最も"非ロック"な、フルシアンテ作品
『Trickfinger』
TRICKFINGER(aka John Frusciante)
今月リリースされたばかりの、ジョン・フルシアンテの"TRICKFINGER"名義のアルバムで、実験性の高い、完全なアシッド・ハウス・アルバムです。
単にエレクトロニックなサウンドを鳴らしているだけでなく、今までのようなロック、ジャズ、クラシックな手法での作曲方法は全く使わず、ヴィンテージのシンセサイザーとドラム・マシーン、コンピューターだけで作曲して、実験的な作業を重ねて、アルバムを完成させたそうです。
フルシアンテが最後に、RED HOT CHILI PEPPERSを脱退する直前から、エレクトロニック・ミュージックを聴きながら、ギターを演奏しているうちに、サンプルやエレクトロニック楽器の使い方が、ギター・プレイヤーとは全く違う事に気付いたそうです。
頭で音符を思いついてから、それをギターで演奏するという順序のやり方に飽きていたフルシアンテは、アシッド・ハウスで使用される機材やハードウェアのプログラミングを学び、実験的なアシッド・ハウス・ミュージックを作るようになったそうです。
やがて、アシッド・ハウスで使われている、Roland TB-303や、MC-202のような機材を入手し、そういう機材を使うようになってから、今まで思いついたこともないようなメロディを生み出すのが可能になったそうです。
フルシアンテがRHCP脱退後にリリースした『Empyrean』では、エレクトロニックな手法は、まだ全面に出さないロック・アルバムでしたが、その後の『Letur Lefr』、『PBX Funicular Intaglio Zone』、『Outsides』、『Enclosure』で、エレクトロニックな要素を打ち出して、新たなフルシアンテ・サウンドを徐々に確立しました。
機材は、MC-202をメインに使い、6台のMC-202を同時に使えるようにもしてあるそうで、抽象的なコンセプトからスタートして、最終的に、MC-202の助けがなければ絶対に思いつかないようなフレーズを作り出すこともあるそうです。
アルバムを聴くと楽曲によって、APHEX TWIN、AUTECHRE、Boards of Canada辺りを連想させますが、どこか初期のNEW ORDERのヴィンテージ感のある温かみも感じる事が出来ます。
エレクトロニック・ミュージックへの追求も、どんどん深くなっていくと思いますが、これから先、エレクトロニック・ミュージックに限らない垣根を超えた新しい音楽に向かっていく可能性もあり、フルシアンテのこれからの活動も楽しみなところです。