METZに続く、SUB POPの核弾頭
『Neo』
SO PITTED
今年1月にリリースされた、米ワシントン州・ケント出身のパンク・バンド、SO PITTEDのデビュー・アルバムです。
同じワシントン州のシアトルの名門インディー・レーベル『SUB POP』からデビューした男女3人組のバンドで、メンバーはNathan Rodrigues(Vo/G/Dr)、Liam Downey(Dr/G/Vo)、Jeannine Kowler(G - through a bass amp)。
前述のメンバーの担当楽器を見てもらうとお分かりいただけると思いますが、基本的にベースレスのバンドで、ベースの音はJeannineがギターでベースのアンプを通して弾いていて、基本的にNathanがリード・ヴォーカル&ギター、Liamがドラムを担当しています。
METZの登場以降、『SUB POP』はSTRANGE WILDS、DEAF WISHと言ったオルタナ・バンドを世に送りだしましたが、SO PITTEDはMETZ級のインパクトを持ったバンドだとはっきり断言しても差し支えないと思います。
『SUB POP』というブランド名から"グランジ"というキーワードを、このバンドに付けたがる音楽メディアも少なくないですが、実際のこのデビュー・アルバムで聴けるサウンドは、ハードコア・パンク、ポストコア、ポスト・パンクというジャンクでアグレッシブなサウンドです。
彼等は影響を受けたバンドとして、MUDHONEYとMELVINSを挙げていますが、『Superfuzz Bigmuff』や89年発表のセルフ・タイトルのアルバム辺りの初期の荒々しいサウンドを標榜していたMUDHONEYのサウンドと共通する部分はあるかもしれません。
しかし、ひたすらノイジーであるにも関わらず楽曲の構造はしっかりしていて、ヴォーカルもひたすら咆哮するのではなく、曲によって歌い方を使い分けていて、さすがに名門『SUB POP』のバンドだと思います。
このバンドがシアトルのあるワシントン州出身で、しかも所属レーベルがあの90年代のグランジ・ムーヴメントを思わせる『SUB POP』ゆえ、グランジ・バンドとして捉えられがちなのは否めませんが、2016年の今年がパンク40周年を迎えたこともあって、新世代のパンク・バンドとして捉える音楽メディアもあります。
パンク40周年と言っても、2010年代のパンクの概念は、70年代のUKパンクやNYパンクとは大きく変わってきてはいますが、このバンドにはパンクの歴史そのものが遺伝子として備わっている気がします。
鳴らされているギターのノイズ、パンキッシュなヴォーカル、ポスト・パンク的な細かいサウンド処理、インダストリアルなビート、彼等が何気に鳴らしている音そのものが、彼等自身が意識しなくてもパンクとして鳴らされているのです。
このアルバムは間違いなく、METZよりもジャンクで、SLAVESよりもダーティー。METZやICEAGEのデビュー・アルバム同様に2010年代のパンク史に残るデビュー・アルバムだと私は思います。
願わくは今年のMETZのように来日公演を実現して欲しいところです。来日公演が実現すれば、この国のオルタナ好きの心も新世代のパンクスの心もきっと捕らえるはずですから…
[