Best Album Of The Year 2020
コロナ(COVID-19)の猛威で2020年の音楽界は史上最悪とも言えるダメージを受けました。世界中のほとんど全てのフェスは中止、もしくは来年への延期。無論、コロナ以降の来日公演のほぼ全てが中止·(来年以降に)延期となりました。今月から米国でワクチン接種が始まるそうですが、それでも来年以降の音楽界に明るい光は見えてこないのが事実です…。しかし、そんなコロナ禍中でもアーティスト側は様々な形で我々に音源を届けてくれたのは確かです。私自身もほとんど参加予定の来日公演が中止·延期になり、一時期は音楽を聴く気力すら奪われた状態でしたが、それでもアーティスト側が届けてくれた音源が少しでも、私の心の糧になったのは確かです。この音楽ブログもかなり久々に書かせていただきますが (苦笑)、今年も私なりの“Best Album Of The Year”を選出させていただきました。
①『None Of Us Are Getting Out Of This Life Alive』
THE STREETS
UKのカリスマ·ラッパー、マイク·スキナーことTHE STREETSの9年ぶりのアルバム。2011年に『Computers and Blues』をリリースした後、マイク·スキナーは一旦、THE STREETSとしての活動を休止し、THE MUSICのロブ·ハーヴェイとのプロジェクト、THE D.O.T.をスタートし、2枚のアルバムをリリース。THE STREETSとしては2017年にシングル「Burn Bridges」をリリースしたのを皮切りに、2018年にも3枚のシングルをリリース。そして昨年の『Glastonbury 2019』にも出演し、今年発売したアルバムで本格的に復活の狼煙を上げることになるはずでした…。ケヴィン·パーカーことTAME IMPALAとのコラボをアルバム冒頭に据え、IDLESを招いたノイジーな表題曲と話題性充分なコラボレーション曲が初っ端から続きますが、THE D.O.T.での盟友、ロブ·ハーヴェイが参加している「Conspiracy Theory Freestyle」、そしてラストを飾るクリス·ロレンゾとのドラムンベース·ナンバー「Take Me As I Am」まで魅力的なコラボレーション·ナンバー目白押しのナンバーばかりで、私が今年のアルバムのナンバーワンに選出するに相応しい作品だと思います。THE STREETSはやれ“英国のエミネム”だの“UKガラージのボブ・ディラン”だのと言った評価が我が国には未だありますが、マイク·スキナーはARCTIC MONKEYSのアレックス·ターナーやCATFISH AND THE BOTTLEMENのヴァン·マッキャンにも多大な影響を受けたストーリーテラーでもあることをココに付け加えておきます。
②『KiCk i』
Arca
アルカの2017年以来3年ぶり4作目のスタジオ·アルバム。2位と言う順位にはしていますが、ほぼTHE STREETSのアルバムと同率1位(?)と解釈していただいても構いません。それくらい、このアルバムのインパクトは強力でした。前作『Arca』では初めて自身がヴォーカルを取るようになり、悲劇の歌劇オペラとも呼べる作品を作り上げましたが、本作ではエクスペリメンタル·ポップとも呼べる、前作とは打って変わった陽性のアルバムになっています。ビョーク、ソフィー、ロザリアと言った曲者揃いのゲストも迎えていますが、THE STREETSと違うところは、ゲストを迎えても結局はアルカの独壇場になるところ。自身のジェンダーのノンバイナリーをそのまま曲名にした「Nonbinary」から、矢継ぎ早にエクスペリメンタル·ワールドが繰り出されていきますが、不思議とアルバムを聴いていると心地良さを感じさせてくれるところはアルカのセンス故だと思います。音楽を聴く気力を失っていた時期に、このアルバムと出会って私自身、救われた気持ちにもなったこともココに付け加えておきましょう。
③『Monument』
MOLCHAT DOMA
ベラルーシ·ミンスク出身のポスト·パンク/コールドウェーヴ·バンド、MOLCHAT DOMAの3作目。MOLCHAT DOMAは2017年にデビュー·アルバム『S KRYSH NASHIKH DMOV』、2018年に2ndアルバム『Etazi』をリリースすると、Band Campやストリーミングで驚異的な再生回数を記録し、両アルバムが「Sacred Bones Records」でリイシュー発売されました。彼らはもはや“ソヴィエト·ウェーヴ”と呼ばれるロシア語圏内のニューウェイヴ·バンドを代表する急先鋒的な存在として世界中のポスト·パンク/ニューウェイヴ·ファンに知られる存在となっていますが、本作はよりニューウェイヴ色を強め、ヴォーカリストのイゴール·シュクトコのロマンチシズムにも磨きがかかり、旧作に比べて進化した作品に仕上がっています。「Discoteque」のようなディスコ·テイストなニューウェイヴ·ナンバーもありますが、決して軽くなり過ぎることなくロマンチシズムも重厚さも携えた作品です。
④『RTJ4』
RUN THE JEWELS
⑤『Down In The Weeds, Where The World Once』
⑥『Gentle Grip』
PUBLIC PRACTICE
⑦『To Love Is To Live』
Jehnny Beth
⑧『Arrow』
Noveller
⑨『A Hero's Death』
FONTAINES D.C.
⑩『Notes On A Conditional Form』
THE 1975
以上(↑)が今年、私が選んだ“Best Album Of The Year”ですが、いつもの年(この企画は毎年はやってはいないのですが)に比べるとロックではないアルバムを多く選出しているかもしれません。そもそも1位のTHE STREETSも2位のアルカもロックじゃありませんし、4位のRUN THE JEWELSも同様です。でも今年はコロナ禍でライヴに参加出来なかった分、(少なくとも昨年よりは)色々なジャンルのアルバムを聴く機会も増えたとは思います。恐らくは来年もコロナ禍で音楽界も今年と同じような状況は避けられないかもしれません。そんな状況で我々、音楽ユーザーに出来ることはアーティストの作品を購入してあげることで彼らに貢献することしか出来ません。コロナが収束する頃には、決して若くない私がライヴに参加出来るかどうかは微妙ですが、彼らが創作した作品には出来る限り、来年以降も触れていきたいと思います。