吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

(祝) THE LAST SHADOW PUPPETS来日♪



f:id:killer_yoshikage:20160229173526j:image
『Rascalize』








 4月1日に新作『Everything You've Come to Expect』リリース、そして4月27日には来日公演も決定している、THE LAST SHADOW PUPPETSのマイルズ・ケインがかつて在籍していたバンド、THE RASCALSが2008年にリリースしたデビュー・アルバムにして唯一のアルバムです。
 THE LAST SHADOW PUPPETSが2008年にリリースしたデビュー・アルバム『The Age of Understatement』の、スコット・ウォーカーに影響を受けたと思われる古典的なポップ・サウンドは、実はマイルズ・ケインの音楽嗜好によるところが大きいのですが、THE RASCALS以前にマイルズがやっていたバンド、THE LITTLE FLAMES時代から親交のあった、ARCTIC MONKEYSのアレックス・ターナーとの関係性を語るうえで、THE LITTLE FLAMES時代からのマイルズ・ケインの活動を抜きにして、THE LAST SHADOW PUPPETSを語ることは出来ません。
 THE RASCALSの前身バンド、THE LITTLE FLAMESが英マージーサイド州で結成されたのは2004年。後にTHE RASCALSを結成することになるマイルズ・ケイン(G)、ジョー・エドワーズ(B)、グレッグ・ミグホール(Dr)の3人に加え、女性ヴォーカリストエヴァ・ピーターソンにマット・グレゴリー(G)という5人組のバンドで、THE CORALやTHE ZUTONS、THE DEAD 60'Sのアルバムをリリースしていたリヴァプールのレーベル『Deltasonic』と契約していました。
 THE LITTLE FLAMESは後のTHE RASCALSにも通じるヘヴィーなギター・サウンドのバンドで、リヴァプールを含むマージーサイドのバンドとしては異才を放ったバンドでした。
 日本の『SUMMER SONIC 2005』にも出演し、EP『Goodbye Little Rose』をリリースする等、日本でもそれなりの注目は集めていましたが、2007年に制作中だったデビュー・アルバム『The Day is Not Today』が完成しないまま、呆気なくバンドは解散してしまいました。
 しかし、当時から親交のあった、ARCTIC MONKEYSTHE LITTLE FLAMESの「Put Your Dukes Up John」を「Leave Before the Lights Come On」のB面曲として収録する等、呆気なく終わってしまうには大変惜しいバンドでもあったのは事実。
 ARCTIC MONKEYSが2007年にリリースした2ndアルバム『Favourite Worst Nightnare』のヘヴィーなサウンドも、THE LITTLE FLAMESサウンドに影響された部分が大きく、初期のARCTIC MONKEYSにとっても重要なバンドだったわけです。
 「自分達に正直でありたい。」という理由で、マイルズ、ジョー、グレッグの3人がバンドを離れ、新たに2007年にTHE RASCALSを結成。
  マイルズが2008年にTHE LAST SHADOW PUPPETSの活動を始めるものの、THE RASCALSとしてデビュー・アルバム『Rascalize』をリリースして本格的にバンド活動を始動させました。
 映画007シリーズをモチーフにした「Bond Girl」という曲を書いているように、バンド以外の私生活では大の映画好きで気の合う3人なのですが、3人が共通して好きな音楽となるとスコット・ウォーカーとQUEENS OF THE STONE AGEだそうで、実に興味深い音楽嗜好と言えます。
 スコット・ウォーカーのサウンド指向は、マイルズがTHE LAST SHADOW PUPPETSで披露したサウンドに影響が顕著に出ていますが、QOTSAサウンド指向はTHE LITTLE FLAMES時代からも顕著に感じ取ることが出来ますが、そのQOTSAの影響を受けたヘヴィーなサウンド指向はTHE RASCALSサウンドの核にもなっています。
 THE LITTLE FLAMESではエヴァ・ピーターソンに任せていたヴォーカルを、THE RASCALSでは当然、マイルズが担当するわけですが、マイルズのヴォーカル・スタイルはアレックス・ターナーに酷似した速射砲スタイルのヴォーカル。
 身も蓋も無い言い方をすれば「ARCTIC MONKEYS meets QOTSA」とか「アレックス・ターナーをヴォーカルに据えたQOTSA」とかになると思いますが、エヴァがヴォーカルを取っていた時代のTHE LITTLE FLAMESがかなり、USオルタナ系寄りの印象が高かったのに対して、マイルズがヴォーカルを取るTHE RASCALSはUKバンドとしての体裁を保ったオルタナサウンドになった気がします。
 THE LAST SHADOW PUPPETSでの活動を考えると、後々にTHE RASCALSサウンドの幅の拡がりも大きく期待出来、そういった意味では今後の活動に大きな期待を抱かせるバンドでもありましたが、より幅広い音楽指向を追求したいマイルズには定型的なバンド活動は窮屈にしか感じないのか?、2009年には早々とTHE RASCALSを解散して、マイルズはソロとして活動するようになりました。
 公私共に仲の良かった3人のバンドではあったのですが、マイルズの飽くなき音楽への探究心がバンドをすんなり解散させてしまったのだと思います。
 サイケデリックサウンドを取り入れながらも、QOTSAのヘヴィーでグルーヴィーなサウンド、そして、そのヘヴィーなサウンドにマイルズの速射砲ヴォーカルが絡むスタイルは、2nd以降のARCTIC MONKEYSとも見事にリンクしていたサウンドで、盟友のアレックス・ターナーもマイルズ・ケインも底知れぬ音楽の引き出しを持っているところも大きな共通点と言えると思います。
 THE LITTLE FLAMESもTHE RASCALSも、THE LAST SHADOW PUPPETSのサウンドを気に入っている方は必聴ですが、ARCTIC MONKEYSのファンの方にも是非とも聴いていただきたいところです。
 所詮、THE LAST SHADOW PUPPETSをやっているアレックス・ターナーの相棒の作品としての認識しかない方の方が多いかもしれませんが、THE RASCALSTHE LITTLE FLAMESARCTIC MONKEYSと見事に連動してリンクしているバンドだと言うことを実感することと思います。
 ついでに言えば、THE RASCALS解散後のマイルズ・ケインのソロ活動の方がむしろ、THE LAST SHADOW PUPPETSのサウンドが好きな方にはオススメかもしれませんが…。





























 




 
f:id:killer_yoshikage:20160229173515j:image