吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

今年リリースされたカヴァー·アルバム3枚

 

 3日前に年間ベスト·アルバム·ランキングと言う形で、はてなブログに復帰させていただきましたが、本日は本当に今年最後と言うことで、今年リリースされた、3枚のカヴァー·アルバムについて書きたいと思います。

 カヴァー·アルバムと言うと、当然、オリジナル曲が大半を占める通常のスタジオ·アルバムに比べると軽視されがちで、よっぽど好きなアーティストのカヴァー·アルバムでもない限りは購入しない方も多いと思います。しかし、カヴァー·アルバムやカヴァー曲を通じて、そのアーティストのルーツを深く知るだけでなく、そのカヴァーされたアーティストの再評価にも繋がっていることも多々あるのも確かです。また本当に優れたアレンジでクオリティーの高いカヴァー·アルバムももちろんありますが、少なくともカヴァー·アルバムがそのアーティストの代表作になった例がほぼ皆無なのも、また確かです。今回のブログでは、今年リリースされた、モリッシー、TOY、WEEZERのカヴァー·アルバムを取り上げたいと思います。

 

 

 

 

 


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『California Son』

Morrissey

 

1.Morning Starship (Jobriath)

2.Don't Interrupt the Sorrow (Joni Mitchell)

3.Only a Pawn in Their Game (Bob Dylan)

4.Suffer the Little Children (Buffy Sainte-Marie)

5.Days of Decision (Phil Ochs)

6. It's Over (Roy Orbison)

7.Wedding Bell Blues (Laura Nyro)

8.Loneliness Remembers What Happiness Forgets (Dionne Warwick)

9.Lady Willpower (Gary Puckett and the Union Gap)

10.When You Close Your Eyes (Carly Simon)

11.Lenny's Tune (Tim Hardin)

12.Some Say I Got Devil (Melanie)

 

 

 今年の5月に発売されたモリッシーのカヴァー·アルバムで輸入盤のみで発売されました。上の曲名(↑)の横のカッコ内には原曲のアーティスト名を表記させていただきましたが、ジョニ·ミッチェル、ボブ・ディラン、ロイ·オービソン、ディオンヌ·ワーウィック等、かなり知名度の高い大御所のアーティストのカヴァー曲が多いことに気付くことと思います。知名度の高いアーティストばかりとは言え、上記のアーティストを知っている方でも全曲知っている方は、ほぼ皆無なんじゃないかと思えるほど、マニアック(?)な楽曲ばかりで、ほぼモリッシーの新曲を聴いている感覚で聴けますし、何よりも曲のアレンジのセンスの高さも群を抜いて高く、シニカルな皮肉屋のイメージの強いモリッシーにしては、非常にアーティストのリスペクトを感じる温かみを感じることが出来ます。

 大御所のカヴァー曲も、もちろん秀逸ですが、1曲目のジョブライアスと、4曲目のバフィー·セイント·マリー、それぞれのカヴァー曲が、より、モリッシーらしい選曲になっていると感じます。 ジョブライアスはエレクトラ·レコードが大々的に金をかけて売出したものの、全く売れずに下降線を辿り、83年にエイズで亡くなった悲劇のグラムロック·シンガーですが、かつて、NEW YORK DOLLSの大ファンだったモリッシーが好きそうなアーティストで、曲のアレンジももちろん、グラム風味の華やかなエレクトリック·サウンドに仕上がっています。4曲目のバフィー·セイント·マリーは、シンガーソングライターですが、アメリカ先住民が直面している問題を取り上げている社会活動家でもあり、社会意識の高いバフィーの側面はモリッシーと符号する部分も多く、この曲のアレンジもリズム面の細部まで念入りなものになっています。

 

 

 

 

 


Morrissey - Morning Starship (Official Audio)

 

 

 

 

 


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『Songs of Consumption』

TOY

 

1.Down on the Street (THE STOOGES)

2.Follow Me (Amanda Lear)

3.Sixty/Forty (Nico)

4.Cousin Jane (THE TROGGS)

5.Fun City (SOFT CELL)

6.Lemon Incest (Serge & Charlotte Gainsbourg)

7.Always on My Mind (Elvis PresleyPET SHOP BOYS…etc)

8.A Doll's House (John Barry)

 

 

 つい先日、『Happy in the Hollow』を年間ベスト·アルバムに選出させていただいたTOYですが、実は11月に輸入盤のみですが、このカヴァー·アルバムもリリースしています(ちなみに『Happy in the Hollow』は、1月リリース)。上記のモリッシー同様、コチラにもカッコ内に原曲のアーティストを表記しましたが、イギー·ポップのTHE STOOGESから、「Wild Thing」のヒットで有名なガレージ·バンドのTHE TROGGS、ニコ、セルジュ&シャルロットのゲンズブール親子まで、アーティストのジャンルの振れ幅と言う点ではモリッシー以上と言えると思います。基本的にはエレクトリック·ポップ風なアレンジで統一されていて、初っ端の1曲目のTHE STOOGESの曲までエレポップなアレンジにしているところは凄い徹底しているところだと思います。それから、2曲目のアマンダ·リア、6曲目のゲンズブール親子とフランスで活動しているアーティストを、UKロック·バンドが取り上げる機会もなかなか無いと思いますが、こうしたカヴァーで、TOYの音楽ルーツにフレンチ·テーストが、TOYの音楽センスに繋がっていることに気付かされます。このフランス·アーティスト2組のアレンジに関しては基本的な楽曲自体がエレポップなので、そこはアレンジをイジり過ぎすにオリジナルに忠実なところも好感が持てます。ちなみに、ゲンズブール親子の「Lemon Incest」はシャルロットの歌手としてのデビュー曲でもあり、ファンの間でも人気の高い曲です。ちなみに同じ欧州出身のニコ(ニコはドイツ出身)の「Sixty/Forty」は大胆にインダストリアル·サウンドにアレンジされていて、アーティストによって、イジるべきところと原曲に忠実にする部分の分け方、センスの高さを感じさせてくれます。

 このアルバムもモリッシーのカヴァー·アルバムと比較しても遜色ないアルバムで、是非とも機会があったら聴いていただきたいアルバムです。

 

 

 

 

 


TOY - 'Fun City' (Official Video)

 

 

 

 

 


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Weezer (Teal Album)』

WEEZER

 

1.Africa (TOTO)

2.Everybody Wants to Rule the World (TEARS FOR FEARS)

3.Sweet Dreams(are Made of This) (EURYTHMICS)

4.Take on Me (a〜ha)

5.Happy Together (THE TURTLES)

6.Paranoid (BLACK SABBATH)

7.Mr.Blue Sky (ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA)

8.No Scrubs (TLC)

9.Billy Jean (Michael Jackson)

10.Stand by Me (Ben E.King)

 

 

 上記(↑)のカヴァーしたアーティストを見ていただくと、TOTOTEARS FOR FEARS、EURYTHMICSからマイケル·ジャクソンまで、80年代を通過している者なら知らないはずのないベタなヒット曲に加え、ELO、BLACK SABBATH、そしてベン·E·キングの超有名曲まで、ガッツリ、超ベタな選曲で攻めているカヴァー·アルバムですが、演奏の方も笑っちゃうくらい、オリジナルに“超”忠実です。

 実はこのアルバムが発売された同じ月(3月)に、もう一枚、『Weezer (Black Album)』がリリースされていることもあって、この『Weezer (Teal Album)』はむしろ、肩の力を抜いた企画盤的な印象が強いので、ブラック·アルバムと同時に、このティール·アルバムを購入された方には、むしろ、完コピのこうしたカヴァー·アルバムの方がむしろ、聴きやすいのかもしれません。もちろん、本人達は一生懸命にこのカヴァー·アルバムを制作したと思いますが、どこか遊び心と言うか楽しめる余裕を感じさせるのは、彼らのユルいキャラクター故なのかもしれません(笑)。

 正直、あまりにオリジナルに忠実過ぎな完コピ·カヴァーなので、80年代を通過している方は直ぐに飽きる可能性もあり得ますが、むしろ若い世代のWEEZERファンの方がこうしたアルバムは素直に聴けるのかもしれません。

 

 

 とりあえず、今回はちょっと軽めの内容のブログを書かせていただきましたが、来年もまた時間がある時にそれなりの音楽ブログが書けたらと思っています。

 

 

 

 


Weezer - Take On Me (Official Video)