吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

16年ぶりの待望の復活作



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『Find What You Love and Let It Kill You』
HURRICANE #1





 RIDE再結成の為に、アンディ・ベルは参加していませんが、2014年に再結成したHURRICANE #1が、昨年12月にリリースした、16年ぶりの新作です。
 HURRICANE #1は、RIDE解散後にアンディ・ベルが結成したバンドですが、アンディが後にOASISとBEADY EYEでも活動していたことから、アンディのキャリアの中では、RIDEとOASIS/BEADY EYEの狭間のバンドという印象が拭いきれず、特に日本ではそれほど人気の高いバンドではないかもしれません。
 HURRICANE #1解散後、ヴォーカリストのアレックス・ロウは、ソロに転向して音楽活動を継続して、アラン・マッギーの新レーベル「359 Music」から、GUN CLUB CEMETRY名義でもアルバムをリリースしたりしていました。
 一時は、アレックスは癌を発症したりもしましたが、見事に克服して、RIDE時代の名門レーベル「Creation Records」、そして、GUN CLUB CEMETRY時代のレーベル「359 Music」での恩師でもある、アラン・マッギーの助力で、2014年に、HURRICANE #1を再結成しました。
 再結成HURRICANE #1は、アレックス・ロウ以外のメンバーを全て、入れ替えて、ギターにはブラジル人のカール・マリアーニ、ベースにはカールの兄弟のルーカス・マリアーニ、ドラムにはクリス・キャンベルと、アレックス中心のバンドになっています。
 アレックスは、癌で入院中に、このアルバムの曲の大半を書き、癌という恐ろしい病気を反映したダークな曲ではなく、ハッピーな生きている喜びに満ちた曲を意識して書いたそうです。
 サウンドの方も、1997年にリリースされたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムの路線に近い、シンプルながらアレックスのエモーショナルなヴォーカルを活かした楽曲が多く、オーガニックでベーシックなサウンドに立ち返り、ファンシーではなく、ロックンロールのマナーの中で演奏される良い曲を持ったアルバムを意識して制作したそうです。
 90年代当時のHURRICANE #1は、2ndアルバム『Only the Strongest Will Survive』ではダンサブルなグルーヴを取り入れているものの、OASIS直系の"遅れてきたブリット・ポップ"に聴こえなくもなかったですが、シンプルでストロングなメロディーの、HURRICANE #1のサウンドは、むしろ今の時代にこそ響くのかもしれません。
 元メンバーのアンディ・ベルのRIDEはシュゲイザーのバンドとして、再結成後も未だに高い人気を誇っていますが、ムーヴメントとは関係なく、2016年の現在でも雨後のタケノコの如く、未だにシュゲイザー・バンドが量産されている状態での再結成は、正直、新鮮味がないように個人的には感じたりもします。
 もっとも、この再結成HURRICANE #1も、16年ぶりとは言え、アレックス・ロウのソロ・バンドと言えなくもないのですが、このシンプル過ぎる正統的UKロックのサウンドは、若いバンドのフォロワーが少ない分、かえって(今の時代には)新鮮かもしれません。
 かつて、OASISの「Live Forever」を聴いて、多くの音楽リスナーが生きる喜びを感じたように、このアルバムでも癌を克服したアレックスの生きる喜びを感じることが出来るはずです。
 決して派手なサウンドのアルバムではないですが、エモーショナルなアレックス・ロウのエモーショナルで暖かみを感じるヴォーカルが、シンプル過ぎるサウンドに乱反射する光のように輝いている気が私にはします。














 
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