フレンチ・ワールドビートの傑作
『Mambo Nassau』
Lizzy Mercier Descloux
1stアルバムでは、難解なポスト・ロック要素の濃いアヴァン・ロックをやっていましたが、この2ndアルバムでは、TOM TOM CLUBのスティーヴ・スタンリーを迎え、かなりストレートで骨太なファンク・ロックを演っています。
ポスト・パンクでもファンクを取り入れたバンドは数多いですが、このアルバムはポスト・パンク的アプローチではなく、同じ、ZE Recordsのレーベル・メイトでもある、Kid Creole & The Coconutsや、WAS(NOT WAS)のようなワールドビートを取り入れた、ミクスチャー・ロック的な手法のサウンドと言った方が良いかもしれません。
このアルバムはバハマのコンパス・ポイント・スタジオで制作されているのですが、ファンク・ロックに少々、ラテン・フレイヴァーの加わった、このアルバムのサウンドは、バハマに降り注ぐ眩しい太陽の光と、エメラルド色の海も影響を与えているようで、リジーいわく「『Mambo Nassau』のど真ん中には真っ黒な太陽が輝いているのよ」とのこと。
ZE Recordsの設立者の一人、ミシェル・エステバンが、この『Mambo Nassau』を「最初の混血レコード」と評したように、純粋に黒人音楽のファンクを取り入れたミクスチャー・ロックと言う点では"最初"ではないにしろ、後続のミクスチャー系バンドの祖とは言えるかもしれません。
バンドのメンバーの演奏技術の高さも、このアルバムを聴くうえで聴き逃せない点で、単純にファンクを取り入れただけのレベルに収まっていないのはメンバーの技術力の高さがあるのは言うまでもありません(もっとも、ミクスチャー・バンドのメンバーの大半は、かなり演奏レベルは高いものですけど)
リジーは3rdアルバム以降も、アフリカ音楽やジャズを取り入れたアルバムを制作する等、ワールドビート/ミクスチャー系の素晴らしいアルバムを計5枚制作し、その生涯を閉じました。
とにかく、この『Mambo Nassau』はワールドビート/ミクスチャー系サウンドの傑作として未だに再評価され、2009年には日本でも再発されています。
「Funky Stuff」
Lizzy Mercier Descloux