METZ Live in Japan (1/29)
METZの来日公演が行われたLIVE HOUSE FEVER(新代田FEVER)は、実は今月17日に行われたTELEVISIONの来日公演の会場の、下北沢GARDENのある京王井の頭線・下北沢駅の隣の駅の新代田駅にあって、両会場はほぼ歩いて行くことも可能な距離なのですが、個性的な店が軒を連ねる下北沢駅近辺に対して、新代田駅近辺はスイミング・スクールとコンビニ、図書館ぐらいしかない閑散とした場所…。
しかも、LIVE HOUSE FEVERは新代田スイミング・スクールという小さな建物の中の地下にあるライヴ・ハウスで、たいていの方は外観を見ただけでは、とてもライヴをやる場所には見えないはずです。
しかし、ライヴ・ハウスがオープンして中に入ってみると、本当にロックな匂いがプンプンする空間で閑散とした外の景色とは別世界で驚きます。
来ている観客も若い世代の男性が非常に多く、少なくともイケメン・メンバー目当てのミーハー女子は見当たりません(笑)
しばらくロビーで開場時間まで待っていると、我々、ファンの前をMETZのメンバーとCRYPT CITYのヴォーカリスト、ディーン・ケスラーが談笑したり、ロビー奥のBARで普通にくつろいだりしていたりしたのには驚きましたが (苦笑)、ファンとバンドのメンバーが自分達の時間を大事に出来るのは、こういう小さなライヴ・ハウスの公演だからこそなのかもしれません。
ちなみに下の写真(↓)がMETZのメンバーとディーン・ケスラーが談笑しているところです。
METZのサポート・アクトを務めた、CRYPT CITYは元NUMBER GIRLやSPIRAL CHORD等のベーシストを務めていた中尾憲太郎を中心に結成された東京出身のオルタナ・バンドで極端に音楽メディアの露出も少ないので、このバンドを知っている方も、そう多くはいないと思いますが、このLIVE HOUSE FEVERを根城にしてライヴ活動を行っているバンドでもあるので、CRYPT CITYのメンバーにとっては勝手知ったる場所。
予定時間を10~15分くらい遅れて、CRYPT CITYのライヴがスタートしましたが、中尾のディストーションの効いたヘヴィーなビートを軸に、ワイルドな風貌のケスラーの存在感、小松のずっしり重いビート、中尾と小松の強力なリズムを縫うようにしてカオスを更に紡ぎ上げる戸高のギター、このバンドの曲を知らなくても、このバンドが作りあげている磁場にぐいぐい引き込まれていくはずです。
彼等は自分達の音楽をなぜかジャンク・ミュージックと呼ばれるのを嫌っているのですが、とにかく、この混沌としたカオスを感じさせる彼等の音楽の凄さは生で観ないと伝わりにくい部分もあるので、そういった意味では、このバンドのライヴを観られたことは幸せなのかもしれません。
もちろん音楽性はMETZとは違いますが、とにかく暴れたい盛りの若いキッズには、こういうバンドはうってつけで、この日に観に来た若いキッズに大きな印象を残したと思います。
このバンドはライヴ盤ではCDをリリースしていますが(『Live Defect』)、スタジオ・アルバムに関してはアナログ盤のみしか残念ながらリリースされていないのですが、スタジオ・アルバムもCDで販売すれば、もっと売れるだろうにと思います。
しかし、敢えてバンドの露出を少なくして、アナログ盤と生のライヴでしかバンドの醍醐味を味わえない、CRYPT CITYみたいな奴らも現在の音楽シーンには不可欠なのかもしれません。
とにかく、このLIVE HOUSE FEVERに来たら、是非ともCRYPT CITYの生ライヴを体験していただきたいと思います。
もちろん、スタジオ・アルバムの音源やライヴ盤でも彼等の魅力は充分に伝わるので、遠方でライヴに行けない方もアルバムを聴いていただきたいと思います。
ちなみにケスラーによると、METZのメンバーに三日三晩飲み明かして、すっかり打ち解けた仲になったそうで、もはや同志と言っても良い盟友同志になったそうです。
ケスラーもライヴ中のMCで、そのMETZのリハーサルを見て、かなり絶賛していたので、もちろん、CRYPT CITY以上の凄いライヴを期待してワクワクしながら、次のMETZのライヴを待ちました。
いよいよ待望のMETZのライヴなのですが、このバンド、世界中の音楽メディアに大きな称賛を受けているバンドにも関わらず、日本では人気が今ひとつ盛り上がらないバンドでもあります。
しかし、この会場に来ているファンは、やれグランジ云々、ポスト・パンク云々ではなく真の意味でのリアル・ロックを体験しに来たファンだと思います。
少なくとも、この会場にはSWANSのファンのような、マニア面したファンはほとんどいませんでしたし、METZの曲で思う存分、暴れたい若いキッズがほとんどです。
アルバム2枚聴かれた方のほとんどが、このバンドのサウンドからNIRVANAを連想したと思いますが、グランジの血統を引き継いだTHE VINESやNINE BLACK ALPSとは明らかに違うタイプのバンドです。
少々、オタクっぽい印象の眼鏡男子のヴォーカリスト、アレックス・エドキンズのギター・リフとベーシストのクリス・スロラッチの弾き出すベース・ラインは明らかにパンク/ポスト・パンクの系譜で、METZのライヴが終始、パンクを感じさせてくれた要因も実はこの二人のプレイ・スタイルにあると思います。
ドラマーのヘイデン・メンジーズのドラムもポスト・ロック的な機械的なビートとアグレッシヴなロック・ビートを巧みに使い分けて、他のオルタナ・バンドとは異質のビートを作っているところもMETZらしいところなのだと思います。
眼鏡男子のアレックスが汗びっしょりになって咆哮する姿はイケメン男子好きの女子から見て、あまりカッコ良く見えないかもしれませんが、アレックスみたいな冴えない風貌の男子が叫んでいる姿にこそ、真の意味でのリアル・ロックとパンクを感じさせてくれるのです。
ロックやるしか楽しいと思えない、どこにでもいるような冴えない青年が不満をぶちける方が、スタイリッシュなイケメン・シンガーのメッセージ・ソングよりもリアルに伝わってくるものが私はあるような気がします。
私は昨年、グランジ・バンドのNINE BLACK ALPSを観に行きましたが、METZというバンドはNBAよりも、むしろ、私が若い頃、観に行ったTHE DAMNEDやイギー・ポップのライヴに近い感じがしました。
若いキッズがモッシュやダイヴで暴れてライヴを楽しんでいると、50近い私もついつい、若い頃観たTHE DAMNEDやイギーのライヴに参加した頃の自分に戻った感じがしました。もし私が20歳若ければ、METZのライヴでダイブしていたかもしれませんしね(笑)
下に当日のセットリストを掲載しましたが(↓)、比較的、パンク色の濃いデビュー・アルバムからスタートしたのも、METZのライヴにパンクを感じさせた要因の一つかもしれません。
7インチ・シングルのみリリースの「Eraser」を含め、ほぼ当日来ていたファンが聴きたい曲はやってくれたと思いますが、あまりの全力疾走でのライヴでメンバーもすっかり疲弊してアンコールは無し…
しかし、ほぼ最前列にいた私はアレックスとも握手してもらいましたし、クリスともハイ・タッチしましたし、ステージ横では終始、CRYPT CITYのディーン・ケスラーもライヴを楽しんでいました。
本当にお目当てのMETZにしろ、CRYPT CITYにしろ本当に最高のライヴだったとしか言いようがないです。
こういう小さなライヴ・ハウスで最高のライヴを体験出来るのは、音楽ファン冥利に尽きますし、両バンドのおかげで素敵な時間を過ごすことが出来ました。
METZ Live in Japan SETLIST
(@LIVE HOUSE FEVER, Tokyo)
29th January 2016
①Headache
②Get Off
③Spit You Out
④The Swimner
⑤Knife in the Water
⑥Dirty Shirts
⑦Wait in Line
⑧Acetate
⑨Kicking A Can of Worms
⑩Nervous System
⑪Eraser
⑫The Mule
⑬Wasted
⑭We Blanket