吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

PRIMAL SCREAM東京公演のオープニング・アクトに決定!




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『#N/A』

にせんねんもんだい

 

 

 10月20日PRIMAL SCREAMの東京公演(新木場STUDIO COAST)のオープニング・アクトへの起用が決定した、東京出身の女性3人組のノイズ・バンド、にせんねんもんだいが昨年9月にリリースしたアルバムで、プロデューサーに"UKダブ界の奇才"と称されているエイドリアン・シャーウッドをプロデューサーに迎えた作品で、海外リリースもシャーウッドのレーベル「On-U」からのリリースになっています(ちなみに日本リリースは「Beat Records」から)。 この両者のコラボレーションについての詳細は後ほど触れることにして、先に彼女達の経歴について記しておきます。

 にせんねんもんだいは、1999年に結成された、高田正子(G)、在川百合(B)、姫野さやか(Dr)による3ピース・バンドで、2004年にデビューEP「それで想像する ねじ」のリリースを経て、その後のバンドの活動の拠点となる自主レーベル「美人レコード」を設立。 コンスタントに作品を発表しながら、2011年のBATTLESのオープニング・アクトとしてのUSツアーを含む、20回近くの欧米ツアーに国内外の音楽フェス出演で、日本国内よりも海外での人気・評価が高いバンドです。 彼女達の音楽性は初期こそノイジーオルタナ志向のバンドでしたが、ほぼクラウト・ロックに近いミニマルでダンサブルなサウンドに変貌していきました。 そのクラウト・ロック路線のサウンドは2009年の『Destination Tokyo』から始まり、2013年の『N』、そして『N』の続編にあたる『N'』で人力テクノと言っても差し支えないミニマル・ロックを完成させました。 蛇足ながら付け加えておくと、にせんねんもんだいを聴いたことない方はエイドリアン・シャーウッドがプロデュースしている本作よりも、『N』から先に聴くことを強くオススメします。 本作を紹介しておきながら別のアルバムをオススメするのも、我ながら気が引けるのですが(苦笑)、いきなり始めから本作を聴くより、『N』のミニマリズムを体感してから本作を聴く方がより本作も楽しめると思えるからです。 そして『N』のサウンドにこそ、にせんねんもんだいの魅力の本質が詰まってもいるからです。

 そして、にせんねんもんだいとエイドリアン・シャーウッドとの接点ですが、両者の出会いの起点は昨年4月18日に代官山UNITで行われた、エイドリアン・シャーウッドの来日公演になります。 この来日公演はエイドリアンのプロデュース・ワーク集『Sherwood at the Controls Volume 1 : 1979 - 1984』のリリース・イベントとして行われたもので、ステージ・セットににせんねんもんだい、ミキシング・デスクにエイドリアン・シャーウッドというスタイルでのライヴで、ライヴ・ダブ・ミックス等のパフォーマンスを披露したそうです。 この来日公演の前に行われたのが両者によるレコーディングで、4月14日と15日のたった2日間で「Red Bull Studios Tokyo」で行われたそうです。 在川いわく「レコーディングがスタートしているかどうかも分からない感じで…演奏をしていて気がついたらエイドリアンが録っていた感じですかね…」というコメント通り、彼女達に自由に演奏させておいて、その彼女達の演奏している自然なサウンドから完成型を導き出している感じのレコーディングになったようです。 そして、エイドリアンはレコーディング終盤に、にせんねんもんだいのメンバー達にこう伝えたそうです。 「ライヴにはライヴのマジックがある。 そしてレコーディングにはレコーディングのマジックがあるんだ。 大丈夫だ、これは良いアルバムになるよ!」

 こうしてレコーディングされた音源はエイドリアンのスタジオ「On-U Sound」で最終的に加工されて、マスタリングにラシャド・ベッカーを起用してアルバムは完成に至りました。 結果的に、わずか2日間で行われた両者のコラボレーションはライヴの雰囲気をそのまま生かした、彼女達が今まで作り上げたものとは全く違う、即興性のある作品に仕上がったのではないかと思います。 同じミニマルな楽曲には違いないのですが、ライヴ感のあるザラついたオルタナティヴなサウンドが不穏な感触を作り上げ、オルタナ・インダストリアルと言う呼び方が相応しいサウンドかもしれません。 『N』のように高揚感があってフロアで踊りたくなるような感じではなく、アヴァン・エレクトロニクス風な感触で、『N』を愛聴していた方は少々、戸惑いを覚える作品かもしれません。 それでも楽曲自体はライヴで真価が発揮されそうなものばかりなので、PRIMAL SCREAMの東京公演で観られる方は楽しみなことでしょう。 もっとも私もそのPRIMAL SCREAMの東京公演に参加するので、このバンドの生ライヴを凄く楽しみにしています。 ぜひ彼女達を知らない、PRIMAL SCREAMのファンの度肝を抜くようなパフォーマンスを見せてもらいたいものです。

 

 


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