吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

18年ぶりの新作


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『Sol Invictus』
FAITH NO MORE









 今年の2/17・18日の両日、東京の新木場STUDIO COASTでも来日公演を行いましたが、今月に発売されたばかりの新作は、1997年に発表された『Album of the Year』以来のアルバムになります。
 FNMは1998年に解散し、2009年に再結成しましたが、欧州でのツアーは好評だったものの、北米ツアーでの反応が芳しくないことに業を煮やしたメンバーが再度、解散。
 しかし、2013年に再々結成でワールド・ツアーを敢行して、今年、日本でも来日公演を行ったのは記憶に新しいところです。
 ただ、再結成当初から新作を制作する構想は全くなかったそうです。
 かと言って、ツアーで往年の名曲を披露するだけの再結成レトロ・バンドに甘んじる気もなく、マイ・ペースでソング・ライティングの作業を進めていったそうです。
 すでにライブで披露され、先行シングルとしてリリースされていた、「Superhero」と「Motherfucker」は、彼等が再結成してから完成させた、最初の方の音源だそうです。
 マイク・パットン曰く「ダークでパワフル、エモーショナルでシアトリカル」な、本来のFNMらしいアルバムにしたかったそうで、プロデュースもメンバーのビリー・グールドが務めることになりました。
 この新作に正直、新しいサウンドというか、FNMらしからぬ冒険性は皆無で、良い意味で古くからのFNMファンは安心して聴ける。悪い意味で言えば、新しいサウンドへのチャレンジに乏しいアルバムと言えるかもしれません。
 FNMの旧作品を聴いている方なら、どこかで聴いたようなギター・リフやサウンドが飛び出したりがあるのは否めないところですが(笑)、今までのFNMの歴史を検証して再構築した作品と言えるかもしれません。
 しかし、新しくないからと言って、作品全体の質や楽曲の出来が悪いのかと言えば、そんなことは全くありません。
 彼等は良い楽曲が書けなければ、自信を持って新作をリリースしませんし、彼等が自信を持つだけのクオリティーは充分あります。
 マイク・パットンの個性を全面に打ち出したら、もう少し面白い作品になった気も個人的にしますが、あくまで、パットンも一人のヴォーカリストに徹することで、本来のFNMらしさのある作品になった気がします。
 そもそも、年齢を重ねたベテラン・アーティストや再結成バンドに新しい刺激のある作品を求めるのは難しいところがあるのですが、無理せずに自分達の歴史を再検証する形になった本作の姿勢は刺激に欠けますが響くものがあります。