コペンハーゲン・ロック・シーンを切り拓いたバンド
『Plowing into the Field of Love』
ICEAGE
前日、同じコペンハーゲンのバンド、COMMUNIONSのアルバムについて書いた際、度々、このICEAGEについて触れましたが、後続のCOMMUNIONSやLOWER等、日本でもコペンハーゲンのロック・シーンが(静かにではありますが)注目されるきっかけになったのは、この、ICEAGEによるところが大きいと思います。
2011年発表のデビュー・アルバム『New Brigade』、2012年発表の2ndアルバム『You're Nothing』の2枚のアルバムでは、パンク、ポスト・パンク、ハードコアなサウンドが基本になっていますが、ゴス・ロックに近い"闇の美学"とも言える世界観が、ICEAGEの持ち味になっていました。
本作でも基本的に、その"闇の美学"はベースにはなっていますが、ピアノやホーンを大胆に取り入れ、曲によってはカントリーのような曲調も飛び出す、新しい領域に踏み込んだ作品になっています。
元々、ヴォーカリストのエリアスのヴォーカル・スタイルは、ニック・ケイヴと比較されることが多いのですが(ちなみに本人自身はケイヴの影響に言及したことはないです。)、1stと2ndでのエリアスがBIRTHDAY PARTYでのケイヴだとするなら、本作でのエリアスはBAD SEEDSでのケイヴに例えることが出来るかもしれません。
以前、イギー・ポップがICEAGEを「いま唯一のパンク・バンド」だと絶賛したことがあったのですが、本作では彼等はパンクの枠に収まるだけでなく、新しい領域へ踏み出しています。
そもそも、コペンハーゲンのシーンは、ICEAGE以前にも、SEXDROME、GORILLA ANGREB、NUCLEAR DEATH TERROR等といった、パンク・バンドが活動してきたわけで、ICEAGEだけがコペンハーゲンのパンク・バンドではないのですが(笑)ICEAGEが、世界中のロック・ファン(と言うよりパンク・ファン)をコペンハーゲンのシーンに目を向けさせた功績はあまりに大きいと思います。
正直、このアルバムでも演奏はかなり下手くそなのですが(苦笑)、逆にその下手くそな演奏が生々しく、聴いているものの心に突き刺さって響いて、なおかつ、また繰り返し聴きたくなってしまう、不思議な魅力のあるアルバムです。
幅広い音楽性を披露することで、エリアスのヴォーカルの魅力も発揮されていますし、自分達の美学をしっかり持っているため、新しいサウンドのためにバンドの本質を見失うこともないのはさすがです。
ICEAGEは、あのピッチ・フォークにも認められているバンドではありますが、このバンドは決してインディー厨に認められて終わるようなバンドではないと思います。
2012年には日本の「SUMMER SONIC 2012」や単独公演も行っていて、もはや、コペンハーゲン・シーンのバンドという領域を超えたバンドですが、(COMMUNIONSのブログでも触れましたが)エリアスを始め、メンバーはコペンハーゲンに帰れば、他の掛け持ちバンドもやって、アクティブな音楽活動を行っています。
とにかく、ICEAGEの登場で、コペンハーゲンの有能なバンドが、これからも注目されるのは間違いないと思います。