読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

エクスタシーと悲しみが同時に来るような、めちゃくちゃ美しいアルバム



f:id:killer_yoshikage:20160331191901j:image
『Chaosmosis』







 2013年発表の『More Ligjt』以来、今月発売されたばかりの3年ぶり、通算11作目のPRIMAL SCREAMの新作です。
 PRIMAL SCREAMというバンドは、アルバム毎にその音楽性を変化させて、次のアルバムでは全く違ったサウンドのアルバムを制作していることも珍しくないバンドですが、本作はバンド史上、最もポップなサウンドのアルバムかもしれません。
 アルバム発売前に、YouTubeでスカイ・フェレイラが参加しているMV「Where the Light Gets In」が公開されていたので、ご覧になられた方も多いかと思いますが、この曲のMVで概ね、アルバムのポップなサウンドが予想出来たのではないかと思います。
 このアルバムでは、米ロサンゼルスのインディー・バンド、HAIMの3姉妹も「Trippin' on Your Love」と「100 or Nothing」の2曲でコーラスを担当していますが、特に「Trippin' on Your Love」での3姉妹の黒人シンガーのようなソウルフルなコーラスは圧巻で、アルバムのトップを飾るに相応しいインパクトのある楽曲に仕上がっています。
 全体的にポップなアルバムに仕上がっているとは言え、アルバム毎に全く違うサウンドをやる事を辞さないバンドゆえ、ガレージ風ロックンロール・ソングやインダストリアルに近いダーク・エレクトロ、チェロを挿入した荘厳なバラード、80's ニューウェーヴまで相変わらず多彩な音楽性を盛り込んでいるところは、PRIMAL SCREAMらしいところではあります。
 しかし、このアルバムの素晴らしいところはただポップであるだけでも、多彩な音楽性を盛り込んだ事でもなく、あくまで美しさとアート性にこだわって制作されたところにあるのではないかと思います。
 ボビー・ギレスピーがアルバム発売前のインタビューで「めちゃくちゃ美しいポップ・アルバムを作りたいとも思ったんだ。エクスタシーと悲しさが同時に来るような、そういう二面性が欲しかった。」と語っていましたし、また「僕達はシリアスなアーティストだからね。素晴らしいアートを作りたいって本気で考えている。それが僕達の原動力になっているんだ。」とバンドを長く続けるのかについて語ったこともあります。
 もちろん、PRIMAL SCREAMというバンドは、ガレージやギター・ポップ、ロックンロール・バンドとしても一流には違いありませんが、1991年に名盤『Screamadelica』をリリース以降、バンドがアシッドやレイヴ、テクノ等でいわゆるアートを感じさせるサウンドでこそ、PRIMAL SCREAMの魅力が最大限に発揮されてきたと私は思っています。
 私自身、PRIMAL SCREAMのアルバムを全部買うほどのファンではなく、正直、シンプルなロックンロール・アルバムの時はレコ屋で試聴した時点でスルーしたことも少なくなかったのですが、今回はレコ屋で数曲、試聴した時点で買わなければいけないアルバムだと思いました。
 PRIMAL SCREAMのアルバムの好みに関してはファンの方、それぞれの好みが別れるところはあると思いますが、少なくとも私自身は、2010年代以降のPRIMAL SCREAMのアルバムでは文句なしにナンバー1。2000年発表の『XTRMNTR』以来の傑作と断言しても良いんじゃないかとすら思っています。
 レイヴ・アルバムではありますが、あくまで美しさやアート性にこだわったからこそ、歴史的名盤として評価されてきた『Screamadelica』も言い方を変えれば極上のポップ・アルバム。
 その『Screamadelica』が持っているアート観はサウンドこそ違えど、本作に継承されていると思いますし、『Screamadelica』に内包されているマジックを呼び起こした作品と言っても決して大袈裟ではない気がします。
 その時にやりたいサウンドを提示してきたPRIMAL SCREAMが、今回はサウンドだけでなくあくまでアートや美しさにこだわったところがこのアルバムの素晴らしいところなのだと思います。
 ボビーは、このアルバムのテーマについて過剰な現代の情報社会のカオスな状態の中から生まれてくる美しさだと述べていましたが、確かにうんざりするような情報が溢れるネット社会で、その情報に埋もれてしまうか?、それとも過剰な情報の中から美しいもの、アートなものを見出だすことが出来るか?によって現代社会における我々の生き方も違ってくるのかもしれません。




















f:id:killer_yoshikage:20160331191838j:image