デニッシュ・ノスタルジック・ウォール・オブ・サウンド
『Chain Gang of Love』
THERAVEONETTES
2001年にスーン・ローズ・ワグナーとシャリン・フーの男女デュオが、デンマーク・コペンハーゲン・コペンハーゲンで結成したオルタナ・バンド、THE RAVEONETTESが2003年にリリースしたデビュー・アルバム。
THE JESUS MARY CHAINばりのウォール・オブ・サウンドと、THE EVERLY BROTHERSばりの、50~60年代を思わせるノスタルジックなメロディーが印象に残るオルタナ・デュオですが、ウォール・オブ・サウンドのTHE VASELINESという形容の方が彼等のサウンドを表現するのに適しているかもしれません。
デビュー・フル・アルバムの本作リリース前に、2003年にデビューEP『Whip It On』をリリースした際、バンドは非常にユニークなドグマ(教義)を掲げました。
①全曲、同じキーで録音する。
②3コードしか使わない。
③曲は全て3分以内。
④ハイハットやライト・シンバルは使わない。
自らを規制した、この4つのルールは裏を返せば、歴史を重ねるごとに音楽そのものが複雑化していくロック・シーンに対する挑戦や反逆かもしれません。
ちなみに、『Whip It On』では全てB♭マイナー、本作では全てB♭メジャーに見事に統一されていますが、制約を課しているにも関わらず、多彩な楽曲が書ける才能は見事としか言いようがありません。
彼等がデビューした当時の2000年代始めはの英米では、THE STROKES、THE VINES、THE WHITE STRIPES、THE LIBERTINES等が台頭し、ガレージ・リヴァイバルやロックンロール・リヴァイバルと呼ばれたシンプルなロック・サウンドへ立ち返った時代。
二人が共通してフェイヴァリットとして挙げているのが、バディ・ホリーやリッチー・バレンス等の50年代のオリジネイター、THE RONETTES、THE COOKIES等の60年代のガールズ・グループ、そして、SONIC YOUTH、THE CRAMPS、SUICIDEまで実に多岐に渡る影響源が、THE RAVEONETTESのサウンドを構築しているのだと思います。
もちろん、二人とも幼い頃から膨大な音楽を吸収してきているのですが、特にスーン・ローズ・ワグナーはライブラリーが出来るほどのレコード・コレクターで、かなりの音楽フリークらしいです。
ちなみに、次作の『Pretty in Black』も映画のチラシを思わせるジャケットになっていて、彼等のアートにもこだわりが感じられます。
1990年代のDIZZY MIZZ LIZZY、2000年代のMEWほどの知名度や人気は日本ではありませんが、デンマークのバンドでは日本のリスナーには一番親しみやすいバンドだと思うので、このバンドを知らない方には、是非、聴いていただきたいバンドです。