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吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

20年ぶりに復刻した奇跡の名盤



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『For How Much Longer Do We Tolerate The Mass Murder?』








 1996年にリイシュー盤がリリースされて以降、20年の長きに渡ってリイシュー発売がなく入手困難の状態にすらなっていた、今月に発売になったばかりの1980年発表のTHE POP GROUPの2ndアルバムのリイシュー盤で、メンバー自らがリマスターも施しています。
 70年代後半以降のパンク/ポスト・パンクを通過している世代の方は、デビュー・アルバム『Y』と共に必携している方も多いことかと思いますが、B級バンドはともかく、ポスト・パンク史の歴史を語るうえで欠かせないレジェンド・ポスト・パンク・バンドの2枚の名盤のうちの1枚が永らく入手困難な状態だったのは、歯痒い状態だったと言わざるを得ません。
 しかし、2010年に再結成後にはこうした状況も徐々に改善され、2014年には3rdアルバム『We are Time』とレア・トラック等を収めた編集盤『Cabinet of Curiosities』がリイシュー発売。
 2015年には35年ぶりのスタジオ・アルバム『Citizen Zombie』をリリースして、2度の来日公演も実現させる等、ここ数年、ファンにとっては嬉しい状況が続いたのですが、来日公演には間に合わなかったものの、遂に今年、2ndアルバムのリイシュー盤の発売を実現出来たのです。
 2ndアルバムは『Y』と並ぶポスト・パンクの重要な名盤としてだけでなく、1981年のバンド解散以降、後に派生していった、PIGBAG、RIP RIG & PANICMAXIMUM JOY、そしてMark Stewart + Maffiaを含むマーク・スチュワートのソロ活動と、後のメンバーの一連のバンド活動の道標ともなる重要な意味を持つアルバムでもあるので、この2ndアルバムを聴かずして後の派生バンドを語れないと断言しても差し支えありません。
 そう言った意味では、このリイシュー盤発売は、THE POP GROUPの長い歴史の間に欠けていた最重要なピースが無事、埋まったことも意味するのです。
 そして、このリイシュー盤発売に際して、最も大きく変わった点は、アルバム3曲目に収録されていた「One Out of Many」に代えて、新たに1979年にシングルとして発売していた「We are All Prostitutes」に差し替えれたことです。
 先にシングルとしてリリースしていた「We are All Prostitutes」が、何かしらの事情でマスタリングが間に合わず、2ndアルバムに収録出来ず、止むを得ず「One Out of Many」を収録していたそうです。
 この差し替えにはオールド・ファンには賛否両論あるかもしれませんが、元々のメンバーの構想が「We  are All Prostitutes」が収録される形になるべきものだったので、リイシュー盤発売に際して、メンバー自身も本来あるべきアルバムの形にしたかったのだと思います。
 メンバーの意図した通り、ポエトリー・リーディング形式の小品的な楽曲の「One Out of Many」よりも、「We are All Prostitutes」を収録した方が、他のアルバムのアナーキーなファンク・チューン群の中に違和感なく溶け込んで、アルバム全体のダイナミズムが失われずに一気に聴けるので、この差し替えによって名盤としての価値も更に上がったと思います。
 ファンク、フリー・ジャズ、レゲエ、そしてパンクとあらゆる音楽をぶち込んで、破壊的でアヴァンギャルドな作品のデビュー・アルバム『Y』に対して、贅肉を削ぎ落としてファンキーでタイトになった分、アルバム全体で一気に畳み掛けるようなダイナミズムを感じさせるのが、2ndの本作だと思います。
 ヘヴィーにうねる強靭なファンク・ビートがアルバム全体の核にもなっていますが、このファンク・ビートは後に派生していったバンド群の重要なサウンドの核にもなっていき、この派生バンド群が後のUKポスト・パンク・シーンを語るうえで重要なことを考えると、このアルバムの歴史的な意義は『Y』以上と言えるかもしれません。
 そしてサウンド以上に過激とも言えるのが、マーク・スチュワートが歌っていると言うよりは、もはや咆哮していると言った方が良い痛烈なメッセージ性の強い歌詞だと思います。
 捕虜虐待や大量殺戮、当時のサッチャー政権への異議等、当時の英国/世界の状況に対する怒りを唱えるマークのヴォーカルは、悠長にメロディーを歌っている場合ではないと言わんばかりに叫び狂っています。
 このアルバム・ジャケットの記事コラージュも、このアルバムを語るうえで重要な意味を持ちます。この記事コラージュの内容に関してはこのブログでは敢えて触れませんが、この記事コラージュの内容はこのリイシュー盤の日本盤ライナー・ノーツに掲載されていますので、ぜひ読んでいただきたいと思います。
 このアルバムの歌詞の内容、そして、記事コラージュの意味を知るにつけ、時代こそ35年経過しているものの、世界中の病むべき状態は少しも改善されていないと悟る虚しさを覚えるかもしれません。
 しかし、だからこそ、このアルバムのリイシュー盤発売の意味も同時に必然とも思え、マーク・スチュワートの咆哮が現在も必要とされているのかもしれません。






















 
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