吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

5月にも単独来日公演決定♪


f:id:killer_yoshikage:20160203201729j:image
『Curve of the Earth』






 昨年の『HOSTESS CLUB WEEKENDER』でも、アルバム発売前にも関わらずアルバム全曲再現ライヴで披露された、MYSTERY JETSが先月リリースしたばかりの新作。
 MYSTERY JETSテムズ川の中洲の島、イール・パイ・アイランドを拠点に活動するバンドで、50代の父親と20代の息子が共に在籍する珍しさも手伝って、2000年代半ばのデビュー当時、大きな話題になりましたが、同時期にデビューした、LARRIKIN LOVE、THE HOLLOWAYSと共に、テムズ・ビート・バンドと呼ばれ、2000年代半ばの英国音楽シーンを語るうえで欠かせないバンドと言えると思います。
 LARRIKIN LOVEは2007年にデビュー・アルバム『The Freedom Spark』をリリースして高い評価を受けたものの、結成後、わずか2年で解散。2004年に結成したTHE HOLLOWAYSはスタジオ・アルバム3枚とEP1枚を残して、2011年に解散といずれも英国の音楽メディアに高い評価を受けたものの短命に終わり、2000年代半ばのテムズ・ビート・バンドと呼ばれたバンドで、2016年の現在まで活動しているバンドは、MYSTERY JETSのみとなってしまいました。
 2006年にデビュー・アルバム『Making Dens』をリリースして以来、10年経った本作で5枚目のスタジオ・アルバム・リリースになりますが、昨年の『HOSTESS CLUB WEEKENDER』出演を機会にして、2000年代半ばのテムズ・ビート・バンドに夢中になっていた方には、このアルバムは楽しみな一枚に違いありません。
 前作『Radlands』制作時にベーシストのカイ・フィッシュが脱退し、後任にはジャック・フラナガンが加入。前作で名門『Rough Trade』との契約を解消して、新たに『Caroline International』と契約を結び、バンドにとっても新たなステージに立ったと言えるのが本作だと思います。
 宇宙と交信しているかのようなスペイシーなギター・サウンドで始まる、本作のオープニングを飾る「Telomere」の壮大なコズミック・ナンバーは、亡きデヴィッド・ボウイの「Space Oddity」を思わせるものになっていて、このナンバーを最初から聴いただけで、このアルバムに対する期待感を大きく感じるはずです。
 MYSTERY JETSのファンの方はご存知のことだと思いますが、フロントマンのブレイン・ハリソンは、父ヘンリーの影響で60~70年代のプログレッシブ・ロックに幼い頃から親しんできた環境もあって、デビュー・アルバムから何かしらの形で、そのプログレッシブ・ロックの影響を感じさせる曲もありました。
 本作は今までに比べて、YESやPINK FLOYDを感じさせるプログレッシブ・ロック色濃厚なアルバムには違いありませんが、エレクロニック・サウンドも随所に取り入れた2000年代以降のバンドらしいサウンドにもなっていて、単なる回顧主義的なプログレッシブ・ロックになっていないところも、MYSTERY JETSらしさではないかと思います。
 ミキシングにルーシー・ローズやBANKSを手掛けた経験のあるコンテンポラリー寄りのリッチ・クーパーを起用したことで、プログレッシブ・ロックと未来志向のポップなサウンドが可能になったことも、この未来志向のコズミックなサウンドに繋がっているのだと思います。
 発売前からアルバム・ジャケットを見て、宇宙を連想するものになることは、あらかじめ予想出来ましたが、歌詞の面でも明らかに宇宙をテーマにした近未来志向のトータル・コンセプト・アルバムであることが充分に伺え、昨年の『HOSTESS CLUB WEEKENDER』での公演で本作の全曲再現ライヴにこだわったのは、このアルバムの壮大なコンセプトを重視してのものだったのだと思います。
 YESやPINK FLOYDよりも、むしろデヴィッド・ボウイの『Space Oddity』や『Diamond Dogs』に例える方が、個人的には近い気がします。
 テムズ川中洲から宇宙へ発信される壮大なコズミック絵巻…と言えば大仰に聞こえてしまうかもしれませんが、デビューから10年以上経ったバンドはテムズ・ビート・バンドという小さなカテゴリーから、壮大なスケールのバンドに大きな成長を遂げたと言うことでしょう。
 2010年代という時代に入って、個人的にこうした壮大なトータル・コンセプト・アルバムに出会う機会は皆無に近かったと思いますが、デジタル配信中心になりつつもアナログ・レコードが売れるようになった、2010年代以降に相応しいアルバムのような気がします。
 もちろん、一曲一曲として聴くよりも、レコード針を落として裏表ひっくり返しながら、壮大な音宇宙を堪能するのがベストのアルバムだと思います。
 ある人にとっては『Space Oddity』を、ある人にとっては『Dark Side of the Moon』を思い浮かべるかもしれませんが、10年前にテムズ・ビート・バンドに夢中になっていた方にも、是非とも耳を傾けてもらいたいアルバムです。






















MYSTERY JETS来日公演詳細(↓)
















f:id:killer_yoshikage:20160203201849j:image