ポール・ドレイパーとの共同プロデュース作品
『Confessions of a Romance Novelist』
THE ANCHORESS
英ウェールズ・グリニース出身のマルチ・インストゥルメンタリスト兼女性シンガー・ソングライターのキャサリン・アン・デイヴィスのプロジェクト、THE ANCHORESSが今年1月にリリースしたデビュー・アルバムです。 このアルバムはキャサリン自身と元MANSUNのポール・ドレイパーによる共同プロデュース作品で、今年6月に発売したポール・ドレイパーのEP『EP ONE』をリリースした「Kscope Records」からリリースされたアルバムでもあります。 ポールは2014年にTHE ANCHORESSが発表したシングル「What Goes Around」もプロデュースしましたが、キャサリンもポールの『EP ONE』に参加する等、ポールとキャサリンはお互いの音楽活動で相思相愛の関係と言えると思います。
キャサリンは2009年にはロンドン・フィルハーモニック・オーケストラに在籍していた経験もありますが、THE ANCHORESS名義で活動する前はCatherin A.D.名義で音楽活動しており、2011年にはミニ・アルバム『Communion』、2012年にはカヴァー・アルバム『Reprise : The Covers Collection』をリリースしており、『Communion』はNMEにも"控え目だが美しいミニ・アルバム"と高く評価もされました。 また2015年にはSIMPLE MINDSのツアー・メンバーとしてギターとキーボードを担当して、マルチ・プレイヤーとしても高く評価されています。 THE ANCHORESSは今年9月に英国のプログレ専門雑誌『Prog Magazine』が主催する「Progressive Music Awards」で"Limelight(新人賞)"も授賞していますが、これはポール・ドレイパーのEPもリリースしたプログレ専門レーベル「Kscope Records」から、THE ANCHORESSのアルバムがリリースされている故の授賞と言えると思います。(THE ANCHORESSの音楽はプログレに位置付けされてはいないですし、デビュー・アルバムのサウンドももちろん、曲構成そのものもプログレッシヴではありません)。
本作の参加メンバーは、ベン・シンク(G)、ベン・スタック(B)、ジョン・バーネット(Dr)に加え、ストリングス奏者のジリアン・ウッド、メアリー・ケリー、ヴィッキー・ファルコナー・プリチャード、そして共同プロデューサーでもあるポール・ドレイパーが「You and Only You」でゲスト・ヴォーカルで参加している他にギタリストとしても参加しています。 ベン・スタックとジョン・バーネットはポール・ドレイパーがリリースしたEP『EP ONE』にも参加していますが、THE ANCHORESSのツアー・メンバーでもあるのかもしれません。 このアルバムで一番、印象に残るナンバーはポール・ドレイパーがゲスト・ヴォーカルで参加している「You and Only You」になると思いますが、楽曲は全体的にポップで聴きやすく、時折、ストリングスの音色がアルバム全体に美しい世界観を紡ぎあげるのに貢献していて、「What Goes Around」や「Popular」のようにピアノで軽快に歌い上げるポップな楽曲もあり、ポールのMANSUNの音源で例えると「Stripper Vicar」が収録されている『Japan Only EP』のようにシンプルかつポップで尚且つ、美しい世界観を紡ぎ上げているアルバムだと思います。 キャサリンの上品で可憐なヴォーカルと気品漂うバックのサウンドも見事にマッチしていて無理に実験性を取り入れなかったのも好感が持てると思います。 なお、このアルバムにはアルバム収録曲5曲のアコースティック・ヴァージョンを収めた"CD TWO"も封入されているのですが、曲の骨格とも言えるシンプルなアコースティック・ヴァージョンもまた、バンド演奏とは違ったキャサリンの可憐なヴォーカルの魅力を味わえる出来になっていると思います。 ちなみに本作の後には元SUEDEのギタリスト、バーナード・バトラーをプロデューサーに迎えての2ndアルバムの制作もあるそうなので、コチラも楽しみなものになりそうです。