吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

エピタフが2010年代に送り出した"GRINDERMAN"



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『Bloodsweat』
PLAGUE VENDOR








 2009年に結成された、米カリフォルニア州・ウィッティアー出身のパンク・バンド、PLAGUE VENDORが先月リリースしたばかりの新作です。
 2014年に米国の名門インディー・パンク・レーベル『Epitaph Records』から、デビュー・アルバム『Free to Eat』リリース後、"THE BIRTHDAY PIRTY時代のニック・ケイヴが憑依したかのよう"と評されるフロントマンのブライドン・ブレインのカリスマ性とアグレッシブなライヴ・パフォーマンスを武器に、2014年の『Waped Tour 2014』にも出演して、ライヴ・バンドとしてメキメキと頭角を表わしてきました。
 ライヴ・バンドとしての評価だけでなく、デビュー・アルバムも、あの辛口インディー音楽メディアのピッチフォークが10点満点中7.1点を付ける等、音楽性も高く評価されました(あのピッチフォークが『Epitaph Records』のバンドを高く評価していること自体、驚愕に値しますが…)。
 デビュー当初、このバンドが比較されたバンドとして、THE GUN CLUB、GRINDERMAN、BLACK LIPS、Ty Segall等が挙げられ、PLAGUE VENDORはブルース色の濃いガレージ・パンク・バンドとして音楽メディアに評価され、パンク・ファン以外の注目も集めることになりました。
 先月発売された、2ndアルバムの本作ではプロデューサー&エンジニアとして、THE WHITE STRIPESの『White Blood Cells』等のエンジニアを勤めてきたスチュワート・サイクスを起用。ミックスには数多くのアーティストのプロデューサーとエンジニアを務めてきたアラン・モウルダーを起用しました。
 サイクスとモウルダーの起用により、ガレージ色は減退して、だいぶ洗練されたサウンドになった感じがしますが、このバンドの持ち味でもあるダークな質感が際立って、ブライドンのヴォーカルを生かした楽曲が増えた気がします。
 元々、ニック・ケイヴに激似の雰囲気のブライドンの存在感こそが、このバンドの最大の魅力でもあるのですが、このアルバムでのブライドンのヴォーカルは凡庸なオルタナ・バンドやパンク・バンドのヴォーカリストよりもカリスマ性を強く感じさせてくれます。
 サウンドインパクトだけなら、私が先日、このブログに書いたSO PITTEDのデビュー・アルバムの方が上かもしれませんが、PLAGUE VENDORは『Waped Tour』や『SXSW』等、大きなフェスの舞台を踏んだバンドだけに、その分、このアルバムのサウンドにもスケール感を感じさせてくれるのです。
 かつて同じくニック・ケイヴと比較された、THE ICARUS LINEのジョー・カーダモン、ICEAGEのエリアス・ベンダー・ロネンフェルトのような音楽性云々を飛び越えたカリスマ性を兼ね備えたブライドン・ブレインの魅力は、このバンドの大きな武器。
 このバンドが将来、同じ『Epitaph Records』のTHE OFFSPRINGRANCIDNOFXのような大きな成功を収めるかは分かりませんが、そういうビッグな成功を収めるスケールの大きさは持っているバンドだと思います。
 このバンドも『SUB POP』のMETZやSO PITTEDとは違った意味で、2010年代のパンク・シーンを支える重要なバンド。しかし、このバンドには音楽マニアとかインディー厨に受けるようなバンドではなく、もっともっと大きなフェスで存在感を見せつけて欲しいバンド。
 出来れば単独公演で観たいバンドですが、フェスに出演してもらって、このバンドを知らない日本の音楽ファンの度肝を抜くようなパフォーマンスをやってのけて欲しい気もします。































 
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