吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

戦争(WAR)は終結した… そして美しき春(Var)が…



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『No One Dances Quite Like My Brothers』
Var




 2014年に東京公演で解散した、ICEAGEのフロントマン、エリアス・ベンダー・ロネンフェルトと元SEXDROME/現LUST FOR YOUTHのメンバー、ローク・ラベックのコペンハーゲン・パンク・シーンきってのカリスマ二人を中心に結成されたインダストリアル/ニュー・ウェーヴ・バンド、Varが2013年にリリースしたデビュー・アルバムにしてラスト・アルバム。
 エリアスのICEAGEと、ロークのSEXDROMEはコペンハーゲン・パンク・シーンで多大な影響力を持つバンド(この事に関しては私の過去のブログで何度か触れてもいますが…)。
 このコペンハーゲン・パンク・シーンきってのカリスマ・バンドにそれぞれ在籍しているものの、元々は二人共、同じ学校にいたそうです。
 最初は二人共、それほど仲は良くなかったようですが、所詮、似たような性格の二人が意気投合するのにそう時間がかかることもなく、二人は学校の休み時間を利用して、デビュー・アルバム『More Days』を完成させたそうです。
 この作品は、2010年にロークと、アート・マガジン『MANDATORY』の編集長、Christian Stadsgaardの二人が主催するレーベル"Posh Isolation"からカセットで100本のみリリースされました。
 この"Posh Isolation"というレーベルは、コペンハーゲンのノイズ/インダストリアル系を中心に扱っているレーベルですが、コペンハーゲンアンダーグラウンド・シーンを支える基地局的な役割を担っている、重要なレーベルでもあります。
 日本のBIG LOVEからも日本盤がリリースされている本作では、LOWERのKristian Emdal、ハードコア・バンドのREDFLESHのLukas Hojlandの二人も加わり、4人編成のバンドになっています。
 最初は英語名の"WAR"というバンド名でしたが、このアルバムからは"Var"(意味は"春。読み方はそのまま"WAR")に変更しています。
 エクスペリメンタル、ノイズ、インダストリアルの要素が色濃いアルバムですが、「The World Fell」のようにエレクトリック・ポップ風の曲もあります。
 サウンド的には、DEATH IN JUNEやTHROBBING GRISTLEと言ったインダストリアルやニュー・ウェーヴへの傾倒を感じさせますが、この作品の根底にある価値感、世界感はジョルジュ・バタイユの過激な性表現や、三島由紀夫男根主義に共通するラディカルな視点がモチーフになっているそうです。
 一聴するだけでは無機質なインダストリアル・サウンドに聴こえるかもしれませんが、刹那で性倒錯的な美しいアート指向が根底にあるのを理解してこそ、このアルバムの真の魅力を理解出来るのだと思います。
 エリアスとロークというコペンハーゲン・シーンきっての美男子の性倒錯的な世界観は、ICEAGEやSEXDROMEを好む男性ロック・ファンより、腐女子にでも好まれそうな世界観かもしれませんが (苦笑)、アブノーマルな危険な香りのするインダストリアル・ビートは、性倒錯者でなくとも(笑)惹かれるはずです。
 このバンドは解散してしまって、これからアルバムでもライヴでも体験出来なくなったのは非常に残念ですが、このバンドのダークな側面は、エリアスのICEAGEやMARCHING CHURCH、ロークのLUST FOR YOUTHにも根付いていると思います。






































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