通算31作目のスタジオ・アルバム
『SUB - LINGUAL TABLET』
THE FALL
1976年に結成された、ベテラン・ポスト・パンク・バンド、THE FALLの通算31作目。2013年の『Re - Mit』以来のスタジオ・アルバムになります。
ちなみに、彼等はライブ・アルバムも通算30作リリースしていて、その飽くことのない驚異的な創作意欲は驚愕に値します。
基本的に70年代後半から続けている、UKポスト・パンク勢の大半は、時代と共にサウンドを変化させて、70年代とは最終的に違う志向のサウンドに辿り着きましたが、THE FALLのサウンド志向の基本的な部分は初期から変わりません。
もちろん、時代毎に新しいサウンドを取り入れてはいますが、少なくとも本作のサウンドは、初期のTHE FALLの特色でもある、太っといベース・サウンド、キーボード・サウンドは、ポスト・パンク好きなら、THE FALLと直ぐに分かるサウンドです。
これほど基本的なサウンドのスタンスが初期から変わらないバンドも珍しいですが、だからといって古臭さを全く感じさせない、アグレッシブさを感じさせるのですから凄いです。
あまりに初期のシンプルなサウンドの本作の表現で"変わらない"という言い方が誤りであるとするなら、原点復帰という言葉が当てはまるのかもしれません。
敢えて、このシンプル過ぎるサウンドは彼等の"原点復帰"だけでなく、巷に溢れる、新旧含めた、ポスト・パンクそのものを問う意味での"原点復帰"なのかもしれません。
70年代後半にポスト・パンクが登場してからの、本来の意味でのポスト・パンクというものの、あるべきサウンドを身を持って提示したアルバム。それが本作かもしれません。
少なくとも今年リリースされた様々なポスト・パンク・アルバムの中では最もポスト・パンクらしいポスト・パンク・アルバムだと思います。
僕自身はさすがに全部のスタジオ・アルバムを聴いているわけじゃありませんが、THE FALLほど、期待を裏切らないスタジオ・アルバムを出せるバンドは、おそらくいないと思います。
もちろん、本作も例外なく期待を裏切ることなく、しかもポスト・パンク・バンドとしての誇りを感じさせる素晴らしい作品に仕上がったと思います。
70年代後半からのポスト・パンク愛好家の方も、たいていのベテラン・ポスト・パンク・バンドのサウンドの変化に戸惑いは覚えたと思いますが、このアルバムだけは"愛好家"の期待は裏切らないはずです。
熟成とは無縁のアグレッシブなポスト・パンク・サウンドには、ただただ驚愕して耳を傾けると、とても30作以上、アルバムを出しているようには思えませんけどね(笑)