吉良 吉陰の奇妙な音楽日記

It's Only Music, But I Love It.

幸福感たっぷりのアルバム


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『Happy People』
PEACE










 PEACEは、2011年に英バーミンガムで結成されたバンドで、2013年にデビュー・アルバム『In Love』をリリースして、同年の「SUMMER SONIC 2013」と単独公演にも来日した、TEMPLESやPALMA VIOLETSと共に、全英で期待されているバンドです。
 本作のプロデュースはデビュー・アルバムに引き続き、ジョン・アヴィスが担当していますが、アヴィスはARCTIC MONKEYS、Adele、KASABIANのデビュー作で成功を収めているプロデューサーで、優れた新人の持ち味を引き出す才能をPEACEのデビュー作でも発揮しました。
 『In Love』では、PRIMAL SCREAMSTONE ROSESを思わせるサイケデリックなポップで、マッドチェスター・リヴァイバルとも言えるサウンドでしたが、これは決してマッドチェスターの模倣ではなく、彼等が鳴らしたい音を素直に鳴らした結果でしたし、質の高いサイケデリック・ロックでした。
 本作は基本的なサウンドはデビュー作を踏襲していますが、メンバーがグルーヴを意識的に強化することで、デビュー作をかなり上回る素晴らしい作品に仕上がりました。
 ファンク、R&B、ヒップホップのグルーヴを、本来、彼等の持ち味であるポップなメロディーの中に見事に絡ませ、捻りのあるベース、多様なパターンのドラムのリズムが肝になる事で、元々、高いポップ・センスの曲に力強さが加わった気がします。
 本作収録曲の中で、YouTubeで観られる、捻りのあるグルーヴが印象的な「Lost on Me」、「Money」、6分超の「World Pleasure」の各3曲をご覧になった方は、アルバムを聴いていない方でも、彼等のサウンドが飛躍的に向上したのがお分かりになると思いますが、アルバム全体も本当にクオリティーが高いです。
 タイトル曲の「Happy People」自体は決して"幸せな人々"を歌っているわけではなく、むしろ、「君は本当に幸せなのか?」と問いかけている曲なので、アルバムのテーマは決して幸せなものではないのかもしれませんが、このアルバムの極上のサイケデリック・ポップを聴いているだけで幸せな気持ちになれる気がします。
 今月末には、同じく全英が注目する、PALMA VIOLETSも新作をリリースしますが、UKの新世代バンドが、この「Happy People」のような傑作アルバムを出していければ、UK音楽シーンの未来も楽しみになりそうな気がします。