ダークな酩酊感の大人のおもちゃ
『Join the Dots』
TOY
2010年に結成されたロンドンを拠点に活動する男女5人組バンド、TOYが2013年に発表した2ndアルバム。
このバンドのメンバーは、Tom Dougall(Vo/G)、Dominic O'dair(G)、Maxim Barron(B/Vo)、Charlie Salvidge(Dr/Vo)、Alejandra Diez(Synth)。
Tom、Dominic、Maximの三人は、2007年~2009年の間に、かつてRAZORLIGHTと共に人気を誇っていたバンド、Joe Lean and the Jing Jang Jongのメンバーでした。
THE HORRORSのスパイダー・ウェッブも「昨年登場したバンドで、最もエキサイティングなバンド。2012年で最も気に入ったバンド。」と絶賛し、THE HORRORSのUKツアーのサポート・アクトに起用されました。
TRAVISは自身の楽曲「Moving」で「今日は高速道路でTOYを聴かなきゃ」と歌詞の中で引用するほど、このバンドを気に入っていて、英国の音楽メディアだけでなく、英国内のアーティストにも注目を集めているバンドです。
もちろん、英国内のメディアにも高評価されているバンドで、2012年に発表されたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムはNMEで10点中8点と、かなり注目を集めています。
TEMPLESやTHE WYTCHESで知られている、"Heavenly Recordings"から2011年にデビュー・シングル「Left Myself Behind」を限定1000枚でリリースしましたが、1日で完売。翌年に再リリースされています。
イアン・カーティスを思わせる、TomDougallのダウナーなヴォーカルが印象に残る、この曲のダークな美意識を感じさせるMVを観ていただくと、このバンドの魅力が分かると思います。
後にサポート・アクトを務めることになる、THE HORRORSにも通じるゴシックな感性のサイケデリックは、このバンドの魅力を体現していると思います。
7分を超える、この「Left Myself Behind」の世界観に、どれだけハマれるかで、このバンドを好きになれるかどうかが別れると思います。
英国内で、このバンドのサウンドは「クラウト・ロック、シュゲイザー、サイケデリック、コズミック、ポスト・パンク」という枠で分類し、MY BLOODY VALENTINE、STEREOLAB、NEU!辺りに例えて、このバンドを評価することが多い気がします。
確かに、前述のバンドの影響を感じさせるのは否定出来ませんが、シュゲイザーやサイケデリックをバンド・サウンドの基本にしながらも、イアン・カーティスから脈々と流れる"ダークな美意識"が、このバンドの最大の魅力だと思います。
2010年代以降のバンドだと、SAVAGES辺りと比較するのも面白いかもしれませんが、やはり、このバンドのサウンドは『Primary Colours』以降のTHE HORRORS辺りが比較対象になると思います。
本作には収録されていませんが、前述のシングル「Left Myself Behind」は、THE HORRORSの名曲「sea within a sea」に匹敵する名曲ですし、デビュー・アルバムにしても、本作にしても、サウンド的には明らかに、THE HORRORSの系譜だと思います。
本作では実験性も打ち出して、まだまだ彼等の世界観は完成の域まで達していないのかもしれませんが、逆に底知れぬ可能性を感じさせます。
フロントマンのTom Dougallは、音楽性こそ違いますが、ICEAGEのエリアス・ベンダー・ロネンフェルトに匹敵する、ダークな感性を持つカリスマ性を持っていて、サウンド以上にバンドの存在感にも大きな魅力を感じます。
近年は、世界的に有名なインディー・メディア、ピッチフォークの台頭で似たり寄ったりのサイケデリック・バンドが氾濫していますが、このバンドのようなダークな美意識を持つバンドにこそ、未来の音楽シーンを引っ張っていってもらいたいと思っています。