を醸し出すのに一役買っているような気がします。そして、5曲目の「Trax X」は曲途中にサックスとヴァイオリンが溶け合うアルバム中、最も美しいナンバーとも言える曲で必聴。そしてラストの「Opus」も高揚感を感じさせるジャズともプログレともオルタナとも言える、彼らのライヴ·バンドとしての真骨頂と断言しても良い曲で、生でライヴで聴けたら最高の曲かもしれません。ざっと軽くアルバム全6曲を紹介しましたが、長尺なナンバーが多い割に6曲しかないので、もっと聴きたいと思っているうちに、あっという間にアルバムが終わってしまう感じで、もう少し食べたいと思っている時に食べ終わるのがちょうど良いとか、しょうもない例えが相応しいのかもしれません (苦笑)。彼らの音楽は色々な音楽を詰め込んだ混沌性がありつつ実験性も感じさせるのですが、実は意外にもアルバム通して、実は非常に聴き易いという実に不思議なアルバムです。彼らはもちろん実験的なバンドや音楽に影響を受けているのは確かなのですが、実は反面、大のポップ好きでもあります。彼らはMGMTの「Time to Pretend」をライヴでカヴァーしていたり、アルバム収録曲ではないですが「Busketball Shoes」という曲ではチャーリーXCXに対する愛を歌ったりしています。実際に彼らはMGMTやチャーリーXCXだけでなく、ラナ·デル·レイやビリー·アイリッシュもお気に入りだそうで、メンバーいわく本当はポップ·アルバムを作りたかったけど、自分達がポップなアルバムを作ろうとしたら、あのアルバム(もちろん、このデビュー·アルバム)になったと言うことらしいです(笑)それから、バンドの演奏以外にもアイザック·ウッドのポエトリーリーディング風のヴォーカルもバンドの魅力の一つになっていますが、このアイザックのヴォーカルは彼が独自でバンドのメンバーと関わりなく歌を入れているそうで、メンバーは少なくともライヴ中にはモニターの音を聴き取る為にアイザックのヴォーカルにはほとんど干渉しないそうです。

 昨年はコロナ禍でほとんどライヴが出来ない状態でしたが、交友のあるblack midiと自分達の拠点でもある前述の「Windmill」の資金調達の為のライヴを行ったりし、またメンバーのルイス·エヴァンスはSQUIDのデビュー·アルバム『Bright Green Field』に参加したりと、お互いに助け合いながら、「Windmill」の灯を消さないように頑張っています。英米でもようやく、コロナのワクチン接種が出来るようになり、音楽界にもほんの少しではありますが明るい未来が見えてきたと思います。一般人のワクチン接種が満足に出来る状況になっていない日本での来日公演等、当面、望めませんが、いつの日かBLACK COUNTRY, NEW ROADを始め、Windmill勢のライヴが楽しめる時が来るのを切に祈るばかりです。

 

 

 

 

 

 


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https://youtu.be/xDcGl8tZhrs

 

 

 

 


https://youtu.be/jkppJiPZJaw

 

 

 

 

 

 

 

 


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