吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

HURRICANE #1 Live in Japan (11/5)




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 この日のHURRICANE #1の来日公演は実に19年ぶりになりますが、もちろんRIDE再結成のためにアンディ・ベルの参加はなし…。 しかし、この日の公演は単純に19年ぶりのHURRICANE #1の勇姿を観られるという単純なものではなく、真の意味での正統派UKロック・ファンが集う、実に充実した公演になったと思います。 このHURRICANE #1のジャパン・ツアーを実現してくれたのは、オープニング・アクトも務めてくれた、THE MAYFLOWERSで、彼等のおかげでこの日観に来たファンは至福の時を過ごすことが出来ました。 私自身、泊まりの仕事が終わったばかりで、17時開場という早い時間は少しキツい気もしましたが (苦笑)、それでも、最後まで最高に楽しい時間を過ごすことが出来ました。 私も開場時間まで新潟から来たという男性の方ともお話して、その方がHURRICANE #1のメンバーとにサインを貰ったり、記念撮影したりと筋金入りの音楽好きで、こういう場でUKロックの話をしたり出来たのも、これから始まる公演をより楽しいものにしてくれたと思います。 ちなみに会場のチェルシー・ホテルは新宿MARSと同規模ほどの本当に小さなライヴ・ハウスで、アンディ・ベル在籍時の19年前の来日公演だったら、こんな間近でHURRICANE #1を観られるなんて有り得なかったでしょう。 17時も過ぎて、会場内に入場してドリンクを買ってから、いつも通り、図々しく(笑)最前列を陣取って、準備万端。 18時過ぎのTHE MAYFLOWERSの登場前には、OASISファンのためのクラブ・イベントを開催している「OASIS NIGHT」の方がDJブースでUKロックを中心に曲を流してくれて、会場内がUKロックの聖地と化しました。 THE MAYFLOWERS、HURRICANE #1のライヴを、この日に観に来たファンのほとんどは根っからのUKロック・ファンのはずで、単なるHURRICANE #1の19年ぶりの来日公演だけに止まらない、正にUKロック・ファンのための最高の空間になっていたと思います。 OASIS、LA'S、PULPBLURSUEDE等、かかっている曲はUKロック・ファンのツボを突いたものばかりでしたけどね(笑)

 

 18時過ぎに登場したのは、今回のHURRICANE #1の来日公演を実現してくれた、京都出身のバンドで、HURRICANE #1の新作『Melodic Rainbows』の発売元の「Rooster Records」のオーナーでもあるTHE MAYFLOWERS。 THE MAYFLOWERSは『メロディー+ハーモニー+ロックンロール』を信条とするブリティッシュ・ロックのスピリッツを継承した、里山理(Vo/B)、田口勇介(G)、木村耕治(Dr)の三人によるトリオ・バンドです。 5度のUKツアーを始め、海外公演も精力的に行っていて、アンディ・パートリッジ(XTC)を始め、海外のミュージシャンや音楽マニアにも評価の高いバンドです。 HURRICANE #1の招聘だけでなく、DJタイムに「OASIS NIGHT」のDJを起用したように深い"UKロック愛"を感じさせる、"日本のUKロック・バンド"と称しても良いバンドだと思います。 肝心のライヴでは、UK直系の情緒的なメロディーの良さだけに走ることなく、ダイナミズムを感じさせる、ライヴで鍛え上げたロックンロール・バンドで、特別にUKロック好き云々関係なく、充分にライヴ・バンドとしての実力を感じさせてくれるバンドです。 私も個人的にMETZのオープニング・アクトを務めたCRYPT CITY、PRIMAL SCREAMのオープニング・アクトを務めたにせんねんもんだいと、海外バンドの来日公演で素晴らしい日本のバンドを体験することが出来ましたが、THE MAYFLOWERSはそんな素晴らしい日本のバンドの一つだと思います。 UKロックへの深い愛情を感じながらも、単なる英国ロックの模倣に終始せず、オーソドックスながらも骨太なロックンロールを追求しているバンドのように、私は思えました。 アンコールでは、HURRICANE #1のカルロ・マリアーニを交えてのTHIN LIZZYのカヴァー「Boys are Back in Town」も披露しましたが、こうしたカヴァーにも骨太なロックンロール・バンドとしての実力を計り知ることが出来ました。 THE MAYFLOWERSのライヴは通常の来日公演の短い時間でのライヴではなく、アンコールも交えた1時間ほど(?)のライヴだったと思いましたが、HURRICANE #1登場前に充分に素晴らしい時間を過ごすことが出来たと思います。 今回の来日公演の主催者で多忙ながらも素晴らしいライヴ・パフォーマンスを見せてくれた三人には本当に脱帽ですが、これからのバンドの活躍に期待したいと心から思わせるライヴでした。

 

 

 

 

 

 

www.mayflowers.jp

 

 

 

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 そして、THE MAYFLOWERSのライヴが終了後、ステージ前に黒い幕が降りて、いよいよHURRICANE #1の登場。 むろん、今回のHURRICANE #1の来日公演が"アンディ・ベル抜き"なのを、今更述べるのは愚の骨頂ですが (苦笑),、この会場のほとんどがアレックス・ロウの勇姿を一目観たいというファンだったに違いありません。 アンディ脱退→バンド解散、そして、アレックスは癌の闘病生活と苦悩の日々を送って来ましたが、前作『Find What You Love and Let Kill You』、そして最新作『Melodic Rainbows』と再結成後、素晴らしい傑作アルバムをリリースしたことで来日公演の期待も更に高まったに違いありません。 黒い幕が上がり、ライヴはデビュー・アルバム『Hurricane #1』収録曲の「Chain Reaction」からスタート。 注目のアレックスは意外に小柄でしたが、ガッチリとして体型に精悍な掘りの深い健康的な顔立ちは癌と闘病していたとは思えない生気が漲っていて、UKロック屈指のヴォーカリストとしての貫禄を感じさせてくれます。 カルロ・マリアーニ(G)、クリス・ムリン(B)、クリス・キャンベル(Dr)の"新生HURRICANE #1"のメンバーも、このバンドがアンディ・ベルが結成したバンドであることを忘れさせてくれるほど、アレックスとの一体感を感じさせてくれました。 楽曲の方も「I Wanna Kill You」、「Most Anything」という最新作『Melodic Rainbows』からの楽曲を披露した後、デビュー・アルバムからの「Just Another Illusion」をプレイして、最新作と旧作の曲を上手く織り交ぜた選曲になっていた気がします。 形的にはアンディの後釜的な扱いを受けかねないカルロは、再結成後の曲はもちろん、アンディ在籍時の曲も難無く弾き熟して、アンディ不在を感じさせないのはカルロのプレイによるところが大きいと感じさせてくれました。 もちろん、UKロック界屈指のアレックスのヴォーカルの素晴らしさはライヴでも健在で、終始、笑顔で彼自身もライヴを楽しんでいたと思います。 何と言っても、HURRICANE #1の魅力はファンが思わず合唱したくなるアンセミックなナンバーがあるところだと思いますが、「Step Into My World」、「Only the Strongest Will Survive」と言ったアンディ在籍時の名曲はもちろん、「Think of the Sunshine」という再結成後のアンセム・ソングでも合唱が起こり、HURRICANE #1本来の魅力でもある王道UKロック・バンドとしての真髄を発揮したライヴだったと思います。 また最新作からのアコースティック・ナンバー「I  Want You」のようなじっくり聴かせるナンバーも、アレックスのヴォーカリストとしての実力の高さを改めて、感じさせてくれました。 下にこの日のセット・リスト(↓)を掲載しましたが、アルバム別に見ていくとデビュー・アルバムと最新作からの選曲が多いですが、アンセミックなナンバーを中心に置いた、HURRICANE #1のファンが聴きたい曲を抑えたものになっていたと思います。 チェルシー・ホテルという本当に小さな会場でバンドとファンが至近距離で一体になったライヴに、会場のファンもメンバーも至福の時を感じたに違いありません。 私も最前列に陣取っているのでアレックスともライヴ中に握手しましたが、彼の手が意外に小さかったことも(どうでも良いことですが)書いておきます(笑) HURRICANE #1のアンセミック・ソングを腹一杯、堪能出来て素晴らしいライヴでしたが、私はライヴの最後にドラマーのクリス・キャンベルからセット・リスト表を頂いてしまいました。 何回もライヴ参戦してセット・リスト表はおろか、ピックやドラムのスティックさえ貰えたことがない私が、クリス・キャンベルが私に手渡しでセット・リスト表をくれたんですよ…。 もちろん、下に書いたセット・リストはクリスから貰ったものの丸写しですが、クリス、本当にどうもありがとう! しかし、このライヴの楽しみはセット・リストを貰っただけで終了ではありません。

 ライヴ終了後は、HURRICANE #1とTHE MAYFLOWERSのメンバーがステージに上がり、ステージからファンを記念撮影しましたが、この撮影写真はHURRICANE #1のFacebookに掲載されています(ちなみに恥ずかしながら、その写真に私も写っています)。 それから、記念撮影の後は大貫憲章さんがDJブースに登場し、HURRICANE #1のサイン会も同時に開催されました。 サイン会が始まる前、物販のところで私がウロついていると、THE MAYFLOWERSの里山さんが私に「吉良さんですよね?」と声をかけていただきました。 里山さんが私を知っているのには驚きました。 私自身、そういえば「Rooster Records」のFacebookにコメントしたこともありましたし、いいね!を年中つけていましたが、私みたいな一音楽ファンに過ぎない者を覚えていただいた、里山さんの人柄には深く感動しました。 私自身、UKロック・ファンほど良心的な音楽ファンはいないと思っていますが、バンドマンでもあり、レーベル・オーナーでもある多忙な中で私みたいな、所詮、音楽ファンを大事にする姿勢には頭が下がる思いです。 そして、その後は先程、クリス・キャンベルに貰ったセット・リスト表を持ってサイン会に参加してサインまで貰っちゃいましたが、メンバー全員、本当にナイスガイで、もう、ここまで楽しい思いしちゃって良いんだろうかと思っちゃいますよね? 最後の帰り際、出口にいた、THE MAYFLOWERSの田口さんとも話して、THE MAYFLOWERSのライヴにも感動したことを伝え、また機会があったら、THE MAYFLOWERSのライヴも再び観たいと最後に笑顔で握手して、数多くの楽しかった思い出を噛み締めて会場を後にしました。 HURRICANE #1のメンバー、THE MAYFLOWERSのメンバーの皆さんには、私の一生の思い出に残る楽しい思いをさせていただいて、本当に深く感謝しています。 両バンドのメンバーとまた、お会い出来る日がまた来ることを心から祈っています。

 

 

 

 

 

 

HURRICANE #1 Live in Japan Setlist 

Saturday 5th November (2016)

(@CHELSEA HOTEL Shibuya, Tokyo)

 

1. Chain Reaction

2. I Wanna Kill You

3. Most Anything

4. Just Another Illusion

5. Think of the Sunshine

6. What Do I Know

7. Where to Begin

8. Strange Meeting

9. Monday Afternoon

10. All I Want from You

11. What It Means to Me

12. Round in Circles

13. Liz Don't Cry

14. I Want You

15. Step Into My World

16. Only the Strongest Will Survive

 

【Encore】

17. Mother Superior

18. Rain

 

 

 

 


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『Y』以来、37年ぶりのデニス・ボーヴェルとのタッグ作品




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『Honeymoon on Mars』

THE POP GROUP

 

 

 

  先月28日にリリースされた、THE POP GROUPの新作で、昨年リリースされた再結成後初のアルバム『Citizen Zombie』以来、再結成後2作目の作品になります。 本作はデビュー・アルバム『Y』を手掛けたプロデューサー、デニス・ボーヴェルが37年ぶりにプロデュースすることが大きな話題を呼んでいますが、それ以上に3曲のプロデュースを手掛けている、BOMB SQUADのハンク・ショックリーの参加の方がむしろ驚きかもしれません。

 デニス・ボーヴェルの37年ぶりのプロデュース作品と言うことで話題は呼んでいるものの、この作品は決して『Y』の安易なアップデート盤にはなっていません。 このアルバムでデニスが再起用された経緯・意図は全く不明で、元々、デニスにプロデュースを依頼する予定ではなかったらしいのですが、このアルバムで深い意味を持つのは実はハンク・ショックリーの参加の方になると思います。 ハンク・ショックリーはPUBLIC ENEMYの初期3作品を初め、SLICK RICK、ICE CUBE等を手掛けてきたプロダクション・チーム、BOMB SQUADのメンバーで、様々なサンプリングを重ねあわせ、一歩間違えれば単なるノイズになりかねない組み合わせからパワフルな音楽を作り出す手腕で、ヒップホップ界に多大な影響を与えています。 ノイジーで重厚なサウンドを築き上げる、過激なサウンド・プロダクションはマーク・スチュワートの一連のソロ作品を手掛けてきたエイドリアン・シャーウッドの手法と非常に共通している部分があり、「白いアメリカに抑圧・差別・搾取されている黒人達に必要な情報を与えるのが我々の役目だと明言していたチャックD(PUBLIC ENEMY)と、世界中の真実を訴え続けてきたマークのポリシーも見事に合致しています。 このアルバムでバンドがやりたかったことは、THE POP GROUPモードのヒップホップだったのではないかと私は自分勝手に思っています。 私のあまりにも愚直過ぎる、この意見はTHE POP GROUPのファンに相当な反感は買いそうですが (苦笑)、このバンドを全く知らずに、このアルバムを聴いたら、純粋なヒップホップではないにしろ、かなり濃厚なヒップホップ・フレイヴァーを誰しもが感じるのではないでしょうか? ショックリーがプロデュースしている「War Inc.」のパーカッションの音やヴォイス・サンプル、「Burn Your Flag」の女性ヴォーカルの挿入の仕方、「City of Eyes」のイントロのSE等、ヒップホップ・ファンなら思わずニヤリとしてしまうようなサウンドも所々で聴くことが出来ます。 パンクという概念を壊し、先鋭的なサウンドを目指したのがポスト・パンクだとするなら、そのポスト・パンクという概念を壊したと言わないまでも、その枠組みを取り払ったのが本作と言えるかもしれません。 前作『Citizen Zombie』でポール・エプワースと作業することで、最新のテクノロジーにも精通してきて、より新しいサウンドを取り入れることに積極的になったのもあると思いますが、いつまでも過去の遺産的なサウンド固執しないのが、再結成後のTHE POP GROUPなのかもしれません。 『Citizen Zombie』の過去とは明らかに違うスタジオ・テクノロジーを駆使した作風に、往年のファンはおおいに戸惑いを覚えたと思いますが、本作はそれ以上に違和感を覚えたかもしれません。 デニス・ボーヴェルを起用したことで原点復帰を図るのではなく、更にテクノロジーを駆使した作品を仕上げるところが、過去に囚われず進化し続ける現在のTHE POP GROUPらしいところなのかもしれません。 しかし、『Y』の時から、ダブ、ファンク、フリー・ジャズ等、雑多な音楽を取り入れて異種配合したサウンドが彼等の持ち味だったことを考えれば、今回のヒップホップ・フレイヴァー濃厚な本作も決して、彼等らしくない作品なわけではありません。 1980年に解散後に各メンバーは各々のバンドで常に先鋭的なサウンドを追求し続けてきたわけですが、再結成後も常に新しいサウンドを追求する姿勢は、過去のサウンドと大きく変容しても変わらないのだと思います。 じゃあ、37年ぶりにデニス・ボーヴェルと再び組む意味は?と問われても、少なくとも私には分かりません。 ただ、2016年という時代にある音楽とテクノロジーを取り入れて、デニスとバンドが制作すれば必然的にこのサウンドの『Y』になる…なんだか、そんな気もしないでもないです…。

 

 

 

 

 

 

 


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(祝) 来日公演決定!




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『The Ride』

CATFISH AND THE BOTTLEMEN

 

 

 

 

 来年1月にジャパン・ツアーも決定した、北ウェールズ出身のバンド、CATFISH AND THE BOTTLEMENが今年6月にリリースした新作で、2014年にリリースしたデビュー・アルバム『The Balcony』以来、2年ぶりの作品になります。 デビュー・アルバム『The Balcony』は全英10位を記録しましたが、2ndにあたる本作はデビュー作を余裕で上回る全英1位を記録して、今や、THE 1975に続く人気を誇るUKバンドと言っても良いかもしれません。 日本でも2015年1月に行われた初来日公演(代官山UNIT)がソールドアウトを記録して人気も高かったバンドですが、来年1月は更にスケール・アップしての再上陸になります(もっとも昨年『FUJI ROCK FESTIVAL 2015』への出演も決定していたものの、キャンセルになってはいますが…)。 

  本作のプロデューサーを務めたのは、OASISやJET、DIRTY PRETTY THINGS、Noel Gallagher's High Flying Birds等のアルバムを手掛けてきたデイヴ・サーディ。 サーディが手掛けた前述のバンドの作品を聴いたことがある方なら感じることだと思いますが、シンプルなギター・ロックながらもビッグ・サウンドを鳴らす、いわゆる王道ギター・ロック・バンドのプロデュースを手掛けたら天下一品のプロデューサーと言えるかもしれません。 ちなみにフロントマンのヴァン・マッキャンはサーディの手掛けたOASISのアルバム『Don't Believe the Truth』を聴いて、自分もギター・バンドをやりたいと思ったそうで、当然、マッキャンにとってサーディは憧れのプロデューサーでもあり、多大な影響も受けたそうです。 サーディがプロデュースしたOASISの『Don't Believe the Truth』『Dig Out Your Soul』はバンド解散前に制作されたアルバムではありますが、一時期、低迷していたOASISの復活を思わせる後期の傑作で、サーディの手腕を発揮した作品と言えると思います。 OASIS直系のビッグ・メロディーを持ち味の一つにしているCATFISHにとって、正にサーディのプロデュースはうってつけと言えるのかもしれません。 本作はデビュー・アルバムのレコーディング中に並行して書かれた曲が大半で、そういった意味では楽曲作りに関して言うなら、前作に近いタイプの曲が本作でも並んでいて、一聴すると前作とほぼスタイルが変わらない…悪い言い方をしてしまうと代わり映えのしないアルバムにも思えるかもしれません。 しかし、一曲一曲をじっくり聴くと曲の構成そのものがライヴでの反応やラジオでのオンエアも考慮した、実に練り上げられたものになっていることに気付かされます。 本作リリース前、マッキャンが「前作が前座だったとしたら、今作はヘッドライナー」だとアルバムについて語っていましたが、それは楽曲が大きい会場でのライヴでのオーディエンスの反応まで意識したことを意味しているのかもしれません。 サウンド自体もジム・アビスがプロデュースした前作よりも削ぎ落とした感もありますが、王道スタイルを維持しつつ、バンドのライヴ感も損なわないように制作したサーディのセンスの良さを感じさせてくれます。 2作目で大きなサウンドの変化を遂げるUKバンドは多いですが、彼等が選択したのはデビュー・アルバムの基本路線を踏襲しつつ、あらゆる意味で成長とアップデートを遂げた作品と言えるかもしれません。 前作ではマッキャンが情感過多に(笑)愛のストーリーを語り、これもまたCATFISHの魅力の一つでしたが、(あくまで個人的な見方に過ぎませんが)本作ではマッキャンの歌詞に疲弊感を感じさせるものもあり、そこは少し気になるところではあります…。 「7」では「俺はじっくり考えないんだ。 そんな時間はない。 だってじっくり考えないんだから。」と歌われ、「Twice」では「くそっ、もうまともに頭が働かない。 二度だ。!二度も気が滅入ってしまった。 でもこれが最後。」と、断片的ではありますが、よりバンドがビッグになったことでなのか、歌詞から色々な意味での"疲れ"も感じさせられます もっとも、この曲のデモを録っている時のマッキャンの体調は最悪だったそうで、情感過多な前作よりもマッキャンのヴォーカルに少し覇気がないようにも感じましたが、最終的にはしっかりと素晴らしい作品を完成させたと思います。 結局、本作は基本的にデビュー・アルバムのサウンドを踏襲する作品にはなりますが、この先にサウンドの大きな変化が訪れる時があるかもしれません。 後に大きなサウンドの変化を遂げ、その作品が大傑作だった時にこの作品は地味な扱いを受ける(例えば、MANIC STRRET PREACHERSやSUEDEの2ndのように)可能性はありますが、本作は決して、そのような不当な扱いを受けるべき作品ではないと思います。 前作よりもライヴ感を感じさせる本作の楽曲を、来年の来日公演で聴けるのも非常に楽しみです。 私も来年の来日公演に行く予定なので、ライヴに定評のある彼等のパフォーマンスには大きな期待をしています。

 

 

 

 

 

CATFISH AND THE BOTTLEMEN|LIVE INFORMATION|SMASH [スマッシュ] Official Site

 

 

 

 

 

試験管ベイビーというトラウマを乗り越えて… - 吉良吉影の奇妙な音楽日記

 

 

 

 

 

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PRIMAL SCREAM Live in Japan (10/20)




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 この日(10/20)のPRIMAL SCREAMの来日公演は、私にとっては8月のサマソニ以来、STUDIO COASTのライヴとしては5月以来のライヴ参戦となりますが、Facebookのお友達二人と一緒に楽しんだこともあって、実に楽しい時間を過ごすことが出来たライヴにもなりました。 実は私も夜勤明けでのライヴ参戦だったのですが、新木場に行く前にしっかり仮眠もとって天気も良好で気分良くライヴに望むことが出来ました。 少し早めにSTUDIO COASTに着くと、早速、会場外のワゴン車からボビー・ギレスピーが現れると言うサプライズがありました。 ワゴン車に人だかりが出来ていたので何なのか? と覗いてみたら、いきなりのボビー登場で驚きましたが (苦笑)、ボビーを一目でも見られたファンには嬉しいサプライズだったと思います。 しばらくして、私の方もFacebookのお友達のOhkiさんとHaradaさんとお会いして、開場前から音楽の話しに華が咲いて、友達お二人のおかげで楽しい気分でライヴに望むことが出来ました。 時間が来てお二人と入場した後、お二人はグッズ売場に向かわれたので、私は一足先に会場内へ入場し、比較的スペースが空いていたステージ右側に陣取りました。 私の整理番号はA800番台という決して良い番号ではなかったのですが、その割には比較的、良い場所を確保出来たと思います。 今回はPRIMAL SCREAMの来日公演ですが、オープニング・アクトのにせんねんもんだいも私にとって楽しみなバンドなので、PRIMAL SCREAM前から私のテンションは嫌がおうでも高まりました。にせんねんもんだいのアルバムについて書いた私のブログを読まれた方もいると思いますが、そのブログを読んでいただければ、私がにせんねんもんだいをどれだけ楽しみにしていたかはお分かりいただけると思いますが…(笑)

 ほぼ定刻通りの19時からライヴをスタートしたオープニング・アクトのにせんねんもんだいは、高田正子(G)、在川百合(B)、姫野さやか(Dr)による女性3人組のインスト・バンドで、昨年4月にはエイドリアン・シャーウッドの来日公演に客演出演したこともあるバンドです。 …とは言え、このバンドは日本よりも、むしろ海外で評価されているバンドのために、この日の公演に来られている、ほとんどの方はアルバムすら聴いたことがないんじゃないかと思います。 彼女達はテクノのミニマリズムをギター、ベース、ドラムで体現した、いわゆる"人力テクノ"で、そのうえで不穏なサイケデリックサウンドも加わる、国内はもちろん、海外でもいないタイプの稀有なサウンド嗜好のバンドだと思います。 当然、彼女達のサウンドを知らない大半の会場のファンの反応は戸惑いに近いものがあったように思います。 ギターの高田の前に置かれた卓上には様々なエフェクター、姫野のドラム・セットはたった一つのスネアにシンバル、バスドラという、セッティングされた楽器を見ただけでも明らかに通常のロック・バンドではないというのが分かります。 不穏でダークな彼女達のミニマルなビートは、私のように好きな方はこのビートにいつまでも身を委ねたいと思うのですが、知らない方には、このミニマルなビートに退屈を感じていたかもしれません。 ひたすら、ミニマルなリズムを機械のように刻む、在川のベースと姫野のドラムに、卓上から不穏なサイケデリックサウンドで独創的な世界観を構築する三人のサウンドは決して、万人向けとは言い難いものですが、そんな彼女達の演奏をPRIMAL SCREAMのような、UKロックの至宝とも言えるバンドのオープニングで体験出来るのは、実に貴重な体験だったと思います。 来日アーティストに日本人のバンドがオープニング・アクトが登場する機会は多いですが、こうした日本の独創的なバンドが体験出来る機会を今後とも増やして欲しいと私は思っています(もっとも、これに関しては賛否両論あると思いますが…)。 個人的には大好きなにせんねんもんだいのライヴで、次の真打ちのPRIMAL SCREAMのライヴがさらに楽しみになったのは確かです。

 

 

 

PRIMAL SCREAM東京公演のオープニング・アクトに決定! - 吉良吉影の奇妙な音楽日記

 

 

 そして、30分ほどの最高のオープニング・アクト(笑)のライヴが終わって、待ちに待った"真打ち"のPRIMAL SCREAMのライヴが、『Screamadelica』収録の「Movin'on Up」でスタートしました。 おそらく、PRIMAL SCREAMは『Screamadelica』から入ったファンも多いかと思いますが、ロック史に残る名盤のオープニング曲から始まったライヴは、会場のファンのテンションを最初からトップ・ギアにしてくれたのではないかと思います(笑) 今回のメンバーは、ボビー・ギレスピー(Vo)、アンドリュー・イネス(G)、マーティン・ダフィー(Key)、シモーヌ・バトラー(B)、ダリン・ムーニー(Dr)の5人編成。 長年、マニ(現THE STONE ROSES)がベーシストとして、ボビーと並ぶバンドの顔として大きな存在感を放っていましたが、マニ脱退後、デビー・グッキ(MY BLOODY VALENTINE)がサポート・ベーシストを一時期、務めた後に加入した女性ベーシストのシモーヌが今回の来日公演でも華を添えたと思います。 もちろん、バンドの核はボビーですが、赤い上下のスーツ姿で登場したボビーはロッカーというよりはモデル並のスタイルの良さで、その容姿端麗ぶりに女性ファンからも黄色い声援を受けていました(笑) とても50過ぎとは思えない体型のボビーもアクティブに動き回り、現UKロック界屈指のヴォーカリストとしての存在感を我々に充分過ぎるくらい、見せつけてくれたと思います。 楽曲のセット・リストは下(↓)に掲載しましたが、新作『Chaosmosis』の楽曲はもちろんやっていますが、『Screamadelica』以降のオールド・ファン好みの選曲になっていると思います。 PRIMAL SCREAMというバンドはアルバムによってサウンドが大きく変化する印象が強いバンドですが、この来日公演に限らず、ライヴでのPRIMAL SCREAMは実にオーソドックスなロックンロールが楽曲のベースになっていることに気付かされます。 アルバムこそ、ダブやインダストリアル、ポスト・パンク、ガレージ、サイケデリック等、様々なサウンドが飛び出しますが、そのルーツにはソウルやロックンロール等、アーシーなアメリカ南部のロックンロールが根差しているバンドなんだと実感しました。 ボビー自身がアルバム制作後にその出来にガッカリした『Give Out But Don't Give Up』からの選曲にしても、ファンに人気の高い「Rocks」を始め、「Jailbird」やエモーショナルなヴォーカルで今回の来日公演でも山場を作った「(I'm Gonna) Cry Myself Blind」がライヴだと映えるのも、PRIMAL SCREAMの本質が"Same Old Rock 'n' Roll Band"に他ならないからだと思います。 やはり、先鋭的なアルバムのはずの『XTRMNTR』の楽曲(「Accelerator」、「Shoot Speed/KillLight」、「Swastika Eyes」)は少々、オーソドックスなロックンロール・ソングとは掛け離れていますが、そんな『XTRMNTR』の楽曲ですら、ロックンロール・ソングとして響くところにPRIMAL SCREAM本来のライヴでの本質を感じることが出来ます。 今年リリースされた『Chaosmosis』もバンド史上、最もポップなアルバムと言われていますが、元を正せば、バンドの本質のロックンロールが根差していることに気付かされます。 新旧織り交ぜた選曲にはなっていますが、やはり『Screamadelica』の楽曲が軸になっていた気が私にはします。 オープニングの「Movin'on Up」、トリップ感の高い「Higher than the Sun」、そして鉄板ソングの「Loaded」、そして最後の締めに最も相応しい「Come Together」とライヴの中核を成す曲が今回の来日公演でも山場を作ってくれました。 最後の「Come Together」の大合唱は圧巻でしたが、日本のファンとPRIMAL SCREAMの相思相愛の関係も来日公演をより良いものにしていると思います。 以前は毎年、フジロックにも出演していて、日本の音楽ファンとの密接な関係にあったのがPRIMAL SCREAM。 何度も来日しながらもマンネリズムに陥らず、最高のパフォーマンスを披露出来るのは、彼等が"最高のロックンロール・バンド"であるからだと改めて、実感しました。

 公演終了後は、一緒にライヴ参戦していただいたOhkiさんとHaradaさんと帰りに音楽の話しをして帰宅しましたが、お友達と一緒にライヴを体験出来たこともライヴをより楽しいものにさせてくれたと思います。 最近、私もお友達の皆さんのおかげでライヴを楽しむことが出来て、私も幸せに感じています。 私と一緒でご迷惑でなければ、(笑)またお友達の皆さんとライヴを一緒に楽しみたいと思います。 とりあえず、この後、私はHURRICANE #1、KULA SHAKER、CATFISH AND THE BOTTLEMENの来日公演を楽しむ予定でございます。

 

 

 


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 Thursday 20th October

PRIMAL SCREAM Live in Japan Setlists

(@STUDIO COAST, Shinkiba, Tokyo)

 

1. Movin'on Up

2. Where the Light Gets in

3. Jailbird

4. Accelerator

5. (Feelig Like A) Demon Again

6. Shoot Speed/Kill Light

7. (I'm Gonna) Cry Myself Blind

8. Higher than the Sun

9. Trippin on Your Love

10. 100% or Nothing

11. Swastika Eyes

12. Loaded

13. Country Girl

14. Rocks

 

【Encore】

15. Come Together

 

 

 

 

 

 


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(祝) 来日公演決定!!




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『Melodic Rainbows』

HURRICANE #1

 

 

 

 11月にジャパン・ツアーも決定しているHURRICANE #1が今月12日にリリースしたばかりの新作で、昨年12月にリリースした再結成後第1弾となったアルバム『Find What You Love and Let Kill You』以来のアルバムで、アンディ・ベル在籍時から数えて通算4作目のアルバムになります。 本作のプロデューサーとして、U2THE ROLLING STONES、デヴィッド・ボウイ等の大物アーティストを手掛けてきたダニー・セイバーが起用されていますが、元々、ダニー自身がHURRICANE #1の大ファンで、ダニー自らが申し出ての参加だそうです。 そして、本作は昨年に亡くなったMOTORHEADレミーに捧げるアルバムにもなっています。 あまり知られていない事実ですが、アレックス・ロウとレミーは1997年のHURRICANE #1のツアーで知り合って以来の親友で、HURRICANE #1解散後も度々、二人は交友していたようです。 癌を克服したことで生きる喜びを見出だし、HURRICANE #1を再結成して新しい人生の船出をしたアレックスにとって、親友のレミーの死は相当に辛いものがあったはずですが、本作はそんな親友への最高のレクイエム作品になっています。 

 現在のアレックス・ロウ以外のHURRICANE #1のメンバーは、カール・マリアーニ(G)、クリス・ムリン(B)、クリス・キャンベル(Dr)で、前作リリース時と違って、このメンバーでツアーもこなし、アレックスを中心にバンドのアンサンブルも最高の状態であることが本作を聴いて実感することと思います。 もちろん、来月のジャパン・ツアーもこの盤石のメンバーでの公演となることは間違いありません。 アルバム発売前に、YouTube等で聴けた先行シングル「I Wanna Kill You」のギターのディストーションサウンドの効いたヘヴィーなナンバーに驚かれた方も多いと思いますが、本作自体も全体的にディストーションサウンドの効いたナンバーが実に多いのですが、これはおそらく、亡きレミーを多分に意識してのことだと思います。 しかし、全体的にヘヴィーなサウンドの強さ印象が印象に残るばかりでなく、大半の曲の骨格にアンセミックなメロディーが脈打っていて、楽曲の質はHURRICANE #1の過去作の引けを取らないどころか、もしかしたら過去最高の楽曲の質と言っても良いかもしれません。 もちろん、HURRICANE #1のことですから、ヘヴィー一辺倒なだけであるはずもなく、「I Want You」(M-5)、「What It Means to Me」(M-7)、「It Feels So Right」(M-11)と言ったアコースティック・ナンバー、「Melodic Rainbows」(M-10)のようなサイケデリックサウンド、ダンサブルかつリズミックなナンバーの「LOL」(M-9)と、アルバム全体として見ると曲調そのものは実に多彩です。 バンドのインタビューによると、実はこのアルバムはたった二日間でレコーディングされたそうなのですが、バンドの演奏のライヴ感を生かした作品とも言えると思います。 前作はアレックスのソング・ライティングの妙が味わえるオーガニックな作品で、コレはコレでもちろん文句のつけようがない作品でしたが、やはりアレックスのソロ作品的に思える部分も感じさせられたのも否めませんでした。 しかし、本作はもちろんアレックスの書いたアンセミックな楽曲を基調にしながらも、バンドとしてのアンサンブルを感じさせるものになっていて、このアルバムにアンディ・ベル云々を持ち出すのは愚の骨頂と言っても良いでしょう。 本作はレミーに捧げるアルバムにはなっていますが、レミーを死を悲しむだけのもの悲しいアルバムにせずに、前向きなロック・アルバムになっているところも好感が持てるところですが、交友のあったアレックスらしいレミーへの弔いになっているとも思います。 もう、このアルバムを聴けば、"アンディ・ベル不在の"とかわざわざ言う輩もいないと思いますし、アレックスこそがHURRICANE #1だと実感することでしょう。 来月の来日公演もアンディ・ベル在籍時の名曲を聴けると思いますが、前作も含めての新生HURRICANE #1の楽曲も楽しみなところだと思います。

 私自身もジャパン・ツアーの5日の東京公演に参加しますが、今から凄い楽しみです。 来日公演に行けない方、行かない方もこのアルバムを機会あったら是非とも聴いていただきたいです。 本作は少なくとも、UKロックファンにとっては今年聴いていなくてはいけないアルバムの一枚だと断言しちゃいます(笑)

 

 


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(↓) HURRICANE #1 JAPAN TOUR特設サイト

http://info13725.wixsite.com/hurricane1

 

 

 


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ポール・ドレイパーとの共同プロデュース作品




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『Confessions of a Romance Novelist』

THE ANCHORESS

 

 

 英ウェールズ・グリニース出身のマルチ・インストゥルメンタリスト兼女性シンガー・ソングライターのキャサリン・アン・デイヴィスのプロジェクト、THE ANCHORESSが今年1月にリリースしたデビュー・アルバムです。 このアルバムはキャサリン自身と元MANSUNのポール・ドレイパーによる共同プロデュース作品で、今年6月に発売したポール・ドレイパーのEP『EP ONE』をリリースした「Kscope Records」からリリースされたアルバムでもあります。 ポールは2014年にTHE ANCHORESSが発表したシングル「What Goes Around」もプロデュースしましたが、キャサリンもポールの『EP ONE』に参加する等、ポールとキャサリンはお互いの音楽活動で相思相愛の関係と言えると思います。

 キャサリンは2009年にはロンドン・フィルハーモニック・オーケストラに在籍していた経験もありますが、THE ANCHORESS名義で活動する前はCatherin A.D.名義で音楽活動しており、2011年にはミニ・アルバム『Communion』、2012年にはカヴァー・アルバム『Reprise : The Covers Collection』をリリースしており、『Communion』はNMEにも"控え目だが美しいミニ・アルバム"と高く評価もされました。 また2015年にはSIMPLE MINDSのツアー・メンバーとしてギターとキーボードを担当して、マルチ・プレイヤーとしても高く評価されています。 THE ANCHORESSは今年9月に英国のプログレ専門雑誌『Prog Magazine』が主催する「Progressive Music Awards」で"Limelight(新人賞)"も授賞していますが、これはポール・ドレイパーのEPもリリースしたプログレ専門レーベル「Kscope Records」から、THE ANCHORESSのアルバムがリリースされている故の授賞と言えると思います。(THE ANCHORESSの音楽はプログレに位置付けされてはいないですし、デビュー・アルバムのサウンドももちろん、曲構成そのものもプログレッシヴではありません)。

 本作の参加メンバーは、ベン・シンク(G)、ベン・スタック(B)、ジョン・バーネット(Dr)に加え、ストリングス奏者のジリアン・ウッド、メアリー・ケリー、ヴィッキー・ファルコナー・プリチャード、そして共同プロデューサーでもあるポール・ドレイパーが「You and Only You」でゲスト・ヴォーカルで参加している他にギタリストとしても参加しています。 ベン・スタックとジョン・バーネットはポール・ドレイパーがリリースしたEP『EP ONE』にも参加していますが、THE ANCHORESSのツアー・メンバーでもあるのかもしれません。 このアルバムで一番、印象に残るナンバーはポール・ドレイパーがゲスト・ヴォーカルで参加している「You and Only You」になると思いますが、楽曲は全体的にポップで聴きやすく、時折、ストリングスの音色がアルバム全体に美しい世界観を紡ぎあげるのに貢献していて、「What Goes Around」や「Popular」のようにピアノで軽快に歌い上げるポップな楽曲もあり、ポールのMANSUNの音源で例えると「Stripper Vicar」が収録されている『Japan Only EP』のようにシンプルかつポップで尚且つ、美しい世界観を紡ぎ上げているアルバムだと思います。 キャサリンの上品で可憐なヴォーカルと気品漂うバックのサウンドも見事にマッチしていて無理に実験性を取り入れなかったのも好感が持てると思います。 なお、このアルバムにはアルバム収録曲5曲のアコースティック・ヴァージョンを収めた"CD TWO"も封入されているのですが、曲の骨格とも言えるシンプルなアコースティック・ヴァージョンもまた、バンド演奏とは違ったキャサリンの可憐なヴォーカルの魅力を味わえる出来になっていると思います。 ちなみに本作の後には元SUEDEのギタリスト、バーナード・バトラーをプロデューサーに迎えての2ndアルバムの制作もあるそうなので、コチラも楽しみなものになりそうです。

 

 

 

 

 

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期待の2作目はマイクD(BEASTIE BOYS)プロデュース作品!




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『Take Control』

SLAVES

 

 

 昨年の『SUMMER SONIC 2015』に引き続き、今年の『SUMMER SONIC 2016』にも出演した英ロイヤル・タンブリッジ・ウェルズ出身のローリー・ヴィンセント(G/B/Vo)とアイザックホルマン(Dr/Vo)によるパンク・デュオ、SLAVESが先月30日にリリースしたばかりのアルバムです。 昨年リリースしたデビュー・アルバム『Are You Satisfied?』は全英アルバム・チャート8位のヒットを記録しましたが、2枚目のスタジオ・アルバムにあたる本作のプロデューサーに元BEASTIE BOYSのマイクDを起用しました。 もっともマイクD自身も、BEASTIE BOYS時代の1986年のデビュー・アルバム『Licensed to Ill』で全米で大ブレイクした頃は悪ガキ・ラップ・グループとして鳴らしただけに、SLAVESとマイクDという組み合わせは最高に期待出来るコラボと言えると思います。

 その注目の組み合わせによる本作ですが、基本的に前作のデビュー・アルバムの路線を踏襲したローリー・ヴィンセントのダーティーサウンドのギターが印象に残る、ヘヴィーなパンク・アルバムになっています。マイクDがプロデュースを担当することで大胆なサウンドの変化も予想出来ただけに、ほとんど前作と変わらないサウンドはSLAVESらしいと言えばSLAVESらしいのですが、むしろ拍子抜けに思えなくもないです。 しかし元々、マイクDのBEASTIE BOYSが『Licensed to Ill』リリース前は元々、ハードコア・パンク・バンドで、『Licensed to Ill』リリース前の1982年には『Polly Wog Stew』を、1995年には『Aglio E Olio』と言ったハードコア・パンク・アルバムを制作していることを考慮すると、マイクDがSLAVESの新作に、前作同様のダーティーなパンク・サウンドを求めたのは至極当然で、中途半端に新しいサウンドを取り入れるのは愚の骨頂と判断したのかもしれません。 そのプロデューサーのマイクDが参加している楽曲も当然あり、3曲目の「Consume Or Be Consused (feat. Mike D)」に参加していて、ほぼ両者の組み合わせから予想出来るラップ・メタル・ナンバーです。 前作収録の「Cheer Up London」もSLAVES流のラップ・メタル・ナンバーと言えなくもないですが、本作の「Consume Or Be Consused」は両者の組み合わせの妙を最高に生かした秀逸なナンバーと言えると思います。 いっそのこと、本作全体をラップ・メタル・ナンバーで埋めてもそれはそれで面白かったことでしょう(笑)

 そして、マイクDの他にももう一人、注目のゲストが参加していているのですが、それは「Steer Clear」に参加しているバクスター・デューリーで、あのイアン・デューリーの息子でもあります。 オールド・ロック・ファンの方にはイアン・デューリーが1977年に発表したアルバム『New Boots and Panties!!』のジャケットに写っていた子供だと説明すれば、一番、分かりやすいでしょうか?  バクスター・デューリーは名門レーベル「Rough Trade Records」と契約し、2001年に「Oscar Brown EP」でデビュー。 2002年にデビュー・アルバム『Len Parrot's Memorial Lift』以降、2016年現在まで4枚のスタジオ・アルバムをリリースしているシンガーです。 バクスターが参加している「Steer Clear」はニューウェーヴ・フレイバーなナンバーでSLAVESにしては異色のナンバーですが、バクスターのヴォーカルを生かした好ナンバーだと思います。 若さで突っ走るナンバーが圧倒的に多いSLAVESにとって、今後の新機軸になるかどうかは分かりませんが、マイクD参加曲の「Consume Or Be Confused」とは対称的な魅力を持った、こうした楽曲も次作以降、増えてくる予感もありそうな気がします。

 

 本作は、ほとんど前作と変わらない路線のパンク・アルバムではありますが、カナダのMETZが1stも2ndもヘヴィーなサウンドのアルバムをリリースしてもいずれも傑作だったのと同様に、このSLAVESの2ndアルバムもデビュー・アルバムに引けを取らない傑作アルバムだと思います。 若い現在の彼等が変に小手先の幅広いサウンド志向のアルバムを制作するより、ダーティーで最高のアルバムを制作する方がよっぽど誠実だと言えると思います。 RAMONESだって、ボン・スコット在籍時のAC/DCだって、基本的なサウンドは常に変わらなかったですが、最高にカッコいい曲を書くことで何枚ものアルバムをリリースしてきたわけですから、最高のロックンロール・バンドに小手先だけの新しいサウンドは不要なんだと思います。 もちろん、SLAVESも永遠にカッコいいロックンロール・バンドを目指してもらいたいと、心の底から私は思っています。

 

 

 


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