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吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

オリメンでの16年ぶりの新作


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『The Magic Whip』












 BLURのスタジオ・アルバムとしては12年ぶり、オリジナル・アルバムとしては実に16年ぶりの新作で、2009年にグレアム・コクソンの復帰、再始動のライブ、そして、ハイド・パーク公演のライブ盤のリリースはありましたが、2015年になってからの、いきなりのスタジオ・アルバム発表はファンならずとも驚いたに違いありません。
 なぜ、いきなりの新作リリースなのかの本当の理由は、僕には分かりませんが少なくとも、時を経た現在にリリースすべき理由がバンド・サウンドにあるとするなら、現在にリリースする理由はこのアルバムを聴けば明白になります。
 Gorillazや様々なプロジェクトで、BLURとは違った多彩な音楽嗜好を披露し、アクティブな音楽活動をしてきたデーモン・アルバーン
 BLURで最もオルタナティヴな感性を持ち合わせつつ、どこか捻れた視点で独創的なソロ活動を続けてきたグレアム・コクソン
 この二人がBLURの活動が停止していた期間の様々な音楽活動で培ってきたものを、再びBLURの中で還元し、なおかつ新しいBLURとして再構築したのが、この新作だと思います。
 2009年の再始動から、新作のリリースまで時間はかかりましたが、安易にお互いが妥協することなく、新しいBLURでありながらも、なおかつ、あの時代のBLURらしさも失わない楽曲を作りあげていったのだと思います。
 楽曲の骨格そのものはBLURそのものなのですが、あくまでUKらしいバンドであったBLURが、特にデーモン・アルバーンの様々な活動の音楽性を持ち込んだことで、以前ほどUKらしさへのこだわりが希薄になったのも、大きな変化と言えるかもしれません。
 もちろん、新作にはBLUR然とした楽曲も当然ありますが、楽曲によってはソウル、ゴスペル、ジャズ・ファンクの黒人音楽、アンヴィエント、そして、Gorillaz風のエレクトロニクス等は明らかにデーモンが持ち込んだサウンドですが、グレアムのギター・プレー自体も曲によってはサイケデリックであったり、フォーキーであったりと、デーモンの持ち込んだ(BLURとして)新しいサウンドに合わせた、自身のソロ作品では披露しなかった新しい局面も見せています。
 もう一つ、気になるのはアルバム・ジャケットや、中ジャケの曲名の漢字表記で見られる中国語の漢字表記ですが、元々は本作は2013年に香港の九龍にあるスタジオでレコーディングされた音源が元になっているそうで、その時の香港での滞在がインスピレーションになっているのは間違いなさそうです。
 バンド空白期間中、デーモンとグレアムにとって音楽面で成長するうえで非常に有意義な活動を個々で行ってきたわけですが、この作品を聴く限り、この空白期間があったことは必然だったと実感します。
 もし、彼等が中途半端にバンド活動を続けていたら、この傑作アルバムは生まれなかったと断言出来るからです。
 少なくとも、90年代の"ブリット・ポップ"という死語を、この作品に持ち込む必要は少なくとも、僕には感じません。