吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

(祝) ポール・ドレイパー・ソロ活動開始!



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『Six』



 1995年に結成された、英チェスター出身のバンド、MANSUNが1998年にリリースした2ndアルバム。
 このバンドは、ブリット・ポップ終焉時に登場してきたのもあって、"遅れてきたブリット・ポップ"とか"ブリット・ポップの徒花"とか言われてきましたが、ニュー・ウェーブ、オルタナティヴ、プログレ等を取り入れ、デヴィッド・ボウイの美学を取り入れた独創的なサウンドを築いたバンドです。
 1997年にリリースしたデビュー・アルバム『Attack of the Grey Lantern』が全英初登場1位の成功を収めるものの、本作を制作するうえでメンバー同士で議論を重ねるものの息詰まってしまい、フロント・マンのポール・ドレイパーが思い付いたのが、A・A・ミルンの『クマのプーさん』、マルキ・ド・サドの『ソドム百二十日、あるいは淫蕩学校』、L・ロン・ハバードの『ダイアネティック』といった書物を基にした壮大なコンセプト・アルバムの構想でした。特に『クマのプーさん』のコンセプトは、本作で大きなウェイトを占めています。
 本作『Six』のアルバム・タイトルの由来の一つは『クマのプーさん』シリーズの『わたしたちは6つ』という説があるのです。
 実は唐突ですが、ここにはMANSUNとタオイズム = 老壮思想(一般的にタオイズムは道教と訳されますが、英国では道教の始祖・老壮思想を指すそうです)との出会いがあったのだそうです。
 その出会いのきっかけとなったのが『クマのプーさん』に関連づけて、タオイズムを分かりやすく説明した『タオのプーさん』という本で、ドレイパーはこの本から様々な示唆を受けたそうです。
 ちなみに、アルバム中の曲でもっとも『クマのプーさん』の示唆を体言している曲は「Shotgun」。タイトル通り、物騒な曲ではありますが、儒教、仏教、道教の各教徒が酢を飲んでいる、紀元前5世紀の中国の絵画『酢を味わうもの』にインスパイアされて書かれた曲です。
 本作はデビュー・アルバムに比べて、7~8分を余裕で超える大作曲を多く含む、プログレ色の濃い複雑怪奇な実験的な作品として、難色を示すファンも少なくなかった、前衛的な作品には違いありません。
 デビュー・アルバムが初登場1位だったにも関わらず、本作はアルバム・タイトル通り、全英6位とチャート・アクションは今ひとつでした。
 歌詞も、前述のプーさん、サド公爵として知られるマルキ・ド・サド、SF作家のL・ロン・ハバードと、コンセプト源になっている書物の特異
性が強いためか、歌詞はグロテスクだったり、惨めだったりと、決して明るい内容とは言い難いです。
 しかし、コンセプト性が強くプログレッシブなアルバムにも関わらず、サウンドはベルリン3部作時代のデヴィッド・ボウイの刹那な美学を感じさせ、RADIOHEADの『OK Computer』辺りを比較対象にしても差し支えないくらいの誉れ高き傑作に仕上がっていると断言出来ます。
 プログレッシブなアルバムではありますが、サウンドのアレンジそのものは至ってシンプルで、ドミニク・チャドの荒々しいギター・プレイは、ジギー・スターダスト時代のデヴィッド・ボウイの"SPIDERS FROM MARS"のギタリスト、ミック・ロンソンを彷彿させ、本作で大きな存在感を放っています。
 複雑怪奇な内容にも関わらず、刹那で美しいコンセプト・アルバムでもある本作は、当時こそブリット・ポップ勃興後という事もあり、評価は芳しくなかったですが、このアルバムがせめて、THE STROKES登場以降の2000年代にリリースされていたならば、評価はもっと違うものになっていたかもしれません。
 結局、バンドは2003年に解散しましたが、ポール・ドレイパーが、10年以上の時を経た現在、ソロ・アルバムの制作に取り組み、8月にはアルバムに収録されるであろう新曲も発表する予定だそうです。
 ドミニク・チャドも活動を開始したようで、空白期間はあまりにも長すぎましたが、MANSUNの二人の活動を個人的にも楽しみにしたいと思います。 















































 

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