吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

ジャック・ホワイトとマイルズ・ケインのお気に入りガレージ・バンド



f:id:killer_yoshikage:20160603152828j:image
『Alas Salvation』
YAK







 英ロンドンを拠点に活動しているガレージ・ロック・バンド、YAKが先月にリリースしたデビュー・アルバムです。
 YAKはオリ・バーレスク(Vo/G/Organ)、アンディ・ジョーンズ(B/Vo)、エリオット・ローソン(Dr/Vo)によるトリオ・バンドで、昨年2月に「Fat Possum Records」から、デビュー・シングル「Hungry Heart」をリリースしましたが、バンドが具体的にいつ頃、結成されたのかはハッキリしないようです。
 そして、昨年3月にEP『Plastic People』をリリース後、昨年11月に元THE WHITE STRIPESのジャック・ホワイトのレーベル「Third Man Records」からEP『No』をリリースした後に、バンドは音楽メディアに注目を集めるようになりました。
 フロントマンのオリ・バーレスクは、バーミンガムに近いイングランド中部のウォルヴァーハンプトンで生まれ育ち、10歳の頃から地元のパブで父や兄と演奏しながらギターを習っていたそうです。17歳の時にロンドンに上京して、骨董商に落ち着くまでは数々の職を転々としていたそうです。
 ある時にロンドンのあるパーティーで、ニュージーランド出身のエリオット・ローソンと知り合い、彼がドラマーであることを知ると、5歳の頃からの友人で以前から一緒にバンドを組みたいと思っていたアンディ・ジョーンズを誘って結成したのが、このYAKというバンドです。
 ちなみにオリの営んでいた骨董品店には、Spiritualizedのジェイソン・ピアースとジョン・コクソンも常連として出入りしていて、バンド活動をするうえでの助言もしてもらったそうですが、結成当初は三人とも大それた夢や目標があったわけではないそうです。
 本来、ブルース・アーティストを扱っていながらもDINOSAUR Jr.、THE BLACK KEYS、BAND OF HORSES等のインディー/オルタナ系バンドも扱っている「Fat Possum Records」、そしてジャック・ホワイトの運営している「Third Man Records」からのシングルやEPからのリリースは、オルタナ好きやインディー・バンド好きの注目を集めるのに充分なブランドとなるレーベルで、彼等の躍進に一役買っているのですが、このバンドをTHE LAST SHADOW PUPPETSのマイルズ・ケインがすっかり気に入っていて、インタビューでフェイヴァリットに挙げていたこともバンドの躍進に一役買っている要因になっていると思います。
 私も以前、マイルズのTHE RASCALSのアルバム『Rascalize』に関してのブログを書いたことがあるので、お読みになった方もいらっしゃると思いますが、マイルズはTHE RASCALSの前身バンド、THE LITTLE FLAMESからヘヴィーなサウンドを嗜好しており、ARCTIC MONKEYSの2ndアルバム『Favourite Worst Nightmare』が、THE LITTLE FLAMESのサウンドの影響を大きく受けていることを同ブログで書かせていただきました。
 元々、ヘヴィーな嗜好のサウンドを好むマイルズが、ヘヴィーなガレージ・サウンドのYAKに惚れてしまうのも、至極、当然と言えば当然なのですが、今年4月には、THE LAST SHADOW PUPPETSのUKツアーのオープニング・アクトも務め、バンドの勢いにますます拍車がかかっている状態です。
 …で、肝心のこのデビュー・アルバムのサウンドですが、このバンドの以下(↓)のプレス・リリースが一番、参考になると思うので転記しておきます。


「このトリオが頼りにするのは野性的エネルギーと奇妙なテレパシーから生まれるユニークな化学反応で、そこから狂おしいほどのブルース、夢心地なサイケ、それに熱狂的なプログレ・サウンドがぶつかり合い巨大な嵐を巻き起こすのだ。」

 このデビュー・アルバムは、YAK自身が運営している自主レーベル「Octopus Electrical」からリリースされ、プロデューサーはEP『No』も手掛けたPULPのベーシスト、スティーヴ・マッキーが担当して、曲によってはサックス、ピアノ、アコースティック・ギターも使用していますが基本的には、過去にリリースしたシングルやEPのヘヴィーなガレージ・サウンドを引き継いだものになっていると思います。
 身も蓋も無い言い方をしてしまえば、プレス・リリース通りのブルースもサイケデリックも、そして長尺なプログレ・ナンバーもある古典的なガレージ・サウンドの範疇を出ていないのですが、バンドがライヴで何時もプレーしているであろうカオティックなエネルギーをアルバム全体に感じることと思います。スティーヴ・マッキーも変にサウンドをいじり過ぎて、バンドのダイナミズムを損ねないようにしたことも評価出来ます。
 アルバムが完成した後、オリは「自分達が作り出したモンスターが何なのか、よく分からない」と語ったそうですが、本能のままに衝動的に演奏した結果、生み出したカオスが"モンスター"として暴れまくったのが本作なのだと思います。
 もちろん、カオスを感じさせると言っても、所詮は古典的ガレージ・サウンドを基調にしたサウンドなだけに飽きられるのも早いかもしれません。
 しかし、このアルバムはただライヴでやったエネルギーをぶつけただけのアルバムに過ぎず、THE LAST SHADOW PUPPETSのオープニング・アクトを務めたのを機会に、これから新しいサウンドを取り入れた時には、手のつけられない"モンスター"のような格段の成長を遂げる可能性を充分過ぎるくらい秘めていると思います。
 私も期待していたデビュー・アルバムですが、今年リリースされた、SO PITTEDやSUNFLOWER BEANのデビュー・アルバムと比べると、インパクトという点では少し弱いかな?というのが正直な感想です。
 しかし、この感想はあくまで、このバンドの将来の伸びしろを加味して、2枚目、3枚目に大きなモンスターに成長を遂げた時にこそ、本当のこのバンドの真価が問われるという意味での少し厳しい目での評価です。
 オリの端正なルックスも手伝って日本でも人気が出そうなバンドですし、ライヴ・パフォーマンスにも定評のあるバンドなだけに、来日公演の実現もして欲しいものです。



































 

 
f:id:killer_yoshikage:20160603152811j:image