吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

異形のトランスジェンダーの希望なき金字塔




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『Hopelessness』

ANOHNI

 

 

  Antony and the Johnsonsアントニー・ヘガティが、アノーニ(ANOHNI)という"女性アーティスト"として今年5月にリリースしたアルバムです。 アノーニは2003年にルー・リードのバック・ヴォーカルとして抜擢され、その歌声は"天使のようだ"と絶賛され、一躍、注目を浴びました。 ルー・リードのアルバムを始め、ブライアン・フェリーやルーファス・ウェインライト等、数多くのアーティストとコラボしてきましたが、私自身はビョークが2008年に発表した『Volta』に収録されている「The Dull Flame of Desire」でのデュエットで、アントニー・ヘガティ(当時)の人を包み込むような優しい歌声にすっかり惹かれてしまったのを覚えていますが、私のようにビョークのデュエットでアントニーを知った方も少なくないかもしれません。 2009年にリリースした3rdアルバム『The Crying Light』では、100歳を超えても舞台に立ち続けた世界的にも有名な日本の舞踏家、大野一雄氏の写真をアートワークに使用して、日本でも注目を集めるようになり、2010年には来日公演も実現しました。 そして、2010年には『Swanlights』をリリースし、約6年ぶりに名前だけでなく"性"も変えて本作をリリースしました。 ちなみにアノーニという名前は"彼女"自身がここ数年使い続けた名前だそうで、ジェンダーアイデンティティを他の人達とも共有したいという思いを2010年辺りから頻繁に考えるようになり、自分が男性の名前では生きていけないとまで思い詰めたそうで、今回の作品がAntony and the Johnsonsとは全く違うスタイルのエレクトニックな作品であることから、この機会に男性名であったアントニー・ヘガティという名前どころか"性"までも変え、サウンドと共に"生まれ変わった"のだと思います。 そして、この"生まれ変わった"アルバムのプロデュースを担当したのはアノーニ自身の他に、ハドソン・モホークとOneohtrix Point Never。 まず、Oneohtrix Point Neverことダニエル・パロティンは、エレクトロニック、アンビエント、ドローン系のフィールドで活躍するニューヨーク・ブルックリン出身のアーティストですが、アノーニが2010年に参加したアルバム『Returnal』は世界中の音楽メディアに高い評価を受けました。 一方、ハドソン・モホークはスコットランド出身のDJ、プロデューサーとしてエレクトロニック好きでまず知らない方はいないだろうという存在ですが、ハドソン・モホークの音楽が好きだったアノーニがハドソンに連絡をとったところ共演が実現し、ハドソン・モホークが昨年リリースしたアルバム『Lanturn』にアノーニがゲスト・ヴォーカリストとして参加。 『Lanturn』での両者の共演が本作の制作にそのままシフトしていったそうです。  もちろん、ハドソン・モホークとOneohtrix Point Neverとの共演から、本作がクラブ・ミュージックやエレクトロニカを前面に押し出したサウンドになることは予め、予想出来ることですが、むろん、アノーニが単なる享楽のクラブ・ミュージックなど作るわけもなく、本作で歌われている曲の歌詞は、世の不条理に対する怒りに満ちています。 アメリカの攻撃で家族を失ったアフガニスタン少女をモチーフにした「Drone Bomb Me」、オバマ大統領に対する落胆と失望を歌った「Obama」等、病めるアメリカを強く糾弾していて、BOMB SQUADのハンク・ショックリーが参加した、THE POP GROUPのアルバム『Honeymoon on Mars』と共通する部分があるかもしれません。 しかし、アノーニは怒りに満ちてはいてもマーク・スチュワートのように叫びまくることは全くせず、アントニー・ヘガティ名の時と全くと言っても良いくらい歌い方を変えずに"天使の歌声"のままでメッセージを発しています。 音楽だけを聴くととても気持ちの良いエレクトロニック・ミュージックなのに、実は痛烈なメッセージを残している。 シリアスなメッセージなのに聞き手を優しく包み込むようなアノーニのヴォーカルは"女性的"というよりは"母性的"に私は思えるのですが、アノーニのヴォーカル自体が性すら超越しているのかもしれません。 アメリカ大統領選挙が終わり、アノーニがおおいに失望感を感じたオバマからトランプに大統領は変わりましたが、アノーニはこの結果に何を感じるのか? しかしトランプにも幻滅して怒りのメッセージを発しても、アノーニの天使の歌声で我々、リスナーは少しは救われた気になるのでしょう。 Antony and the Johnsonsを聴く機会がなかった方は、比較的聴きやすい、このアルバムから聴くことをオススメします。 もうすぐ2016年も終わりますが本作も今年、音楽ファンが是非とも聴いておきたい一枚だとも思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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THE HORRORSとTRAVISのお気に入りのサイケデリック・バンド




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『Clear Shot』

TOY

 

 

 

  2010年に結成された、英ブライトン出身でロンドンを拠点に活動しているサイケデリック・バンド、TOYが10月にリリースしたアルバム。 アルバム・デビュー前からNMEの「今聴くべき100のバンド」に選出され、THE HORRORSのスパイダー・ウェッブも「昨年、登場した最もエキサイティングなバンド。 2012年のお気に入り」と絶賛し、THE HORRORSのオープニング・アクトとして起用。 また、2012年にリリースされたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムは、NMEでも10点中8点と高評価を得ましたが、私個人としても、TAME IMPALAが2012年にリリースした名盤『Lonerim』に匹敵するアルバムだと思っています。 またTRAVISも自身の楽曲「Moving」で「今日は高速道路で、TOYを聴かなきゃ」と歌っているほど、TOYを気に入っており、ミュージシャンからも熱い支持を受けています。 2013年には早くも2ndアルバム『Join the Dots.』をリリースして評価を更に高め、3rdにあたる本作は3年ぶりのスタジオ・アルバムとなります。 2015年9月にはバンドの紅一点だったキーボード・プレイヤーのアレハンドラ・ディアスが脱退しましたが、TOYのサポート・アクトも務めていた、元PROPER ORNAMENTSのマックス・オスカーノルドが新たに加入し、マックス加入後初のアルバムにもなります。 ロンドン北東部のウォールサムストーにあるギターのドミニク・オデアの簡易スタジオで本作のデモ制作を開始し、昨年10月にはノーサンプトンでデモが完成。 続く11月の後半からはストックポートにある(本作のプロデュースを務めた)デヴィッド・レンチのイヴ・スタジオで本格的な録音に入りました。 「人里離れた一軒家に素晴らしいヴィンテージ機材がある」最高の環境のスタジオで行われたレコーディングは、バンドの創作意欲をおおいに刺激し、録音した曲から"最高の10曲に厳選し、更には完璧なアレンジで仕上げたアルバムはデビュー・アルバム以上のインパクトを持った傑作アルバムを生み出しました。 デビュー・アルバムでは、THE HORRORSの『Primary Colours』期のシュゲイジング・サウンドが印象に残りましたが、このアルバムでは初期TOYの持ち味の一つでもあったシュゲイジング・サウンドはほとんど聴かれず、フォーキーなサウンドも取り入れたヴィンテージなサイケデリックサウンドが主体になっています。 どこかノスタルジックでメランコリックな楽曲の印象から、DEERHUNTERを思わせるかもしれません。 ちなみにプロデューサーを務めたデヴィッド・レンチは、FKA twigsやJamie XX、CARIBOU等を手掛けてもいるので、このアルバムがハイファイなサウンドになる可能性としてあったわけですが、前述の新進気鋭のアーティスト達を手掛けたレンチは敢えて、TOYのサウンドをヴィンテージに仕上げながらも決して、古いサイケデリック・バンドのサウンドの焼き直しに終わらない、完璧なアルバムを完成させることに成功しました。 TOY本来の魅力でもあるメランコリックな楽曲を音を重ね過ぎずに、見事なアレンジで仕上げ、尚且つ、アルバム全体が流れるような構成に仕上げる手腕は見事としか言いようがありません。 全体の構成の見事さもさることながら、一曲一曲の楽曲の質の高さもずば抜けて高く、その点では、やたら音を重ねたがる凡百のサイケデリック・バンドがTOYに敵わない点だと思います。 TAME IMPALAはヴィンテージなサイケデリックサウンドからエレクトリック・ポップへと変化を遂げ、ANIMAL COLLECTIVEはよりシンプルなサウンドへと変貌していきましたが、更にヴィンテージなサウンドへと深化したTOYの新作は、今年最高のマスター・ピースだと私は思います。 このアルバムをきちんと聴かれた方は「高速道路じゃなくてもTOYを聴かなきゃ」と思われたと思います(笑) 英MOJO誌が「なんたる跳躍力、殿堂入りへの大きな一歩」とバンドの底知れぬ創作意欲を絶賛していましたが、このアルバムを何回か聴くに連れ、TOYが本当に殿堂入りする可能性を否定出来ない自分がいました。 いずれにしろ、このアルバムは今年最も聴かないと後悔する一枚に間違いありません。

 

 

 

 

 

 

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MARCHING CHURCH Live in Japan(12/6)




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 先月(輸入盤は10月)に新作『Telling It Like It is』をリリースしたばかりのデンマークコペンハーゲン出身のポスト・パンク・バンド、ICEAGEのフロントマン、エリアス・ベンダー・ロネンフェルトのソロ・プロジェクト、MARCHING CHURCHの今回の来日公演は、エリアスにとっては昨年のICEAGEとしての来日公演以来、約1年ぶりの日本公演でもあります。 昨年のICEAGEの来日公演はアストロホールから大入り袋が出るほどの大盛況となりましたが、今回のMARCHING CHURCHの来日公演は同日にThe xxの豊洲PITでの来日公演が被り、少々、その煽りは食ったと思いますが、むしろ本当の意味でエリアスを愛するファンが集った公演になったと思います。 ICEAGEの来日公演は大入り袋が出る満員御礼の公演になりましたが、話題性のみで来たファンも決して少なくなかっただけに、私も正直辟易した部分もありましたが、話題性のみのファンがThe xxの公演に流れてくれたのは個人的に良かった気がします。 ちなみにDamien Dubrovnikのローク・ラーベクも4月のLUST FOR YOUTHの公演以来の来日で、オープニング・アクトのDamien Dubrovnikも含めて、今回の公演は現在のデンマークのインディー音楽シーンを語るうえで重要な意味を持つものだったと言えると思います。 12月の来日公演は、The xx、MARCHING CHURCHだけでなく、SWANS、ALABAMA SHAKESと興味深いアーティストが目白押しなのですが、このMARCHING CHURCHだけは絶対に見逃したくないライヴでした。 今回は友達とは一緒ではなく一人で行ったものなのでシンプルなライヴ・レポートにしたいと思います。

 

 21時30分に登場したDamien Dubrovnikは、4月のLUST FOR YOUTH来日公演でキーボード・プレイヤーも務めていたローク・ラーベクとChristian Stadsgaardのノイズ・ユニットですが、二人共、MARCHING CHURCH、COMMUNIONS、LOWER等、現在のデンマークコペンハーゲン・インディー音楽シーンの重要なバンドのアルバムをリリースしているレーベル「Posh Isolation」を運営している主宰者でもあります。 もっとも「Posh Isolation」は前述のバンド連のアルバムもリリースしていますが、本来、このレーベルはノイズ系バンド主体のレーベルで、Damien Dubrovnikは二人が三度の飯より好きな(笑)ノイズ・ミュージックを自らプレイするために結成したようなユニットと言えるかもしれません。 ちなみにロークはエリアスとのユニット、Varでも来日公演を行ったことがあり、ロークにとって今回のDamien Dubrovnikの公演は日本では3バンド目になるのですが、音楽活動も精力的なレーベル・オーナーです。 ステージ上には机上に置かれたノイズを発する機材とアンプのみで、基本的にクリスチャンが機材を操り、ロークがヴォーカルを取るスタイルですが、ロークのヴォーカルは"歌う"のではなく、自らもノイズを発する機材になっていると言う方が正しいかもしれません。 機材から発せられる暴虐的なノイズ・サウンドに、自らの発した咆哮的な叫びも歪ませて、怒り狂うように叫びまくるロークのヴォーカルは、4月のLUST FOR YOUTHでクールにキーボードを弾いていたロークを観た方は、とても同一人物とは思えないことでしょう。 アンプから流れ出るノイズも充分に過激なのですが、まるで鬼神でも憑依したかのようなロークの咆哮は会場のオーディエンスを圧倒していました。 着ていた白いYシャツもはだけ、観客の中に何度も雪崩込んだかと思うと、終いには観客フロアの中心にマイク・スタンドを持ち込んで咆哮する等、音楽以上にロークのパフォーマンスが印象に残ったライヴでした。 元々、ロークはデンマークの伝説的なパンク・バンド、SEXDROMEのメンバーだけに自らのパフォーマーとしての血がDamien Dubrovnikで発揮されるのでしょう。 とにかく、私が最近、観たバンドでここまで狂気を感じさせるライヴは覚えがないですが、オープニング・アクトとしてはあまりにもインパクトのあるライヴでした。 しかし、超イケメンのロークの逝ってしまっている形相を間近で見ると本当に怖いですけどね(苦笑)。 やはり、三度の飯よりノイズが好きな二人の真骨頂を嫌というほど実感しましたし(笑)滅多に経験出来ないパフォーマンスを味わえたライヴだったと思います。

 

 

 ちなみにコチラのリンク(↓)は、ロークがメンバーでもあるLUST FOR YOUTHの今年4月の来日公演のブログです。

 

 LUST FOR YOUTH Live in Japan (4/26) - 吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

 

 

 

 

 

 

 

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 そして、思わぬオープニング・アクトの狂気のパフォーマンス終了後の (苦笑)、真打ちのMARCHING CHURCHですが、エリアスにとってはMARCHING CHURCHとしては初のライヴではあるものの、VarとしてもICEAGEとしても来日公演を行っていて、Damien Dubrovnikのローク同様、このアストロホールは勝手知ったる場所。 もはやエリアスは近年、デンマークのバンドの来日公演の聖地と化しているアストロホール最大のカリスマと言っても良いかもしれません。 今回の(エリアス以外の)MARCHING CHURCHの日本公演のメンバーは、Kristian Emdal(B)、Anton Rothstein(Dr)、Bo Hoyer Hansen(G)、Johan S. Weith(G)に加え、サックス・プレイヤーのAlex Hungtaiという6人編成。 エリアスが標榜する自らのソウル・ミュージックを追求するために、エリアスが昨年からスタートしたプロジェクトですが、精力的にツアーもこなし、エリアスが本腰を入れてバンドとして力を入れているだけに、そのライヴ・パフォーマンスに期待したファンも多かったに違いありません。 ほぼ開始時間の22時35分頃にバンドが登場したと思いますが、エリアスはMARCHING CHURCHではお馴染みの黒の生地に星の絵柄の入ったベストを着て登場し、サックス・プレイヤーも入ったバンドはやはりICEAGEとはかなり志向の違うものだとライヴが始まる前から感じさせられました。 ライヴ一曲目は新作のオープニング・ナンバーでもある「Let It Come Down」からスタート。 静寂ながらドラマチックで情感的なヴォーカルがアルバムでも印象に残るナンバーですが、生で聴くエリアスのヴォーカルもエモーショナルで心に響く、地味ながらライヴのスタートには申し分のない曲です。 そして次の曲は「Inner City Pigeon」で、Kristianのベース・ラインが印象に残るMARCHING CHURCH流ソウル・ナンバーで、新作の曲でのスタートながら、この2曲で観客の心は見事に掴んだ気がします。 元々、LOWERのメンバーだったKristianとAntonがバンド解散のためにMARCHING CHURCHの活動に専念出来ることでツアーも精力的にこなすことが可能になり、そのためにMARCHING CHURCHが"プロジェクト"ではなく"バンド"として見事に機能し、エリアスの理想とするソウル・ミュージックをライヴでも表現出来るようになったことをこの公演でも感じることが出来ました。 もっともICEAGEでもカントリー等を取り入れた新機軸を打ち出してはいたのですが、元がポスト・パンク・バンドでもあるICEAGEは、その新機軸をライヴでは、どこか消化不良気味に表現出来切れないところがあったのですが、このバンドはそういった意味でエリアスが理想とする音楽を追求するうえで結成されたバンドだったとも言えると思います。 この日、The xxの来日公演を蹴って、MARCHING CHURCHを観られた方は相当にエリアス愛が強い方だと思いますが、そんなファンの期待に見事に応えてくれたと思います。 どこかナルシズムの入った(笑)エリアスの仕種も実に絵になりますし、Alexのサックスの音色もバンドのサウンドの重要な要にもなっていました。 また、Antonのドラムも楽曲によってはダイナミズムをもたらしていて、LOWER時代の長所を充分に活かしていたと思います。 楽曲の順番等は私も覚えていませんが、今回のライヴでやった曲のほとんどが新作からの曲で、もしかしたら全曲が新作の曲だったかもしれません。 ほとんどの曲を新作からの曲にしたのはおそらく、新作が本格的なバンドとして制作されたものですし、真の意味でのバンドとしてのMARCHING CHURCHをライヴでプレイするなら新作の曲だけの方が機能するということなのかもしれません。 MARCHING CHURCHの新作も実際に私の中で今年の年間ベスト・アルバムのベスト3に入るくらいの出来だったと思いますが、このアルバムで表現した見事なサウンドは、この公演でも見事に反映されたと思います。 最初、Damien Dubrovnikの過激なパフォーマンスを観た時、MARCHING CHURCHは喰われてしまうのでは?と余計な心配をしてしまいましたが、そんな心配は無用でした。 とりあえず、この後、OASISレミーの映画は見に行く予定ですが、私が観に行く今年のライヴはコレで終了です。 今年も昨年に劣らず、多くの素晴らしいライヴを体験し、そして素敵な仲間と素敵な時間を過ごせたことを心から嬉しく思います。 また来年も懲りずに少しでも素晴らしい音楽生活が送れたらと思います。

 

 

 

 

 (※)この日の公演のセットリストを改めて、追記しました(12月9日追記)

 

December 6th Tuesday 2016

MARCHING CHURCH Live in Japan Setlist

(@ASTRO HALL TOKYO)

 

1. Let It Come Down

2. Florida Breeze

3. Inner City Pigeon

4. Heart of Life

5. Information

6. Lion's Den

7. Achilles Heel

8. Up a Hill

9. Calenture

10. 2016

 

 

 

 

 


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(祝) 来日公演決定!




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 『Telling It Like It is』

NARCHING CHURCH

 

 

 

 

 12月6日に来日公演(原宿アストロ・ホール)も決定している、デンマークコペンハーゲンのポスト・パンク・バンド、ICEAGEのフロントマン、エリアス・ベンダー・ロネンフェルトのプロジェクト、MARCHING CHURCHが11月30日(輸入盤は10月28日発売)にリリースした2ndアルバムで、昨年3月にリリースしたデビュー・アルバム『This World  is Not Enough』以来のアルバムになります。 昨年、12月にICEAGEが原宿アストロ・ホールで来日公演を行い、ソールドアウトを記録する大盛況になりましたが、今回のMARCHING CHURCHとしての来日公演は初となるだけに、楽しみにしている方も少なくないはずです。 私自身が書いたデビュー・アルバムのブログにも書きましたが、そもそも、エリアスがMARCHING CHURCHを結成したのは、彼自身が世界一好きなバーと語っている歌舞伎町の「ナインチンゲール」で聴いた、David Moranhaがきっかけになっているのですが、MARCHING CHURCHでエリアスが目指したのは「ジェームス・ブラウンや『Young American』期のデヴィッド・ボウイ、サム・クックのようなソウル・グループのリーダーになる」ことで、3rdアルバム『Plowing Into the Field of Love』で大きな変化を遂げたICEAGEのサウンドから更に拡張した音楽性をデビュー・アルバムで披露してくれました。 今回のアルバムに参加したメンバーも、デビュー・アルバム同様に、元LOWERのKristian Emdal(B)とAnton Rothstein(Dr)、HAND OF DUSTのBo Hoyer Hansen(G)を中心に客演を迎える形を取っており、デビュー・アルバムではエリアスのプロジェクト的な部分が否定出来ませんでしたが、今回はバンドとして立派に機能しているのを感じるはずです。 本作リリース前にEP『Coming Down : Sessions in April』をリリースしましたが、その内容が1曲目の「Coming Down」が7分超なのに加え、2曲目の「Coming Down Pt. 2」が21分超のフリー・ジャズ的インプロヴィゼーションが展開されている内容で、これからのMARCHING CHURCHやエリアスの音楽活動の大きな指針になることも予想されましたが、このアルバムではそう言ったフリーキーな方向には安易に走らず、デビュー・アルバムの音楽性をより熟成させ深化させたサウンドになっていると思います。 ICEAGEの3rdアルバムから顕著な隙間のあるサウンドから垣間見える、エリアスとバンドの演奏との呼吸も今まで以上に濃密で、精度も上がり、正に"漆黒のソウル"と言っても良いくらいにバンドの世界観を体現出来ていると思います。 初期Nick Cave & The Bad Seedsのような隙間のある少ない音数で鳴らされるゴシックな感性に、スコット・ウォーカーばりのロマンチシズムとナルシズム、そして、The Velvet Underground & Nicoの退廃感。 そう…、David Moranhaを初めて聴いた、あの歌舞伎町のイメージがこのアルバムのサウンドなのかもしれません。 夜が深まりゆく猥雑な都会で鳴らされる漆黒のソウル・ミュージック。 エリアスが表現しようとしている世界観は、歌詞にも危険な匂いがぷんぷん漂い、本当に夜しか似合わない闇の美学を追求したアルバムだと思います。 音を分厚くしてノイジーサウンドを作ることに終始しがちな昨今のインディー・バンドとは一線を画して、敢えて、隙間の多いサウンドで自分の美学を構築出来るエリアスの才能には改めて、感嘆させられます。 奇しくも今年は常に比較されがちなニック・ケイヴ(Nick Cave & The Bad Seeds)が『Skeleton Tree』をリリースして、世界中の音楽メディアに高い評価を受けましたが、このアルバムもNick Cave & The Bad Seedsほどの高評価をしろとまでは言わないですが、もう少し高い評価を受けても良い気がします。 いずれにしろ、MARCHING CHURCHの来日公演に参加する私としては、夜の原宿アストロ・ホールでこのアルバムの楽曲を聴けるのを何よりの楽しみにしたいと思います。

 

 

 (※)ちなみに下記のリンク(↓)が、MARCHING CHURCHのデビュー・アルバム『This World is Not Enough』のブログです(このブログを書いている時点でICEAGEの来日公演が決定しています)。

 

 

(祝)ICEAGE来日決定♪ - 吉良吉影の奇妙な音楽日記

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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KULA SHAKER Live in Japan (11/21)




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 今年の『FUJI ROCK FESTIVAL 2016』にも出演したKULA SHAKERですが、約5ヶ月ぶりになる、それほど間を空けない期間での単独来日公演。 しかし今回の単独来日公演が今年のフジ・ロックと違う点は、今回のジャパン・ツアーが1996年にリリースされたデビュー・アルバム『K』20周年のアニヴァーサリーとなる『K』全曲再現ライヴ。 フェスでは比較的、新作からの曲を交えてのいわゆるアーティストのグレイテスト・ヒッツ的な選曲になる傾向が多くなりがちですが、今回の『K』全曲再現ライヴはフジロックを観に行けなかったファンばかりでなく、今年のフジロックKULA SHAKERを観られた方も楽しみにされた来日公演じゃなかったかと思います。 私が今年経験した、いわゆる"全曲再現ライヴ"は1月のTELEVISIONの『Marquee Moon全曲』再現ライヴと、8月の『SUMMER SONIC EXTRA』で実現した、SUEDEの『Night Thoughts』&『Coming Up』全曲再現ライヴになりますが、いずれの全曲再現ライヴもかなり素晴らしい内容で心に残っただけに、私もこの『K』再現ライヴにも大きな期待をしていましたが見事にその期待に応えてくれたと思います。

 今回の来日公演の会場のZEPP DiverCity Tokyoは私自身、昨年のポール・ウェラーの来日公演で来た会場なので、少し遅めに家を出たのですが、5時にならないうちにお台場近辺は真っ暗。 少々、小雨がパラつく生憎の天気でしたが、幸い、それほど寒くもなく、この時期にしては気温の高い今年の冬にはある意味、涼しくてちょうど良いぐらいだったかもしれません。 DiverCityの入口に入ると、HURRICANE #1の来日公演でも話させていただいた新潟から来た男性の方と再びお会いすることが出来ました。 私もFacebookの友達のOhkiさんと一緒にライヴを観る予定なので長くは話せませんでしたが、一緒にHURRICANE #1の最前列に陣取った仲間(笑)と再び旧交を深めることが出来て、私も嬉しかったです。 …で、そのOhkiさんを待っている間に入場時間が来たので私は一足先に入場して、ドリンクを一気飲みして、会場内に入ってステージ右側のほぼ最前列に近い位置に陣取ることが出来ました。 Ohkiさんは19時開演ギリギリで私と無事、合流することが出来、ホっと一安心しました。 ZEPP TOKYOも近辺ある、このお台場の青海駅(ゆりかもめ線)近辺は慣れないと非常に分かりずらい場所にあるので彼女に限らず迷う方の多い地ではあるのですが、とにかく無事にご一緒出来て良かったです。

 そして、ほぼ定刻通りに登場したのがオープニング・アクトのOGRE YOU ASSHOLE。 OGRE YOU ASSHOLEは2001年に結成された長野県出身の4ピース・バンドで、2009年に発表したシングル「ピンホール」が、アニメ『蒼天航路』のエンディング・テーマとして使われていたこともあり、2010年にはモントリオール出身のWOLF PARADEと北米ツアーを廻った経験もあるバンドです。 アルバムやシングルの楽曲を聴くと、比較的、エッジの効いたギターが印象に残るバンドだと思いますが、このライヴではアルバム以上にサイケデリックな轟音ギターが印象に残る、ライヴで鍛え上げてきたバンドというのが伺え、KULA SHAKERのオープニング・アクトとしては充分なインパクトのあるバンドだったと思います。 ギタリストの馬渕のヘヴィーなサイケデリック・ギターに、ベーシストの清水のグルーヴィーなベースは、バンドの大きな肝になり、この二人がバンドにダイナミズムをもたらしていると思います。 ただ個人的にヴォーカリストの出戸のJ-POP風のナヨナヨしたようなヴォーカルが今ひとつ好きになれませんが、バンドのダイナミズムと出戸のヴォーカルのアンバランスなところが、このバンドの個性になっているのかもしれません。 30分という短い時間ではありますが、ライヴでしか体験出来ない彼等なりの持ち味は充分、発揮出来たと思いますし、それなりに会場のファンに自分達をアピール出来たんじゃないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 


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 そして、オープニング・アクトのOGRE YOU ASSHOLEのライヴが終わり、真打ちのKULA SHAKERの登場を待つばかりとなりましたが、比較的、"『K』20周年"という割にはステージ・セットはかなりシンプルなものになっていました。 一応、ステージ・セットの右サイドと左サイドにアルバム『K』を象徴するデザインの垂れ幕(左サイドは"K"とシンプルに描かれたもので、右サイドはインドの民族衣装を纏った男女)が下がった来て観客は盛り上がりましたが、あくまで大仰なステージ・セットに頼らないバンドとしての気概を感じられたと思います。 そして、メンバーが登場すると大歓声が普通に沸きましたが、"『K』全曲再現ライヴ"にも関わらず、最初に演奏されたのはTHE BEATLESのアルバム『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』のタイトル曲のカヴァーという、かなり意表をついた選曲で、呆気に取られたファンも少なくなかったかもしれません。 この選曲が『K』が『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』のオマージュとしての宣言なのか?。 それとも単純にメンバーが好きでプレーしたかっただけなのか私には分かりませんが、このジャパン・ツアーの前にクリスピアンが「ほぼ『K』をそのまま演奏する」ようなことを言っておきながらの、意表をついた選曲はこの全曲再現ライヴは、我々が思っている"全曲再現ライヴ"とは"何か"が違うと思わせる、そんなオープニング・ナンバーでした。 そして、2曲目に最新作『K 2.0』からの「Let Love You」を挟み、ようやく3曲目から『K』のオープニングを飾る「Hey Dude」に入って、この曲から真の意味での『K』全曲再現ライヴの始まりと言っても良いぐらいかもしれません。 次の曲は「Knight on the Town」ですが、この全曲再現ライヴは単純にアルバムの曲順に演奏するのではなく、『K』以外の曲も交えて、『K』の曲順もライヴの流れに合わせて組み替え、『K』というアルバムをライヴというシチュエーションの元に再構築したものと言っても良いかもしれません。 私が一番、このライヴで驚いたのはバンドの高い演奏技術かもしれません。 KULA SHAKERはいわゆる"再結成バンド"ではありますが、現在のバンドは2004年に再結成してから既に12年が経ち、1999年の解散前よりも長くバンドを継続しているわけで、演奏技術もバンド・アンサンブルも解散前よりも現在の方が高いのかもしれません。 KULA SHAKERの音楽はインド音楽云々で語られることも少なくないバンドですが、基本的に60~70年代のサイケデリック・ロックがベースになっていて、最新機材に頼らない、バンドの技量そのもので勝負せざるを得ないバンドなのですが、この『K』のサウンドがバンドの技量に裏打ちされたものだと改めて実感しました。 それから、クリスピアンとアロンザが年齢を重ねてもほとんど老け込むことがなく、スタイリッシュなイメージを維持していることも驚愕に値するかもしれません。 おそらく、見た目にしても演奏技術にしても日々、精進を重ねてストイックにバンド活動を行っているのかもしれません。 そして、ライヴで『K』の世界観に浸ってみて改めて感じたことは、バンドのサウンドもオーソドックスなサイケデリックサウンドをベースにしながらも、言葉が分からなくても口ずさみたくなるようなビッグ・サウンドが何気に脈打っているところも魅力の一つだと言うことです。 「Hey Dude」の"Catch the Sun!"とか「Grateful When You Dead」の"Ba ba ba~」とか単純に英語が分からなくても口ずさめるのに加えて、「Govinda」でインドの言葉で合唱が起こるのなんてKULA SHAKERぐらいなもんですよね?(笑) アンコールでは日本のファンに人気の高い「Hush」はおおいに盛り上がったと思いますが、「Govinda」の大合唱は会場にマジカルな雰囲気を作り出していたと思います。 この曲もインド風味ですが、もの悲しくもメランコリックで限りなく美しい「TATTVA」も個人的には印象に残りましたし、「Into the Deep」はメロディックなUKギター・ロックの伝統に根付いていることに気付かされました。 そんな『K』の世界観もあっという間に終わった気もしたほど充実していましたが、この日展開された『K』は再構築されて、現代版の『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に昇華されていたと言ったら大袈裟でしょうかね?(笑) まぁ~、それはともかく、KULA SHAKERでしか味わえないサイケデリック・ワールドを体験出来たのは間違いないと思います。

 帰りは一緒にいたOhkiさんと帰りましたが、しばらく私もKULA SHAKERのシンプルにも関わらず、摩訶不思議な中毒性のある楽曲が頭の中をリフレインしていました。 このライヴのおかげで『K』の魅力を改めて再認識しましたし、良いライヴをやった云々を超えた"何か"を私に残してくれた気がします。 もっとも、その"何か"は私にも分からないのですが… (苦笑)。 てな訳で今回もライヴを楽しみましたが、次回のライヴは来月6日のMARCHING CHURCHになります!

 

 

(※)この日の公演のセット・リストを新たに追記しておきます(11月23日 追記)

 

 

 

 

Monday 21st November (2016)

KULA SHAKER Live in Japan Setlist

(@ZEPP DiverCity Tokyo)

 

 

1. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band

2. Let Love B (with You)

3. Hey Dude

4. Knight on the Town

5. Temle of Everlasting Light

6.  Smart Dogs

7. Magic Theatre

8. Into the,Deep

9. Shower Your Love

10. Dance in Your Shadow

11. Gokula

12. Sleeping Jiva

13. TATTVA

14. Greatful When You Dead/Jerry was There

15. 303

16. Start All Over

17. Hollow Man

18.  Raagy One (Waiting for Tomorrow)

 

【Encore】

19. Infinite Sun

20. 33 Crows

21. Hush

22. Great Hosannah

23. Govinda

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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HURRICANE #1 Live in Japan (11/5)




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 この日のHURRICANE #1の来日公演は実に19年ぶりになりますが、もちろんRIDE再結成のためにアンディ・ベルの参加はなし…。 しかし、この日の公演は単純に19年ぶりのHURRICANE #1の勇姿を観られるという単純なものではなく、真の意味での正統派UKロック・ファンが集う、実に充実した公演になったと思います。 このHURRICANE #1のジャパン・ツアーを実現してくれたのは、オープニング・アクトも務めてくれた、THE MAYFLOWERSで、彼等のおかげでこの日観に来たファンは至福の時を過ごすことが出来ました。 私自身、泊まりの仕事が終わったばかりで、17時開場という早い時間は少しキツい気もしましたが (苦笑)、それでも、最後まで最高に楽しい時間を過ごすことが出来ました。 私も開場時間まで新潟から来たという男性の方ともお話して、その方がHURRICANE #1のメンバーとにサインを貰ったり、記念撮影したりと筋金入りの音楽好きで、こういう場でUKロックの話をしたり出来たのも、これから始まる公演をより楽しいものにしてくれたと思います。 ちなみに会場のチェルシー・ホテルは新宿MARSと同規模ほどの本当に小さなライヴ・ハウスで、アンディ・ベル在籍時の19年前の来日公演だったら、こんな間近でHURRICANE #1を観られるなんて有り得なかったでしょう。 17時も過ぎて、会場内に入場してドリンクを買ってから、いつも通り、図々しく(笑)最前列を陣取って、準備万端。 18時過ぎのTHE MAYFLOWERSの登場前には、OASISファンのためのクラブ・イベントを開催している「OASIS NIGHT」の方がDJブースでUKロックを中心に曲を流してくれて、会場内がUKロックの聖地と化しました。 THE MAYFLOWERS、HURRICANE #1のライヴを、この日に観に来たファンのほとんどは根っからのUKロック・ファンのはずで、単なるHURRICANE #1の19年ぶりの来日公演だけに止まらない、正にUKロック・ファンのための最高の空間になっていたと思います。 OASIS、LA'S、PULPBLURSUEDE等、かかっている曲はUKロック・ファンのツボを突いたものばかりでしたけどね(笑)

 

 18時過ぎに登場したのは、今回のHURRICANE #1の来日公演を実現してくれた、京都出身のバンドで、HURRICANE #1の新作『Melodic Rainbows』の発売元の「Rooster Records」のオーナーでもあるTHE MAYFLOWERS。 THE MAYFLOWERSは『メロディー+ハーモニー+ロックンロール』を信条とするブリティッシュ・ロックのスピリッツを継承した、里山理(Vo/B)、田口勇介(G)、木村耕治(Dr)の三人によるトリオ・バンドです。 5度のUKツアーを始め、海外公演も精力的に行っていて、アンディ・パートリッジ(XTC)を始め、海外のミュージシャンや音楽マニアにも評価の高いバンドです。 HURRICANE #1の招聘だけでなく、DJタイムに「OASIS NIGHT」のDJを起用したように深い"UKロック愛"を感じさせる、"日本のUKロック・バンド"と称しても良いバンドだと思います。 肝心のライヴでは、UK直系の情緒的なメロディーの良さだけに走ることなく、ダイナミズムを感じさせる、ライヴで鍛え上げたロックンロール・バンドで、特別にUKロック好き云々関係なく、充分にライヴ・バンドとしての実力を感じさせてくれるバンドです。 私も個人的にMETZのオープニング・アクトを務めたCRYPT CITY、PRIMAL SCREAMのオープニング・アクトを務めたにせんねんもんだいと、海外バンドの来日公演で素晴らしい日本のバンドを体験することが出来ましたが、THE MAYFLOWERSはそんな素晴らしい日本のバンドの一つだと思います。 UKロックへの深い愛情を感じながらも、単なる英国ロックの模倣に終始せず、オーソドックスながらも骨太なロックンロールを追求しているバンドのように、私は思えました。 アンコールでは、HURRICANE #1のカルロ・マリアーニを交えてのTHIN LIZZYのカヴァー「Boys are Back in Town」も披露しましたが、こうしたカヴァーにも骨太なロックンロール・バンドとしての実力を計り知ることが出来ました。 THE MAYFLOWERSのライヴは通常の来日公演の短い時間でのライヴではなく、アンコールも交えた1時間ほど(?)のライヴだったと思いましたが、HURRICANE #1登場前に充分に素晴らしい時間を過ごすことが出来たと思います。 今回の来日公演の主催者で多忙ながらも素晴らしいライヴ・パフォーマンスを見せてくれた三人には本当に脱帽ですが、これからのバンドの活躍に期待したいと心から思わせるライヴでした。

 

 

 

 

 

 

www.mayflowers.jp

 

 

 

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 そして、THE MAYFLOWERSのライヴが終了後、ステージ前に黒い幕が降りて、いよいよHURRICANE #1の登場。 むろん、今回のHURRICANE #1の来日公演が"アンディ・ベル抜き"なのを、今更述べるのは愚の骨頂ですが (苦笑),、この会場のほとんどがアレックス・ロウの勇姿を一目観たいというファンだったに違いありません。 アンディ脱退→バンド解散、そして、アレックスは癌の闘病生活と苦悩の日々を送って来ましたが、前作『Find What You Love and Let Kill You』、そして最新作『Melodic Rainbows』と再結成後、素晴らしい傑作アルバムをリリースしたことで来日公演の期待も更に高まったに違いありません。 黒い幕が上がり、ライヴはデビュー・アルバム『Hurricane #1』収録曲の「Chain Reaction」からスタート。 注目のアレックスは意外に小柄でしたが、ガッチリとして体型に精悍な掘りの深い健康的な顔立ちは癌と闘病していたとは思えない生気が漲っていて、UKロック屈指のヴォーカリストとしての貫禄を感じさせてくれます。 カルロ・マリアーニ(G)、クリス・ムリン(B)、クリス・キャンベル(Dr)の"新生HURRICANE #1"のメンバーも、このバンドがアンディ・ベルが結成したバンドであることを忘れさせてくれるほど、アレックスとの一体感を感じさせてくれました。 楽曲の方も「I Wanna Kill You」、「Most Anything」という最新作『Melodic Rainbows』からの楽曲を披露した後、デビュー・アルバムからの「Just Another Illusion」をプレイして、最新作と旧作の曲を上手く織り交ぜた選曲になっていた気がします。 形的にはアンディの後釜的な扱いを受けかねないカルロは、再結成後の曲はもちろん、アンディ在籍時の曲も難無く弾き熟して、アンディ不在を感じさせないのはカルロのプレイによるところが大きいと感じさせてくれました。 もちろん、UKロック界屈指のアレックスのヴォーカルの素晴らしさはライヴでも健在で、終始、笑顔で彼自身もライヴを楽しんでいたと思います。 何と言っても、HURRICANE #1の魅力はファンが思わず合唱したくなるアンセミックなナンバーがあるところだと思いますが、「Step Into My World」、「Only the Strongest Will Survive」と言ったアンディ在籍時の名曲はもちろん、「Think of the Sunshine」という再結成後のアンセム・ソングでも合唱が起こり、HURRICANE #1本来の魅力でもある王道UKロック・バンドとしての真髄を発揮したライヴだったと思います。 また最新作からのアコースティック・ナンバー「I  Want You」のようなじっくり聴かせるナンバーも、アレックスのヴォーカリストとしての実力の高さを改めて、感じさせてくれました。 下にこの日のセット・リスト(↓)を掲載しましたが、アルバム別に見ていくとデビュー・アルバムと最新作からの選曲が多いですが、アンセミックなナンバーを中心に置いた、HURRICANE #1のファンが聴きたい曲を抑えたものになっていたと思います。 チェルシー・ホテルという本当に小さな会場でバンドとファンが至近距離で一体になったライヴに、会場のファンもメンバーも至福の時を感じたに違いありません。 私も最前列に陣取っているのでアレックスともライヴ中に握手しましたが、彼の手が意外に小さかったことも(どうでも良いことですが)書いておきます(笑) HURRICANE #1のアンセミック・ソングを腹一杯、堪能出来て素晴らしいライヴでしたが、私はライヴの最後にドラマーのクリス・キャンベルからセット・リスト表を頂いてしまいました。 何回もライヴ参戦してセット・リスト表はおろか、ピックやドラムのスティックさえ貰えたことがない私が、クリス・キャンベルが私に手渡しでセット・リスト表をくれたんですよ…。 もちろん、下に書いたセット・リストはクリスから貰ったものの丸写しですが、クリス、本当にどうもありがとう! しかし、このライヴの楽しみはセット・リストを貰っただけで終了ではありません。

 ライヴ終了後は、HURRICANE #1とTHE MAYFLOWERSのメンバーがステージに上がり、ステージからファンを記念撮影しましたが、この撮影写真はHURRICANE #1のFacebookに掲載されています(ちなみに恥ずかしながら、その写真に私も写っています)。 それから、記念撮影の後は大貫憲章さんがDJブースに登場し、HURRICANE #1のサイン会も同時に開催されました。 サイン会が始まる前、物販のところで私がウロついていると、THE MAYFLOWERSの里山さんが私に「吉良さんですよね?」と声をかけていただきました。 里山さんが私を知っているのには驚きました。 私自身、そういえば「Rooster Records」のFacebookにコメントしたこともありましたし、いいね!を年中つけていましたが、私みたいな一音楽ファンに過ぎない者を覚えていただいた、里山さんの人柄には深く感動しました。 私自身、UKロック・ファンほど良心的な音楽ファンはいないと思っていますが、バンドマンでもあり、レーベル・オーナーでもある多忙な中で私みたいな、所詮、音楽ファンを大事にする姿勢には頭が下がる思いです。 そして、その後は先程、クリス・キャンベルに貰ったセット・リスト表を持ってサイン会に参加してサインまで貰っちゃいましたが、メンバー全員、本当にナイスガイで、もう、ここまで楽しい思いしちゃって良いんだろうかと思っちゃいますよね? 最後の帰り際、出口にいた、THE MAYFLOWERSの田口さんとも話して、THE MAYFLOWERSのライヴにも感動したことを伝え、また機会があったら、THE MAYFLOWERSのライヴも再び観たいと最後に笑顔で握手して、数多くの楽しかった思い出を噛み締めて会場を後にしました。 HURRICANE #1のメンバー、THE MAYFLOWERSのメンバーの皆さんには、私の一生の思い出に残る楽しい思いをさせていただいて、本当に深く感謝しています。 両バンドのメンバーとまた、お会い出来る日がまた来ることを心から祈っています。

 

 

 

 

 

 

HURRICANE #1 Live in Japan Setlist 

Saturday 5th November (2016)

(@CHELSEA HOTEL Shibuya, Tokyo)

 

1. Chain Reaction

2. I Wanna Kill You

3. Most Anything

4. Just Another Illusion

5. Think of the Sunshine

6. What Do I Know

7. Where to Begin

8. Strange Meeting

9. Monday Afternoon

10. All I Want from You

11. What It Means to Me

12. Round in Circles

13. Liz Don't Cry

14. I Want You

15. Step Into My World

16. Only the Strongest Will Survive

 

【Encore】

17. Mother Superior

18. Rain

 

 

 

 


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『Y』以来、37年ぶりのデニス・ボーヴェルとのタッグ作品




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『Honeymoon on Mars』

THE POP GROUP

 

 

 

  先月28日にリリースされた、THE POP GROUPの新作で、昨年リリースされた再結成後初のアルバム『Citizen Zombie』以来、再結成後2作目の作品になります。 本作はデビュー・アルバム『Y』を手掛けたプロデューサー、デニス・ボーヴェルが37年ぶりにプロデュースすることが大きな話題を呼んでいますが、それ以上に3曲のプロデュースを手掛けている、BOMB SQUADのハンク・ショックリーの参加の方がむしろ驚きかもしれません。

 デニス・ボーヴェルの37年ぶりのプロデュース作品と言うことで話題は呼んでいるものの、この作品は決して『Y』の安易なアップデート盤にはなっていません。 このアルバムでデニスが再起用された経緯・意図は全く不明で、元々、デニスにプロデュースを依頼する予定ではなかったらしいのですが、このアルバムで深い意味を持つのは実はハンク・ショックリーの参加の方になると思います。 ハンク・ショックリーはPUBLIC ENEMYの初期3作品を初め、SLICK RICK、ICE CUBE等を手掛けてきたプロダクション・チーム、BOMB SQUADのメンバーで、様々なサンプリングを重ねあわせ、一歩間違えれば単なるノイズになりかねない組み合わせからパワフルな音楽を作り出す手腕で、ヒップホップ界に多大な影響を与えています。 ノイジーで重厚なサウンドを築き上げる、過激なサウンド・プロダクションはマーク・スチュワートの一連のソロ作品を手掛けてきたエイドリアン・シャーウッドの手法と非常に共通している部分があり、「白いアメリカに抑圧・差別・搾取されている黒人達に必要な情報を与えるのが我々の役目だと明言していたチャックD(PUBLIC ENEMY)と、世界中の真実を訴え続けてきたマークのポリシーも見事に合致しています。 このアルバムでバンドがやりたかったことは、THE POP GROUPモードのヒップホップだったのではないかと私は自分勝手に思っています。 私のあまりにも愚直過ぎる、この意見はTHE POP GROUPのファンに相当な反感は買いそうですが (苦笑)、このバンドを全く知らずに、このアルバムを聴いたら、純粋なヒップホップではないにしろ、かなり濃厚なヒップホップ・フレイヴァーを誰しもが感じるのではないでしょうか? ショックリーがプロデュースしている「War Inc.」のパーカッションの音やヴォイス・サンプル、「Burn Your Flag」の女性ヴォーカルの挿入の仕方、「City of Eyes」のイントロのSE等、ヒップホップ・ファンなら思わずニヤリとしてしまうようなサウンドも所々で聴くことが出来ます。 パンクという概念を壊し、先鋭的なサウンドを目指したのがポスト・パンクだとするなら、そのポスト・パンクという概念を壊したと言わないまでも、その枠組みを取り払ったのが本作と言えるかもしれません。 前作『Citizen Zombie』でポール・エプワースと作業することで、最新のテクノロジーにも精通してきて、より新しいサウンドを取り入れることに積極的になったのもあると思いますが、いつまでも過去の遺産的なサウンド固執しないのが、再結成後のTHE POP GROUPなのかもしれません。 『Citizen Zombie』の過去とは明らかに違うスタジオ・テクノロジーを駆使した作風に、往年のファンはおおいに戸惑いを覚えたと思いますが、本作はそれ以上に違和感を覚えたかもしれません。 デニス・ボーヴェルを起用したことで原点復帰を図るのではなく、更にテクノロジーを駆使した作品を仕上げるところが、過去に囚われず進化し続ける現在のTHE POP GROUPらしいところなのかもしれません。 しかし、『Y』の時から、ダブ、ファンク、フリー・ジャズ等、雑多な音楽を取り入れて異種配合したサウンドが彼等の持ち味だったことを考えれば、今回のヒップホップ・フレイヴァー濃厚な本作も決して、彼等らしくない作品なわけではありません。 1980年に解散後に各メンバーは各々のバンドで常に先鋭的なサウンドを追求し続けてきたわけですが、再結成後も常に新しいサウンドを追求する姿勢は、過去のサウンドと大きく変容しても変わらないのだと思います。 じゃあ、37年ぶりにデニス・ボーヴェルと再び組む意味は?と問われても、少なくとも私には分かりません。 ただ、2016年という時代にある音楽とテクノロジーを取り入れて、デニスとバンドが制作すれば必然的にこのサウンドの『Y』になる…なんだか、そんな気もしないでもないです…。

 

 

 

 

 

 

 


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