吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

TELEVISION Live in Japan (1/17)




f:id:killer_yoshikage:20160118164822j:image




 
 RAMONESやパティ・スミスと並んで、70年代ニューヨーク・パンクの伝説と言えるTELEVISIONのライヴを、下北沢GARDENという小さなライヴ・ハウスで観られただけでも、この来日公演に行った価値は充分過ぎるくらいあるかもしれません。
 2000年代以降、バンドの名盤の全曲再現ライヴというのは、世界中で頻繁に行われていますが、TELEVISIONの場合、3枚のスタジオ・アルバムをリリースしていますが、中途半端に2ndの『Adventure』や、セルフ・タイトルの3rdアルバムの曲を挿入するよりも、ニューヨーク・パンク史上最も重要なアルバムの1枚の『Marquee Moon』を全曲聴きたいファンも少なくないだけに、他のバンドの全曲再現ライヴよりも価値の高い全曲再現ライヴだと思います。
 主催した日本のレコード店の「Vynal Japan」のFacebookの情報によると、メンバーは日本に到着すると、今回の来日公演が始まる前に東京のスタジオで念入りにリハーサルを行ったようで(普段、メンバーはライヴ前にリハーサルをやることはないそうです)、今回の来日公演に相当、力を入れてくれていたみたいです。
 ただし、メンバーの意向により、ライヴ中の写真撮影やビデオ撮影は一切禁止ですが、普段、自分のSNSに投稿するためにライヴを観るよりも写真を撮ることに夢中になってしまうファンも多いだけに(私も人のこと言えませんがww)、じっくりライヴを観るのにカメラ/ビデオ禁止令も悪くないのかもしれません(もちろん、この禁止令を破ったファンは会場内には皆無だったと思います)。
 初期のTELEVISIONを支えたギタリストのリチャード・ロイドはもちろん、今回の来日公演には参加していませんが(ロイドは2007年にTELEVISIONを脱退)、長年、トム・ヴァーレインのソロ活動のギタリストを務めてきたジミー・リップが、ロイド脱退後のギタリストとして貢献しているので、今回の来日公演でもヴァーレインをビリー・フィッカやフレッド・スミスと共に支えてくれていたと思います。
 ちなみに今回の公演のファン層はほとんど年輩の方が多かったですが、日曜日の公演開催で普段、仕事で平日に休みが取れない働き盛りの中年会社員にはちょうど良い開催日なのかもしれません。






f:id:killer_yoshikage:20160118164755j:image






 18時開演の定刻を10分過ぎた辺りで、待ちに待ったメンバーが登場して大きな歓声が沸くと、ヴァーレインとリップがチューニングを兼ねて軽くセッションしてから、『Marquee Moon』のオープニング曲でもある「See No Evil」でスタートしました。
 メンバーもトム・ヴァーレインを始め、60を越えていますが、全員、若い頃の体型を維持しているせいか、若い頃の写真の面影を残していて理想的な年の取り方をしていると思います。
 ヴァーレインは繊細で神経質な印象がありましたが、ステージ上の彼は本当に終始、上機嫌で、途中でチューニングが狂っても冗談を言いながら、素早くチューニングを調整しながら、演奏を台なしにしないように務めていましたし、ステージ上のライトが熱くてバテバテでも、それを冗談のネタにする等、何か小さなトラブルがあっても、楽しそうにライヴをこなしていました。
 全曲再現ライヴとは言っても、昨年の『SUMMER SONIC 2015』のMANIC STREET PREACHERSの『Holy Bible』全曲再現ライブのようにアルバムの曲順に従って演奏するのではなく、曲順は組み替えて、当日にならないと客も分からないようにはなっているので、MANICSの全曲再現ライヴに物足りなさを感じていた私にとっても充分、楽しめる全曲再現ライヴになったと思います。
 TELEVISIONの曲はリズムもコードもシンプルですが、この4人が演奏してこそ生まれ得るアンサンブルこそ、TELEVISIONの最大の魅力だと思うのですが、ライヴはそのTELEVISIONの真価がフルに発揮出来る場なのだとライヴを観て、初めて実感出来ます。
 ヴァーレインはヴォーカルの方こそ、アルバムで聴けた甲高い歌い方はしていませんでしたが、声に優しさと深みが増しているように思えました。しかし、何と言っても、TELEVISION最大の魅力と言うか、真骨頂はヴァーレインのヴォーカルよりも、彼のギター・トーンこそがTELEVISIONそのものなのだと、ライヴを観て痛感しました。
 優しさも孤独も哀愁も感じさせる、トム・ヴァーレインしか鳴らさないギター・トーンの音色は、TELEVISIONを愛する者なら、このギター・トーンを生のライヴで聴いただけで、ライヴを観て良かったと思うに違いありません。
 長年、ヴァーレインと共に音楽活動を共にしてきたジミー・リップと共に、リズム・ギターもギター・ソロも分け合って演奏していましたが、ヴァーレインの美しいギター・プレイには本当に鳥肌が立ちました。
 終始、穏やかだったヴァーレインもあの美しくも優しさを感じるギター・トーンを鳴らしている時には何かが憑依したかのような凄みを感じさせましたし、トム・ヴァーレイン最大の魅力はあのギター・トーンあってのものだと断言しても良いのかもしれません。
 ライヴで演奏した曲の中で最も圧倒されたのは何と言ってもアルバム・タイトル曲の「Marquee Moon」で、アルバム曲中でも10分近い曲で充分圧倒される曲ですが、この曲もライヴでバンドが最も凄みを感じさせてくれるナンバーです。
 「Marquee Moon」は、TELEVISIONというバンドがジャム・バンドとしての側面を最大限に発揮した曲ですが、この日、おそらく20分近い演奏をしたと思います。バンドとしての真骨頂はおそらく、この一曲に凝縮されていると言っても決して過言ではなく、この曲だけでTELEVISIONというバンドの凄さを充分、思い知った気がします。
 今回のTELEVISIONの公演はほぼ『Marquee Moon』全曲のみのライヴでしたが、中途半端に長時間の演奏をされるより、かえって濃厚なライヴを楽しめたと思います。
 トム・ヴァーレインを始め、メンバーが本当に楽しそうに、なおかつ高い緊張感で演奏してくれたのは何よりも嬉しかったですし、私の一生の思い出になるライヴだったと思います。
 







 
f:id:killer_yoshikage:20160118164729j:image