吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

フィードバック・ノイズさえあれば他言無用だった


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『Everything Is』








 つい先日、NINE BLACK ALPSが来日公演を行い、僕自身もこのブログに駄文のライブ・レポートを書かせていただきましたが、今回、紹介するアルバムは彼等が2005年に発表したデビュー・アルバムです。
 日本ではデビュー・アルバム発表前に、2005年の「SONICMANIA」にも来日して、デビュー前から期待していたロック・ファンも少なからずいました。
 NMEでも"イギリスが手にした、世界制覇が可能なリアル・ロック・バンド"と称賛していましたが、半面、"遅れてきたグランジ・バンド"という手厳しい評価もあったりもしました。
 しかし、オーストラリアから、同じ"遅れてきたグランジ・バンド"のTHE VINESが成功を収めたのも少なからずあったとは思いますが、「SONICMANIA」来日も手伝って、日本でも人気が高まりました。
 元々、メンバー全員がSONIC YOUTHエリオット・スミスの大ファンであることは、NBAのファンならご存知だとは思いますが、やはり、当時、このアルバムを聴いて印象に残ったのは、SONIC YOUTHの影響を多大に受けたフィードバック・ノイズと、平均約2分半の早急なパンクの衝動性でした。
 もちろん、すでにスタジオ・アルバムを5枚リリースした時を経た現在でこそ、このアルバムにもエリオット・スミスに影響を受けた"歌"の部分も理解出来ますが、デビュー当初はサム・フォレスト自身も「フィードバック・サウンドは、幾百の言葉よりも多くのことを語れるんだよ」と公言したのもあって、フィードバック・ノイズあってのNBAという印象が色濃かったのも事実でした。
 ナパーム弾のようなフィードバック・ノイズが矢継ぎ早に暴発する、この作品は(THE VINESの初期作品のようにも同じことは言えますが)、00年代のTHE STROKES以降のガレージ・リヴァイバルのバンド達とは違う立ち位置で鳴らしていたアルバムに違いないと思います。
 00年代に入り、90年代のムーブメントの残骸と化したグランジを武器にしていたこと、あるいは、THE STROKESTHE KILLERSKINGS OF LEONWHITE STRIPESMAROON 5等の米国のバンドが本国よりも英国で評価されて人気を博していたことも、デビュー当時のNBAに逆風が吹く状況になっていたのも不運だったのかもしれません。
 フィードバック・ノイズばかりが評価の対象になりがちなデビュー作ですが、「Unsatisfied」のような非グランジなナンバーの名曲を生み出していることも忘れてはいけません。
 この曲に象徴されるようなウェットな感性が各曲に感じられるのも彼等の最大の魅力で、少なくとも我々、ファンがNBAに惹かれている重要な要素でもあるのです。
 もっとも、そのウェットな感性を活かした"非グランジ"なアルバムを次作の『Love/Hate』で制作したことが、彼等の大きな失速に繋がってしまうのですが・・・
 その後の3rd以降のアルバムはデビュー作の哲学でもある、フィードバック・ノイズへのこだわりを見せ、同時にソング・ライティング面でも大きな向上が見られるようにもなり、昨年リリースの『Candy for the Crowns』のような傑作アルバムを生み出してもいます。
 すでに何度か僕のブログにしつこく書いていることですが、THE VACCINES以降に登場した、UKのグランジ/オルタナ勢が登場したことを機に、もう一度、NBAがUK音楽シーンで評価されて欲しいと思います。