吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

MARCHING CHURCH Live in Japan(12/6)




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 先月(輸入盤は10月)に新作『Telling It Like It is』をリリースしたばかりのデンマークコペンハーゲン出身のポスト・パンク・バンド、ICEAGEのフロントマン、エリアス・ベンダー・ロネンフェルトのソロ・プロジェクト、MARCHING CHURCHの今回の来日公演は、エリアスにとっては昨年のICEAGEとしての来日公演以来、約1年ぶりの日本公演でもあります。 昨年のICEAGEの来日公演はアストロホールから大入り袋が出るほどの大盛況となりましたが、今回のMARCHING CHURCHの来日公演は同日にThe xxの豊洲PITでの来日公演が被り、少々、その煽りは食ったと思いますが、むしろ本当の意味でエリアスを愛するファンが集った公演になったと思います。 ICEAGEの来日公演は大入り袋が出る満員御礼の公演になりましたが、話題性のみで来たファンも決して少なくなかっただけに、私も正直辟易した部分もありましたが、話題性のみのファンがThe xxの公演に流れてくれたのは個人的に良かった気がします。 ちなみにDamien Dubrovnikのローク・ラーベクも4月のLUST FOR YOUTHの公演以来の来日で、オープニング・アクトのDamien Dubrovnikも含めて、今回の公演は現在のデンマークのインディー音楽シーンを語るうえで重要な意味を持つものだったと言えると思います。 12月の来日公演は、The xx、MARCHING CHURCHだけでなく、SWANS、ALABAMA SHAKESと興味深いアーティストが目白押しなのですが、このMARCHING CHURCHだけは絶対に見逃したくないライヴでした。 今回は友達とは一緒ではなく一人で行ったものなのでシンプルなライヴ・レポートにしたいと思います。

 

 21時30分に登場したDamien Dubrovnikは、4月のLUST FOR YOUTH来日公演でキーボード・プレイヤーも務めていたローク・ラーベクとChristian Stadsgaardのノイズ・ユニットですが、二人共、MARCHING CHURCH、COMMUNIONS、LOWER等、現在のデンマークコペンハーゲン・インディー音楽シーンの重要なバンドのアルバムをリリースしているレーベル「Posh Isolation」を運営している主宰者でもあります。 もっとも「Posh Isolation」は前述のバンド連のアルバムもリリースしていますが、本来、このレーベルはノイズ系バンド主体のレーベルで、Damien Dubrovnikは二人が三度の飯より好きな(笑)ノイズ・ミュージックを自らプレイするために結成したようなユニットと言えるかもしれません。 ちなみにロークはエリアスとのユニット、Varでも来日公演を行ったことがあり、ロークにとって今回のDamien Dubrovnikの公演は日本では3バンド目になるのですが、音楽活動も精力的なレーベル・オーナーです。 ステージ上には机上に置かれたノイズを発する機材とアンプのみで、基本的にクリスチャンが機材を操り、ロークがヴォーカルを取るスタイルですが、ロークのヴォーカルは"歌う"のではなく、自らもノイズを発する機材になっていると言う方が正しいかもしれません。 機材から発せられる暴虐的なノイズ・サウンドに、自らの発した咆哮的な叫びも歪ませて、怒り狂うように叫びまくるロークのヴォーカルは、4月のLUST FOR YOUTHでクールにキーボードを弾いていたロークを観た方は、とても同一人物とは思えないことでしょう。 アンプから流れ出るノイズも充分に過激なのですが、まるで鬼神でも憑依したかのようなロークの咆哮は会場のオーディエンスを圧倒していました。 着ていた白いYシャツもはだけ、観客の中に何度も雪崩込んだかと思うと、終いには観客フロアの中心にマイク・スタンドを持ち込んで咆哮する等、音楽以上にロークのパフォーマンスが印象に残ったライヴでした。 元々、ロークはデンマークの伝説的なパンク・バンド、SEXDROMEのメンバーだけに自らのパフォーマーとしての血がDamien Dubrovnikで発揮されるのでしょう。 とにかく、私が最近、観たバンドでここまで狂気を感じさせるライヴは覚えがないですが、オープニング・アクトとしてはあまりにもインパクトのあるライヴでした。 しかし、超イケメンのロークの逝ってしまっている形相を間近で見ると本当に怖いですけどね(苦笑)。 やはり、三度の飯よりノイズが好きな二人の真骨頂を嫌というほど実感しましたし(笑)滅多に経験出来ないパフォーマンスを味わえたライヴだったと思います。

 

 

 ちなみにコチラのリンク(↓)は、ロークがメンバーでもあるLUST FOR YOUTHの今年4月の来日公演のブログです。

 

 LUST FOR YOUTH Live in Japan (4/26) - 吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

 

 

 

 

 

 

 

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 そして、思わぬオープニング・アクトの狂気のパフォーマンス終了後の (苦笑)、真打ちのMARCHING CHURCHですが、エリアスにとってはMARCHING CHURCHとしては初のライヴではあるものの、VarとしてもICEAGEとしても来日公演を行っていて、Damien Dubrovnikのローク同様、このアストロホールは勝手知ったる場所。 もはやエリアスは近年、デンマークのバンドの来日公演の聖地と化しているアストロホール最大のカリスマと言っても良いかもしれません。 今回の(エリアス以外の)MARCHING CHURCHの日本公演のメンバーは、Kristian Emdal(B)、Anton Rothstein(Dr)、Bo Hoyer Hansen(G)、Johan S. Weith(G)に加え、サックス・プレイヤーのAlex Hungtaiという6人編成。 エリアスが標榜する自らのソウル・ミュージックを追求するために、エリアスが昨年からスタートしたプロジェクトですが、精力的にツアーもこなし、エリアスが本腰を入れてバンドとして力を入れているだけに、そのライヴ・パフォーマンスに期待したファンも多かったに違いありません。 ほぼ開始時間の22時35分頃にバンドが登場したと思いますが、エリアスはMARCHING CHURCHではお馴染みの黒の生地に星の絵柄の入ったベストを着て登場し、サックス・プレイヤーも入ったバンドはやはりICEAGEとはかなり志向の違うものだとライヴが始まる前から感じさせられました。 ライヴ一曲目は新作のオープニング・ナンバーでもある「Let It Come Down」からスタート。 静寂ながらドラマチックで情感的なヴォーカルがアルバムでも印象に残るナンバーですが、生で聴くエリアスのヴォーカルもエモーショナルで心に響く、地味ながらライヴのスタートには申し分のない曲です。 そして次の曲は「Inner City Pigeon」で、Kristianのベース・ラインが印象に残るMARCHING CHURCH流ソウル・ナンバーで、新作の曲でのスタートながら、この2曲で観客の心は見事に掴んだ気がします。 元々、LOWERのメンバーだったKristianとAntonがバンド解散のためにMARCHING CHURCHの活動に専念出来ることでツアーも精力的にこなすことが可能になり、そのためにMARCHING CHURCHが"プロジェクト"ではなく"バンド"として見事に機能し、エリアスの理想とするソウル・ミュージックをライヴでも表現出来るようになったことをこの公演でも感じることが出来ました。 もっともICEAGEでもカントリー等を取り入れた新機軸を打ち出してはいたのですが、元がポスト・パンク・バンドでもあるICEAGEは、その新機軸をライヴでは、どこか消化不良気味に表現出来切れないところがあったのですが、このバンドはそういった意味でエリアスが理想とする音楽を追求するうえで結成されたバンドだったとも言えると思います。 この日、The xxの来日公演を蹴って、MARCHING CHURCHを観られた方は相当にエリアス愛が強い方だと思いますが、そんなファンの期待に見事に応えてくれたと思います。 どこかナルシズムの入った(笑)エリアスの仕種も実に絵になりますし、Alexのサックスの音色もバンドのサウンドの重要な要にもなっていました。 また、Antonのドラムも楽曲によってはダイナミズムをもたらしていて、LOWER時代の長所を充分に活かしていたと思います。 楽曲の順番等は私も覚えていませんが、今回のライヴでやった曲のほとんどが新作からの曲で、もしかしたら全曲が新作の曲だったかもしれません。 ほとんどの曲を新作からの曲にしたのはおそらく、新作が本格的なバンドとして制作されたものですし、真の意味でのバンドとしてのMARCHING CHURCHをライヴでプレイするなら新作の曲だけの方が機能するということなのかもしれません。 MARCHING CHURCHの新作も実際に私の中で今年の年間ベスト・アルバムのベスト3に入るくらいの出来だったと思いますが、このアルバムで表現した見事なサウンドは、この公演でも見事に反映されたと思います。 最初、Damien Dubrovnikの過激なパフォーマンスを観た時、MARCHING CHURCHは喰われてしまうのでは?と余計な心配をしてしまいましたが、そんな心配は無用でした。 とりあえず、この後、OASISレミーの映画は見に行く予定ですが、私が観に行く今年のライヴはコレで終了です。 今年も昨年に劣らず、多くの素晴らしいライヴを体験し、そして素敵な仲間と素敵な時間を過ごせたことを心から嬉しく思います。 また来年も懲りずに少しでも素晴らしい音楽生活が送れたらと思います。

 

 

 

 

 (※)この日の公演のセットリストを改めて、追記しました(12月9日追記)

 

December 6th Tuesday 2016

MARCHING CHURCH Live in Japan Setlist

(@ASTRO HALL TOKYO)

 

1. Let It Come Down

2. Florida Breeze

3. Inner City Pigeon

4. Heart of Life

5. Information

6. Lion's Den

7. Achilles Heel

8. Up a Hill

9. Calenture

10. 2016

 

 

 

 

 


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