吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

かつて、サマソニで消化器ぶちまけたバンドです(笑)



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『All Things Under Heaven』
THE ICARUS LINE





 1998年に米カリフォルニア州・ロサンゼルスで結成されたオルタナ・バンド、THE ICARUS LINEが今月リリースしたばかりの通算8枚目の新作。
 『SUMMER SONIC 2002』出演の際、当時のバンドのギタリストだったアーロン・ノースがステージで消化器をぶちまけ、招聘元のCREATIVEMANから厳しいお咎めを受けたことで、日本でも知名度が高まりましたが、そのアーロン・ノースが、後にNINE INCH NAILSに加入して活躍したことで、アーロン・ノースがかつて所属したバンドとして、このバンドをご存知の方もいるかもしれません。
 2004年に彼等の代表作とも言える『Penance Soiree』をリリース後、単独での来日公演も行いましたが、その後、コンスタントにアルバムをリリースしているにも関わらず、THE ICARUS LINEの名前を、少なくとも日本で聞く機会はめっきり少なくなりました。
 かく言う、私も『Penance Soiree』以来、実に11年ぶりに、THE ICARUS LINEの新作を手にしたわけですが、急に彼等の新作を追うきっかけになったのは、私が過去にブログにも書いた、デンマークコペンハーゲンのパンク・バンド・、ICEAGEがきっかけで再び、THE ICARUS LINEの『Penance Soiree』以降の新作を聴きたいと思っていたところ、THE ICARUS LINEが今月に新作をリリースすることを知り、購入したわけです。
 私自身は近年、すっかりICEAGEにハマっているのですが、もちろん、デンマークのバンドであるICEAGEと、LAのバンドのTHE ICARUS LINEに直接的な接点はありません。
 しかし、ニック・ケイヴの継承者と称される、ICEAGEのフロントマンのエリアス・ベンダー・ロネンフェルトのヴォーカルを聴いた時、ニック・ケイヴよりも、むしろ、THE ICARUS LINEのジョー・カーダモンの面影を感じたのです。
 ICEAGEをすっかり気に入った理由の一つは、(私自身は意識していなかったですが)きっと、10年以上前に夢中になって聴いていた、THE ICARUS LINEの存在があったに違いありません。
 思わぬことで、THE ICARUS LINEをかなりの時を経て聴くことになりましたが、現在ではアーロン・ノースが抜け、ほぼ、ジョー・カーダモンのバンドと言っても良いバンドになっていますが、むしろ、10年前よりも深みも凄みも遥かに増しています。
 10年前のバンドのサウンドを暗黒ガレージに例えるとするなら、本作は、あの、Nick Cave & BAD SEEDS並の漆黒ブルースと言っても過言ではないと思います。
 サックスやヴァイオリン等の導入もありますが、ジョー・カーダモンの心の中の闇を吐き出すかのような、濃厚な暗黒ブルースは最初から最後まで聴き手の緊張感を高めます。
 おそらくはカーダモンの方が、ニック・ケイヴの継承者と称されている、エリアス・ベンダー・ロネンフェルトよりも凄みやカリスマ性で上回っているかもしれません。
 私が聴かなかった10年の間に、カーダモンとTHE ICARUS LINEはどんどん深みを増した、漆黒ブルース路線に向かって走っていたのでしょう。
 1998年以降、2000年代、そして2010年代半ばを走り抜いてきたバンドですが、2000年代のガレージ・リヴァイバルの中でも、周りに合わせることなく、常に異形のバンドであり続けたバンド。
 ブルース志向のガレージ・バンドであった、THE WHITE STRIPESがメイン・ストリームな存在であり続けたのに対して、THE ICARUS LINEは陽の当たる場所を避けるかのように、暗黒道を突き進んだバンドだと思います。
 とにかく、初期のBAD SEEDS時代のニック・ケイヴの魂が憑依したようなカーダモンのヴォーカルは圧巻。
 あの消化器事件(笑)から、2004年の単独公演来日時の若き日のカーダモンも、只者とは思えないカリスマ性や存在感がありましたが、その存在感を維持するどころか、ますます凄みを増しているところも感激させられます。
 ICEAGEを気に入っている方、あるいはBAD SEEDS時代のニック・ケイヴの信奉者の方、そして、かつて、THE ICARUS LINEを夢中になって聴いていた方に是非、オススメしたいアルバムです。


















 




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