(祝) サマソニ&単独公演出演決定!
『Simulations』
THE MIRROR TRAP
バンドはこれまでに、『The Last Great Melodrama』(2011年)と『Stay Young』(2014年)の2枚のスタジオ・アルバムと、『The Visible Hand』(2012年)と『Silent Men』の2枚のEPをリリースしてきましたが、日本盤としてリリースされたのは本作が初めてになります。
THE MIRROR TRAPは2009年に英スコットランド・グラスゴーで結成されたバンドで、ギターのマイケル・JMは、同じグラスゴー出身のTHE VIEWのフロントマン、カイル・ファルコナーと同級生だったというエピソードもあり、THE VIEWに続く、グラスゴー期待のバンドと言えると思います。
彼等は影響を受けているアーティストとして、QUEENS OF THE STONE AGE、THE HIVES、RADIOHEAD、TEARS FOR FEARS、NINE INCH NAILS、Madonnaを挙げており、その雑多な音楽影響を反映するかの如く、ガレージ・サウンドとエレクトロ・サウンドが混在した、00年代以降のバンドならではの雑食系ロック・バンドでした。また、PLACEBOのUKツアーとロシア・ツアーにも同行して、PLACEBOのファンにも大きな支持を受けているバンドです。
3作目にあたる本作では従来の荒々しいサウンドは残しつつも、エレクトロ色は大きく減退し、元々の持ち味でもあったクラシック・ロック的なキャッチーな楽曲を生かした、ある意味、グランジ・ロックに近いサウンドに仕上がっていると思います。
今までのように、やりたい音楽を雑多にぶち込んだ彼等の音楽性は大きな魅力ではありましたが、楽曲の良さを生かしサウンドに統一感を持たせた本作はバンドとしての成長を大きく感じさせるものになっていると思います。
パンク、グランジ、そしてポップ・ミュージックというメンバー全員の共通項を具現化し、バンドのカオティックな側面と完璧なコーラスの両立という理想形をこの作品で実現出来たのかもしれません。
あくまでノイジーなバンドであるというポリシーを貫きつつも、(バンドの荒々しい魅力を保ちつつも)英国王道バンドらしさも身につけたことで、将来、スタジアム・クラスのバンドに変貌することも有り得るバンドだと思います。
このアルバムの大きなテーマになっているのは、ソーシャル・メディアによって形成される虚構や粉飾を描いたものが主なもので、子供の頃から当たり前にソーシャル・メディアが存在しているはずの彼等がこうしたテーマを描くのは極めて面白くもあり、ソーシャル・メディアに悪い意味で染まりきっている中高年世代よりも、こういうオンライン社会での弊害を意識しているのは感心させられる部分です。
このバンドのメンバーにとっても、ひたすら人と繋がっていたいからこそのTHE MIRROR TRAPで、ソーシャル・メディアとは全く違うオーディエンスと音楽を通じて繋がりたい…。このアルバムを聴いた方は彼等のそんな切実な願いが届いていることと思います。
もちろん、来月のサマソニと単独公演でも彼等は日本のファンとの繋がりをより重視して、素晴らしいパフォーマンスをやってのけるに違いありません。