吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

2010年代のUKロックの音楽地図を塗り替えたバンド


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『Come of Age』
THE VACCINES









 2011年にアルバム『What Did You Expect from The Vaccines?』でデビューして以来、英国ロック・シーンの音楽地図を塗り替えたバンド、THE VACCINESが2012年にリリースした2ndアルバムで全英一位を記録しています。
 わずか2週間で録ったデビュー・アルバムに対して、この2ndアルバムは、プロデューサーのイーサン・ジョーンズの元、綿密に時間をかけて制作されていますが、バンドの生々しいライブ感はデビュー作同様に充分生かされています。
 バンドの持ち味でもある、50年代以降のロックンロールと甘いポップを基盤とした彼等の音楽性はさらに拡がりを見せ、ガレージ・サウンドがベースになっているのは変わらないものの、サウンドと楽曲の質の高さは、UKロック・シーンに大きな衝撃を与えたデビュー作以上で、2010年代ロックを語るうえで欠かせない名盤と位置づけても良いかもしれません。
 前日のDRENGEについて書いたブログでも触れましたが、DINOSAUR PILE-UP、ROYAL BLOOD、DARLIA、CIRCA WAVESと言った、(ガレージしかり、グランジしかり)、ヘヴィーなサウンドのバンドが近年になって、UKロック・シーンでブレイクするきっかけになったのは、THE VACCINESの登場以降の事で、それ以前のUK音楽シーンに登場してきたバンドとは明らかに異なっています。
 彼等の登場は、2000年代のTHE STROKESARCTIC MONKEYS、1980年代のThe Jesus and Mary Chainに匹敵するシーンそのもの変えた出来事と捉えて良いかもしれません。
 もっとも、THE VACCINESの登場によってムーブメントが起きたわけではないですが。
 彼等はサウンドや楽曲に革新性はありませんが、書かれている楽曲の質の高さは、ロックの歴史に名を連ねるバンドと比較しても何ら遜色はありません。
 そもそも、ロックの歴史を変えたバンドの大半は、サウンドの革新性にあったわけではなく、優れた楽曲を残した結果、その時代が求めている存在であった事と符号して、ロック・シーンに名前を残したバンドが大半です。
 2000年代のARCTIC MONKEYSが、アレックス・ターナーが独創的な速射砲的なヴォーカル・スタイルとストーリー・テラーとしての才能で時代の窮児になったのに対して、2010年代のTHE VACCINESは、RAMONESThe Jesus and Mary Chainのように、好き勝手に馬鹿デカイ音で鳴らしながら、楽曲はとてつもなくキャッチーで聴き易いので、世界中の音楽ファンをノックアウトしてしまったのだと思います。
 元々は、THE VACCINESもしがないソロ・シンガーのジャスティン・ヤングが結成したバンドで、ジャスティン自身が優れたポップ・ソングを書ける才能があったのだと思います。
 デビュー・アルバムがプラチナ・ディスクに認定されるほどの好セールスを記録しながらも、翌年にはデビュー作以上の傑作を仕上げられる才能も凄いとしか言いようがありません。
 デビュー・アルバムで成功を収めたバンドの大半は、2ndでなかなか評価の得られるアルバムを制作出来るアーティストも少ないだけに、余裕でデビュー・アルバムを超える作品を短期間で制作出来るのですから。
 音楽メディアが、THE VACCINESというバンドを現在の音楽シーンで、どう位置づけしているのかは僕は分かりませんが、将来、2010年代の音楽シーンを語る際に、真っ先に語られなければいけないのは、THE VACCINESだと思います。
 THE VACCINESの存在なくして、現在のUK音楽シーンは有り得ないのですから。