吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

THE POP GROUPとジェイムス・チャンスの狂騒、現代に蘇る!




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『Last Evenings on Earth』
MELT YOURSELF DOWN







 ロンドンの無国籍トライバル・パンク・バンド、MELT YOURSELF DOWNが先月にリリースした新作で、2013年のセルフタイトルのアルバム以来、3年ぶりのアルバムになります。
 MELT YOURSELF DOWNはロンドンの先鋭アングラ・ジャズ・バンド、ACOUSTIC LADYLANDのサックス・プレイヤーだった、ピート・ウェアハムが結成したバンドで、バンド名はジェイムス・チャンスが1986年にリリースしたアルバム・タイトル名から取られたものだそうです。
 MELT YOURSELF DOWNのサックス・プレイヤーでもあり、バンドのリーダーでもあるピート・ウェアハムはリーズの音楽学校を卒業した後、1997年から1999年にかけて英国の由緒正しきビッグ・バンド、Natinal Youth Jazz Orchestraに在籍経験もあった、将来を嘱望されたテナー、バリトン・サックス奏者で、数多くのセッション・レコーディングへの参加経験があります。
 ウェアハムが初めて、パーマメントなバンドを結成したのが、MELT YOURSELF DOWNの前身バンドとも言える、2001年に結成されたACOUSTIC LADYLAND。2004年にはBABYSHAMBLESやブライアン・イーノとの共演経験もあるドラマー、セバスチャン・ロシュフォード率いるPOLA BEARにも参加し、しばらくはACOUSTIC LADYLANDとPOLA BEARの両バンドで二足の鞋を履く活動を行ってきました。
 ACOUSTIC LADYLANDを2010年に解散し、ウェアハムは2012年に結成したのが、このMELT YOURSELF DOWNで、メンバーはウェアハムの他に、クシャル・ガヤ(Vo)、ルース・ゴラー(B)、シャバカ・ハッチングス(Sax)、サティン・シン(Per)、トム・スキナー(Dr)、そしてエレクトロニクスとプロダクションを担当するリーフカッター・ジョンことジョン・バートンも含めた計7名。
 バンドは「57年のカイロ。72年のケルン。78年のニューヨーク」をテーマに掲げ、2013年にセルフ・タイトルのデビュー・アルバムをリリースしました。
 汎アラブ主義だった頃のエジプト、CANが活躍していた時代のケルン、そしてポスト・パンク期のニューヨークと、このバンドが目指している音楽のヴィジョンがテーマに込められていると思います。
 ZUN ZUN EGUIの一員でもある、モーリシャス出身のクシャル・ガヤのヴォーカルは、英語・フランス語に加えて、クレオール語も織り交ぜた混沌を感じさせるもので、ダモ鈴木(CAN)の呪術性とマーク・スチュワートの咆哮(THE POP GROUP)を感じさせてくれます。
 アラブともアフリカとも言えるファンク・グルーヴの合間を電子音が飛び交い、更にウェアハムとハッチングスの2管のサックスが絡む、ジャズでもポスト・パンクでもない、剥きだしのダンス・ミュージックを感じさせる、唯一無二のサウンドを築き上げていると思います。
 ACOUSTIC LADYLANDでジャズを超えた、ロックとの異種配合に取り組んできたウェアハムが、更に自身の音楽の理想を進化させるべく結成したのが、おそらく、このMELT YOURSELF DOWNなのではないかと思います。
 ジェイムス・チャンスが理想型としてあるのかもしれませんが、あくまで、ウェアハムが目指しているのは、2010年代という時代を意識したサウンド。
 これから、このバンドのサウンドがどう進化していくのかを考えると先が楽しみなバンドですが、同時にこのバンドの日本公演も是非とも実現していただきたいものです。













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