吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

なぜ、現在の英国はグランジ(もしくはガレージ)なのか?


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『Undertow』
DRENGE












 英シェフィールド出身のオーエン&ロリーのラヴレス兄弟によるグランジ/ガレージ系バンド、DRENGEが今月発売(日本盤は来月発売予定)したばかりの2ndアルバム。
 2013年にリリースしたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムがNMEで、10点満点中8点という好評価を得ると、地元シェフィールドの偉大な先輩でもある、ARCTIC MONKEYSのツアーに抜擢されて、将来性を買われているバンドです。
 グランジやガレージの影響もあるとは思いますが、とにかくヴォーカルやギターにエコーをかけまくった酩酊感を感じさせるオルタナだと思います。
 デビュー・アルバムはYouTubeの音源ですら聴いていないので比較出来ませんが、やたら、かけまくりのエコーがポスト・ロック的感触として(無理に例えると、SAVAGES的感触)、不思議な心地好さを感じるのが、このアルバムの魅力なのかもしれません。
 僕も自分のブログで何回か取り上げている、英国から雨後の竹の子のように出て来る、ポスト・グランジやガレージ・バンドの一派と言えるのかもしれませんが、特に英国でポスト・グランジがムーブメントになっているのかと言えば、そんな事はないです。
 ただ、THE VACCINESが英国内で大成功を収めてから、この手のバンドが注目されるようになったのは間違いないと思います。
 注目のガレージ系やグランジに近い良質なバンドが、ほとんど英国産だという事実は、裏を返せば、現在の米国からそれほど良質なガレージ系バンドは出ていないという事でもあります。
 ガレージ系バンドの多くが、インディー・ロック・メディアの大手、ピッチ・フォークによって称賛されているバンドも決して少なくないのですが、面白いことに最近、台頭してきている英国産のガレージ/ポスト・グランジの大半はNMEが扱っているバンドであるという事です。
 英国だから英国のバンドを扱うのは当たり前だと思われるかもしれませんが、ピッチ・フォークも英国のバンドは扱っているし、NMEだって英国以外のバンドも扱うのです。
 もちろん、NMEがガレージやグランジばかりを最近、称賛しているわけではなく、PEACEやPALMA VIOLETSのように、このシーンと無縁のバンドの方が、むしろ表紙を飾っているので、ガレージやグランジがムーブメントでないのは明白です。
 THE VACCINESが登場して以降、ARCTIC MONKEYSを頂点とした、2000年代のUKロック自体が刷新されていると言えるのかもしれません。
 ARCTIC MONKEYSはもちろん、未だに健在なバンドではあると思うのですが、もはや、時代は、THE VACCINES以降の時代に突入して、その後に、ROYAL BLOODも昨年デビューながら、英国を代表するバンドの一つになっているのです。
 シェフィールドの後輩バンドである、DRENGEがUKの音楽地図を塗り替えられるかと言えば、現時点で素直にイエスとは言えませんが、だからと言って、そういう可能性が全くないとも言えません。
 日本の音楽ユーザーが思っている以上に、英国の音楽地図が既に塗り変わっていると言う事実は、はっきり認識した方が良いと思います。